「民生委員」を身近な相談相手として活用を

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全国で23万人余が活動する
地域福祉のボランティア

地域福祉のボランティア「民生委員」(正確には「民生委員・児童委員」)をご存知でしょうか。現在、約23万人が全国で活動しているそうです。

高齢者のみの世帯やひとり暮らしの高齢者、さらにはひとり親が増えるなか、地域の身近な相談相手として彼らへの期待は年々高まっています。

ところが、民生委員の存在自体知らない人も多く、知っている人でも、彼らの役割や実際の活動内容がわかる人は1割にも満たないことが、全国調査*¹で明らかになっています。

民生委員は、相談を受けた家庭を訪問したり、電話連絡を通して、生活上の困りごとの相談に乗り、必要に応じて関係機関につなぐことを主な活動にしています。

その活動内容から、相談者の私生活に立ち入り、一身上の問題にかかわることが多く、相談者の生活上、精神上、肉体上の秘密に触れることが少なくありません。

そのため民生委員には、民生委員法第15条により、職務上の義務として、活動上知り得た個人情報について守秘義務が課せられています。

また、民生委員法第16条では、民生委員という立場を政治的に利用することも禁止されていて、違反すれば解嘱される(委嘱を解かれる)ことになります。

在宅での介護や医療に関する悩み、健康上の不安、生活困窮など、なんでも安心して相談できる民生委員について、彼らはどのような人たちで、どんな相談を受けてくれるのかを、今日はお伝えしようと思います。

民生委員は
自分には遠い存在でしょうか

全国1万人を対象に民生委員に関するイメージ調査を行ったのは、民生委員の全国組織である「全国民生委員児童委員連合会」です。

調査は2019年3月、インターネットを通じて全国の10代(15~19歳)~70代の男女5000人ずつ、計1万人を対象に実施しています。

その結果、約7割(69.8%)の人が民生委員の存在を知ってはいるものの、その役割や活動内容まで「知っている」と答えた人は7.9%にとどまることが明らかになっています。

ただし、年齢層が上がるにつれて認知度は高くなり、60~70代では、男性90.2%、女性93.4%と、ほとんどの人が民生委員の存在を知っているという結果になっています。

また、「民生委員にどのようなイメージをお持ちですか」という問いには、「地域にとって必要」「ボランティア精神が高い」「社会福祉への理解と熱意がある」といったプラスの声が75%を超えています。

その一方で、65.2%の人が「自分には遠い存在」と回答していて、地域にとって必要な存在と認めながらも、当事者意識は低い現状が明らかになっています。

相談したいと思うが
地元の民生委員を知らない

アンケートではさらに、「民生委員に相談したいと思いますか」と尋ねています。

これには46.4%の人が「相談している」「相談する意向がある」と回答。年齢的には男女ともに60~70代の年齢層で相談したいという意向が高くなっています。

また、「相談している、もしくは相談したい内容」は、多い順に以下のようになっています。

⑴ 生活の困りごと(35.5%)
⑵ 地域の困りごと(31.8%)
⑶ 高齢者に関すること(30.8%)

ただし、何かしら困りごとがあったときに民生委員に相談してみようと考えていながら、自分の住んでいる地域の民生委員が誰だか知っているかを尋ねたところ、(顔も名前も)知らない人が70%に上っています。

これに対し、「顔も名前も知っている」は14%にとどまり、「名前は知っているが顔は知らない」が11%、「顔は知っているが名前は知らない」が5%でした。

厚生労働大臣が委嘱する
特別職の地方公務員

民生委員は、一般の地域住民(自営業者、会社員やその退職者、専業主婦など)から選任され、市町村の民生委員会推薦会から推薦された人について、地方の社会福祉協議会の意見を踏まえて厚生労働大臣が委嘱する特別職の非常勤地方公務員です。

資格制度もなければ一定の選任・推薦条件などもありません。

社会福祉に対する理解と熱意があり、地域の実情に精通した人が推薦されているようです。

民生委員はボランティアですから無報酬です。

ただし、交通費や通信費、研修参加費など活動にかかる費用として、年間5.9万円(定額)が支給されています。

すべての民生委員は児童委員を兼ねていて子育ての不安などにも対応していますが、民生委員としての活動内容は、民生委員法第14条で次のように規定されています。

  1. 住民の生活状況を必要に応じ適切に把握しておくこと
  2. 生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと
  3. 福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供、その他の援助を行うこと
  4. 社会福祉事業者と密接に連携し、その事業または活動を支援すること
  5. 福祉事務所その他の関係行政機関の業務に協力すること
  6. その他、住民の福祉の増進を図るための活動を行うこと

介護や医療の困りごとを
民生委員に相談を

たとえば在宅療養を続けている高齢者の場合、介護保険サービスを利用していれば、療養上の悩みごとは担当のケアマネジャーや訪問看護師などに相談することができるでしょう。

しかし、介護認定を受けていない高齢者や介護保険サービスを利用していない方の場合は、民生委員に相談すれば、地域包括支援センターや社会福祉協議会などの医療や介護、福祉の専門機関につないでもらうことができます。

介護保険サービスの利用率は思うほどは高くなく、2018年4月の時点で介護保険サービスの未使用者は65~69歳では全体の97%、70~74歳は94%、75~79歳は87%、80~84歳は71%で、85歳以上になるとほぼ半数となっている。

民生委員は守秘義務を課せられている

「顔見知りの方が民生委員だと、やっぱりいろいろ相談するのは躊躇する」という方も少なくないでしょう。。

しかし、前述のように、民生委員には守秘義務がありますから、相談した内容が民生委員を介して隣近所に知られるようなことはありません。

最寄りの民生委員に連絡をとりたいときは、お住まいの市区町村の地域支援課や福祉相談室などに電話で問い合わせるといいでしょう。

なお、遠方に高齢の両親が住んでいて、両親のことで相談したいというような場合は、両親が住んでいる市区町村の福祉相談室に両親の居住地域の民生委員を教えてもらい、その方に相談するということもできます。

場合によっては、福祉相談室の担当者が相談に乗ってくれ、その相談内容に応じて民生委員に連絡してくれるというケースもあるようです。

その際は、担当者の名前と連絡先を聞き、メモに残しておけば安心でしょう。

健康や病気に関する相談は「看護外来」活用を

なお、悩み事のなかには健康や病気に関することもあるでしょう。

その種の相談は、かかりつけ、あるいは最寄りの医療機関にある「看護外来」を活用するのもいいのではないでしょうか。

長期にわたり医療的かかわりが必要な、いわゆる「慢性疾患患者」の増加に伴い、その療養生活について個別支援を行う「看護外来」や「看護専門外来」に注目が集まっている。そこで受けられる支援の内容、予約の手続法、かかる費用などについて概要をまとめた。

深い悩みの相談は

また、自らの死が近いことや、死に直面している家族の介護にまつわる深い悩み、苦悩については、臨床宗教師と呼ばれるお坊さんに話を聴いてもらえる場所もあります。

宗派を超えた僧侶など臨床宗教師をはじめとする宗教者が、こころの奥深いところに生じる悲しみや苦しみにじっと耳を傾けてくれる場所がある。「カフェ・デ・モンク」と呼ばれる移動式喫茶店がそれだ。勧誘を受ける心配がないから、安心して訪れることができる。

参考資料*¹:全国民生委員児童委員連合会「全国1万人にイメージ調査実施」