糖質の少ない果物を食べて動脈硬化を予防する

りんご

日本人がよく食べる果物は
バナナだが……

日本人がよく食べる果物ランキングが、毎年発表されています。

2022年も第1位に選ばれたのはバナナ、18年連続でトップとのこと――。

特に2020年は、コロナ禍により外食を控えて自宅での食事が多くなったことが影響し、簡単な食事代わりになるからと例年以上に需要が高まり、一時品薄になるほどの売れ行きだったと、ニュースが伝えています。

この話を聞いて、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」の最新版(2017年版)に興味深い記述があったことを思い出しました。

果物の摂取は、冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)および脳卒中のような動脈硬化性疾患の発症リスクを低減させる効果が期待できるとして、「糖質含有量の少ない果物を適度に摂取することを強く奨励する」と書いてあるのです。

私たち日本人は欧米人に比べ、生の果物を食べる習慣が際立って少ないことが、かねてから指摘されています。

そこで、2017年に5年ぶりのガイドライン改訂が行われた際に、果物摂取に関する項目が新たに加えられたのだと、説明を受けたことがあります。

ただし、そのガイドラインで摂取を促しているのは、「糖質含有量の少ない果物」ですから、バナナは外れるように思うのですが……。

今回はその辺のことを調べてみましたので、要点をかいつまんでお伝えしたいと思います。

動脈硬化を防ぐ食生活に
果物が新たに加わる

動脈硬化性疾患とは、ご承知のように、動脈硬化により動脈が極端に狭くなったり、血管自体が詰まっったりして、血液の流れが極端に少なくなることにより発症する病気の総称です。

このところ著明な方の訃報が相次いで伝えられています。

そのなかのお一人、小説家で作詞家のなかにし礼さんの死因とされる心筋梗塞は、この動脈硬化性疾患の代表格です。

全身に新鮮な血液を送り出す働きをしているのは心臓です。

この心臓そのものに酸素などの栄養を送り届けているのは、心臓に鉢巻をしたような格好で走っている冠動脈(「冠状動脈」とも呼んでいる)です。

心筋梗塞は、この動脈の動脈硬化が急激に進行して起きることから、狭心症などと共に、冠動脈疾患と総称されています。

認知症につながりやすいことで敬遠される脳梗塞のような脳卒中も、動脈硬化が進行して引き起こされる動脈硬化性疾患です。

これら動脈硬化性疾患の元凶とも言える動脈硬化を予防する食生活については、これまではもっぱらDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)に代表される魚類の脂(アブラ)、いわゆる多価不飽和脂肪酸が注目されてきました。

ガイドラインの改訂により、そこに果物が新たに仲間入りしたことになります。

糖質含有量の少ない果物
かんきつ類やリンゴがおすすめ

では、具体的にどんな果物をどのくらい摂ればいいのでしょうか。

ガイドラインがすすめているのは、「糖質含有量の少ない果物を適度に摂取」です。

糖質とひとくちに言っても、でんぷん、ブドウ糖、果糖、ショ糖(砂糖)、乳糖、ガラクトースなど、さまざまあります。

このうち果糖やショ糖は、体内で脂肪に変わりやすく、肥満につながりやすいことがわかっていますから、その含有量には特に注意が必要でしょう。

この点を考慮してガイドラインは、数ある新鮮な果物のなかで、ミカンやオレンジなどのかんきつ類やリンゴ、キウイフルーツといったところを、動脈硬化性疾患の発症リスク低減を期待できる果物としてあげています。

日本人がよく食べる果物ランキングでトップのバナナは、栄養バランスのよさから人気が高いものの、糖質としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖が多く含まれています。

そのため、動脈硬化の予防効果を期待する方には、あまりおすすめではないようです。

1日に200グラムを目標に
リンゴは皮ごと食べる

では、かんきつ類やリンゴなどの果物を1日にどのくらい食べたらいいのでしょうか。

厚生労働省と農林水産省は、健康的な生活を送るための食生活の指針を「食事バランスガイド」として示していますが、そこでは活動量が普通の成人男女の場合で、果物については、
「1日に200グラム(可食部)が望ましい」としています。

ガイドラインもおおむねこの量を推奨しています。

一般的なサイズのリンゴやオレンジなら1個程度、ミカンなら2個ほどになるでしょうか。

厚生労働省の「国民健康・栄養調査」で明らかにされている日本人の果物類の摂取量は、2014年の調査によれば、20歳以上の平均で1日97.8グラムと、200グラムにはほど遠いもの。
今まで以上に意識して、かんきつ類やリンゴなどの果物を食べるようにしたいものです。

リンゴには水溶性食物繊維のペクチンが豊富

とりわけリンゴには、水溶性食物繊維であるペクチンが豊富に含まれています。

ペクチンには腸内環境を整える作用があり、便秘にも下痢にも効果を発揮することが報告されています。

このペクチンは皮の部分に多く含まれていますから、無農薬のリンゴを選んで皮ごと食べるのがいいようです。できれば生のままのリンゴがいいのですが、歯や嚥下の問題からジュースにするなら、皮ごとミキサーにかけてはどうでしょうか。

リンゴの保存方法についてはこちらを参照してください。

りんごの栄養価の高さは「1日1個のりんごは医者を遠ざける」ほどだと言われる。さまざまな健康への効能が確認されているが、りんごにも賞味期限があり、品質が落ちれば栄養価も効能も低下する。幸い、保存方法により品質をキープするコツはある。その方法をまとめた。

なお、果糖ブドウ糖液などを使った各種フルーツスイーツのような果物加工品は、おすすめできません。あくまでも、果物は生の新鮮なものを!!