「物忘れ」が気になりだしたら手指を動かそう

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80歳を過ぎた知人が
突然、ピアノを習い始めた

仕事でお世話になった大先輩の男性から、「最近ピアノを習い始めましてね」と聞いたときは、お気に入りというNHKBSの「駅ピアノ」「街かどピアノ」の影響かと思いました。

それもあるようですが、「ついうっかり」や「ちょっとした物忘れ」が多くなりだしたことが気になり、もっと手を動かそうと考えた、そしてひらめいたのが「ピアノを弾くこと」だった、と言うのです。

これを聞き、思い出したことがあります。

手の指を動かすことが脳の血流アップになる

ずいぶん前の話になりますが、認知症の専門医を取材したときのこと。挨拶もそこそこに、いきなりこう尋ねられたのです。「あなたはカントという哲学者をご存知ですか?」

「はい、名前とドイツの有名な哲学者だということぐらいは……」と答えながら、何を聞かれるんだろうかとドキドキしていると、ニコニコしながらこんな話をしてくれたのです。

「この哲学者がとてもおもしろいことを言っていましてね。手は外部の脳である、つまり手は脳の出張所だというわけです。認知症予防を考えるうえで、これほど言い得ている言葉はないと、僕は思っていましてね」――。

つまり、「手の指を動かすことは脳を動かすこと、脳を刺激することであり、脳内の血流をアップさせることになる」と続いた説明に、「なるほど」と合点し、緊張が解けたのでした。

「うっかり」や「物忘れ」対策に
「外部の脳」の手の指を動かそう

「ついうっかり」や「ちょっとした物忘れ」は、高齢者のみならず40,50と年齢を重ねるにつれ、程度や頻度に差はあるものの、誰もが経験するものです。

そして、「あらいやだ、もう認知症の始まりかしら」などと、ちょっと弱気になったりもするのですが……。この認知症には、脳血管性認知症とアルツハイマー型の認知症、いわゆるアルツハイマー病があります。

このうち、カントが言うところの「外部の脳」である「手」の指を動かすといった、まさに個人の努力によって予防が期待できるのは、主に前者のタイプの認知症と考えられています。

ただ、手の指を細かく動かす運動は脳全体の働きを活性化させますから、アルツハイマー病予防にも効果が期待できるようです。なお、アルツハイマー病予防についてはこちらをご覧ください。

インド人にアルツハイマー病が際立って少ないことはよく知られている。その理由はカレーにあると考えられていた。間違いはないが、むしろカレーに入れるターメリックというスパイスに多く含まれるクルクミンというポリフェノールが鍵だという話を書いてみた。

大人のぬり絵で脳の血流アップ

運動不足の状態が続くと脚の筋肉や骨がやせ細っていくように、脳もあまり使わずにいるとやせ細り、萎縮していきます。

これを防ぐには、外部の脳と言われる手の指を細かく動かして脳細胞を活性化させ、脳への血流量を高めればいいわけです。その、より効果的な方法として最近注目されていることの1つに、「大人のぬり絵」があります。

しかもこのぬり絵は、普段使い慣れている利き手ではなく、使い慣れていない側の手で塗ったほうが、脳細胞はより活性化し、脳の血流アップに資するという話を先に紹介しました。

認知症予防は多種多様な方法が紹介されているが、「知的活動」が最も重要とのこと。それも、普段やり慣れていないことをやり慣れていない方法で行うと、脳血流はより効果的にアップし、脳機能が活性化する。おススメは、利き手と反対の手による「塗り絵」だ。

脳の活性化につながる活動として、アート領域のことで言えば、認知症の治療やケアの現場で、すでに20年以上の実績がある「臨床美術」という方法もあります。

「臨床美術」をご存知でしょうか。絵を上手に描いたり、オブジェなどを上手に作るのではなく、自らの感性を働かせて個性を表現する創作活動に集中する時間が脳を活性化させ、認知症の予防や症状の改善につながるとして人気が高まりつつあると聞き、調べてみた。

物忘れ対策に
ピアノのレッスンも

話をピアノに戻しますと、80歳を過ぎた大先輩が、老眼鏡で楽譜を読みながらピアノのレッスンに励むのは、カントの「手は外部の脳である」説の実践そのものと言えるでしょう。

先輩の場合はご自宅に、お孫さんのためにと購入したピアノがあり、近所迷惑にならないようにと、防音の配慮もしているそうです。ただ、自宅にピアノを用意して防音対策までするなんて、誰にもできることではありません。

でも幸いなことに最近は、普通のピアノに比べかなりコンパクトで設置しやすく、ヘッドホンを使えば周囲への音を気にせず、夜間でもレッスンができる電子ピアノ が、比較的手ごろな価格で手に入るようになっています。

もっとコンパクトで、携帯もできる電子キーボード を使うのもいいでしょう。それと、街を歩くと「ピアノ教室」の看板をよく見かけます。

小さなお子さんたちと一緒の教室で、子どもたちのややハイトーンの声を聞きながらレッスンを受けるのも、脳の活性化にはつながるはずです。

ピアノに限らず楽器の演奏を

ピアノだけではありません。総じて楽器の演奏は、感覚を働かせながら手の指を細かく動かしますから、脳の血流は活発化し、脳の老化防止によいとされています。

指先や手のひらへの刺激が
脳を活性化させる

もう1点、脳細胞の活性化により集中力や判断力が高まるとして、40~50代のビジネスマンを中心に、このところ注目を集めているアイテムがあります。表情筋トレーニングなどの美容機器や健康器具で有名なMTG社のアクティブ ブレインです。

たとえば、脳卒中後遺症などで麻痺した手や指の感覚を取り戻そうと、2つのクルミを手のひらで握ったり、動かしたりする運動がリハビリテーションとして行われることがあります。

このクルミに替わるものとして、樹脂などで作られたマグネット(磁石)入りの ハイパークルミも市販されていますが、アクティブ ブレインは、これをさらに進化させたものと考えていただいたらいいと思います。

ステンレスやゴムで作られた球体状のアクティブ ブレインを手のひらに載せ、リズミカルに握ったり、開いたり、つかんだりを繰り返します。この動きによる手のひらや指先への刺激が脳に伝わり、脳内の血流量がアップして、脳細胞の働きが活発化するというメカニズムです。

さらにこの球体には、全面に32個のボタンが並んでいます。このボタンを指先で押すと、それぞれが少し傾きながらへこみ、回転するしくみになっていて、その指の動きが、脳にさらなる刺激を与えてくれるのです。

電車通勤のビジネスマンのなかには、スーツやコートのポケットにこの球体を忍ばせ、手のひらで握ったり、指先でボタンを押したりしながら、退屈な通勤時間を脳の活性化に生かしている方も結構いると聞きます。

「ついうっかり」や「物忘れ」対策に、あなたも挑戦してみてはいかがでしょうか。

認知症を疑ったら、まずはセルフチェックを

なお、認知症も他の病気のように、できるだけ早い時期にサインに気づき、相応の対応をとることができれば、進行を遅らせたり、予防したりすることができる場合もあります。

「このところどうも何かおかしい。認知症ではないだろうか」と感じるようなことがあれば、早期発見のきっかけとして「認知症簡易チェックサイト」にアクセスして、チェックしてみてはいかがでしょうか。

認知症は、残念ながら現時点でこれといった特効薬はない。しかし、早い時期にそのサインに気づき適切な対応をとれば、病気の進行を遅らせることができる場合もある。その早期発見のきっかけに、多くの自治体が導入している「認知症簡易チェックサイト」を紹介する。

血液検査で認知症の一歩手前の状態をリスクチェック

さらに最近は、認知症の一歩手前の物忘れが多い状態をリスクチェックできる血液検査があります。詳しくはこちらを。

認知症は早い段階で発見して先手を打てば予防も期待できることがわかっている。幸い、簡単な血液検査で、アルツハイマー型認知症の前の段階である軽度認知障害のリスクを判定する検査法が開発され、実用化されている。その紹介と、認知症予防策を紹介する。