絵を描いて脳の活性化を促す「臨床美術」

絵を描く

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絵を描くのが苦手でも
夢中になれる「臨床美術」

「臨床美術」と呼ばれる創作活動に取り組んでいる大先輩がいます。大手出版社で長年にわたり女性誌の編集にたずさわってきた女性で、直近の誕生日に、「とうとう後期高齢者の仲間入りをしてしまいました」とのメールが届いたところです。

幼い頃から本を読んだり文章を書くことが大得意だった。でも絵を描くのは不得手で、いくつになっても美術の時間は好きになれなかった、という先輩――。

ところが70歳を過ぎた頃、近隣を散歩していて、リハビリ施設の入り口に、「絵を描いて脳の活性化を促しませんか――臨床美術へのお誘い」と書かれた貼り紙を見つけたそうです。

絵は下手だけど、「脳の活性化」という言葉に魅かれて教室を覗き、以来、「臨床美術」と呼ばれるアートセラピーにすっかりはまってしまった、と話してくれました。

りんごなどの静物を描くことから始まり、たとえば布製のショッピングバッグを作ったりと、気持ちのおもむくままに好きなものを創作するのだそうです。

楽しみながら創作に夢中になれる時間が「脳をリフレッシュしてくれる」と聞き、「臨床美術」の詳しいことを知りたくなり、調べてみました。

五感をフルに使う創作活動が
脳を活性化させて認知症予防に

「臨床美術」は、一般の方にはあまり知られていませんが、認知症治療やケアの現場ではすでに20年以上の実績が積み重ねられています。

日本臨床美術協会は、臨床美術を次のように説明しています。

臨床美術は、絵やオブジェなどの作品を楽しみながら作ることによって脳を活性化させ、高齢者の介護予防や認知症の予防・症状の改善、働く人のストレス緩和、子どもの感性教育などに効果が期待できる芸術療法(アートセラピー)の一つです。

(引用元:日本臨床美術協会Webサイト

たとえば、りんごなどの果物を描こうとすると、果物をじっくり観察して本物そっくりに仕上げることに集中しがちではないでしょうか。しかし臨床美術では、絵を上手に描くことが目的ではありません。

上手下手は一切関係ないのですが、だからと言って、ただ絵を描けばいい、何らかの作品を作り上げればいいというわけでもありません。

臨床美術では上手に描くのではなく個性を表現する

臨床美術では、その人ならではの個性を表現することが最も大切にされています。そのため、絵を描いたり物を作ることに苦手意識をもつ人でも、用意されているプログラムに沿って五感をフルに使い、感性を刺激しながら創作に熱中できるのです。

このことが、脳の活性化につながるというわけですが、同時に、描き上げた個性あふれる絵や完成した作品は手元に残りますから、その絵や作品を通して、クラスの仲間や家族、友人らとのコミュニケーションが増えることになります。

このコミュニケーションにおいて、自分が制作した作品が周囲に受け入れられることが自信につながり、精神的にも安定して、認知症で低下しがちな理解力を維持、あるいは高めることにもつながっていくことが確認されているそうです。

精神科医の和田秀樹氏によれば、画家には長寿の方が多く、100歳を超えて作品を発表し続けた方が少なくないそうです。それは、絵を描くことが脳にさまざまな好影響を与えるから、とのこと

個人の感性を重視する
臨床美術プログラム

臨床美術は、地域にある特別養護老人ホームなどの高齢者施設やリハビリ施設、各種福祉施設、自治体が開催する介護予防教室、地域コミュニティーサロンなどで行われています。

また、民間の絵画造形教室や「物忘れ外来」のあるクリニック、認知症関連の医療機関でも臨床美術のプログラムが行われるようになっています。

そこには、専門的な訓練を受けた臨床美術士の資格*をもつ講師がいて、個人の感性を重視する臨床美術独自のアートプログラムに沿って参加者ひとり一人が自分なりの方法で無理なく創作活動に専念できるよう、ていねいに指導してくれます。

この指導により、「説明しても通じないのではないか」「じっとしていられないのではないか」と懸念を抱くような認知症の方でも、創作活動に夢中になっていくのだそうです。

臨床美術を実施している施設の全国マップは、日本臨床美術協会のWebサイトで確認することができます。最寄りの施設を一度訪ねてみてはいかがでしょうか。

*臨床美術士(クリニカルアーティスト)は、日本臨床美術協会が認定する民間資格。1~5級があり、同協会によると2023年3月31日の時点で、国内外で活動する臨床美術士は2386人。なかには出張指導を行う臨床美術士もいる。美術経験の有無に関係なく、誰もが苦手意識を持つことのないように考案されたアートプログラムを通して、参加者の創作意欲や感性を引き出す専門家。

臨床美術を一度体験してみたい方は

何はともあれ、臨床美術プログラムを体験してみたいという方は、芸術造形研究所東京校の臨床美術教室「お茶の水アートリエ」に参加してみるのも一つの方法です。この臨床美術教室は、次の方(成人)に体験をすすめています。

  • 認知症予防や介護予防に興味のある方
  • アート制作を気軽に体験したいという方
  • 新しい趣味を開拓したいという方
  • 毎月楽しみに通える場所をお探しの方
  • いつまでも心身ともに健康で楽しく充実した日々を過ごしたいという方

1回90分で参加費は4,400円(消費税10%込)で、開催スケジュール(開催日・体験できるアートプログラムの内容等)は同校Webサイト*⁴をご覧になってください。

なお、認知症予防の取り組みについては、以下の記事も読んでみてください。

哲学者のカントによれば「手は外部の脳」とのこと。手を動かすことは脳を使うことであり、脳内細胞の活性化、血流アップにつながるというわけだ。これを認知症予防に生かさない手はない。80歳でピアノを習い始めた知人の話、ぬり絵の話等々を紹介する。
コロナ禍により長く続いた自粛生活により、物忘れが多くなったと嘆く友人に、意識して前歯を使うことを促した。その根拠となる研究を紹介する。物を噛むときに奥歯だけでなく前歯も使うと、脳の最高中枢、前頭前野への血流がアップすることが実証されている。

ネット上でできる認知症のセルフチェックを

また、「最近、どうも頭がすっきりしない。認知症ではないだろうか」と感じるようなことはないでしょうか。もしあれば、早期発見のきっかけとして、自治体がインターネット上で開設している「認知症簡易チェックサイト」でチェックしてみてはいかがでしょうか。

認知症は、残念ながら現時点でこれといった特効薬はない。しかし、早い時期にそのサインに気づき適切な対応をとれば、病気の進行を遅らせることができる場合もある。その早期発見のきっかけに、多くの自治体が導入している「認知症簡易チェックサイト」を紹介する。

引用参考資料*¹:日本臨床美術協会「臨床美術とは」

参考資料*²:「ぼけの壁 (幻冬舎新書 677) 和田秀樹

参考資料*³:日本臨床美術協会「臨床美術を実施している施設全国マップ」

参考資料*⁴:芸術造形研究所臨床美術教室「お茶の水アートリエ」