退院後への不安は退院前カンファレンスで解消を

会議

退院前カンファレンスで
不安をクリアして退院を

主治医から「そろそろ退院してご自宅に戻れますよ」と言われたら、誰もがまずはホッとするでしょう。と同時に、多少の不安がよぎったりもするものです。

特に、入院中に受けていた点滴や酸素療法などの医療処置を退院後も続ける必要がある方は、「この状態で自宅に戻って、本当にやっていけるのかしら?」といった気持ちになることが多いのではないでしょうか。

そんな不安を少しでも和らげ、安心して退院してもらえるようにと、わが国の医療保険制度や介護保険制度には、そのためのサービスがいくつか用意されています。

先に紹介した「退院前訪問指導」もその一つ。入院している病棟の看護師や入院中に指導を受けたことのある理学療法士などが、患者さんの退院先となるご自宅へ退院前に訪問し、退院後の療養生活に備えるサービスです。

医療処置やケアが必要な状態のまま退院して自宅での療養生活に移る際は、何かと不安が伴うもの。そこで、医療保険サービスの一環として、退院前や退院後に病棟看護師等による訪問指導を受けることができるという制度が用意されている。利用に必要ないくつかの条件を説明する。

これとは別に、やはりもろもろの不安を解消し、安心して在宅での療養生活に移行してもらうためのサービスとして「退院前カンファレンス」というものがあります。

そこで今回は、この「退院前カンファレンス」について、カンファレンスに参加するスタッフやそこで話し合われる内容などについて書いてみたいと思います。

退院前カンファレンスには
病院と在宅のスタッフが参加

退院する患者さんが退院後も安定した療養生活を送ることができるように、患者さんの治療やケアに関する情報を支援にあたるスタッフ間で共有し、よりよい支援の方法について話し合う場を「退院前カンファレンス」と呼んでいます。

退院前カンファレンスは、病院側のスタッフ(担当医、看護師、理学療法士などのリハビリ職、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど)と、退院後の在宅療養にかかわる地域の在宅スタッフ(担当ケアマネジャー、在宅主治医、担当訪問看護師、かかりつけ薬剤師など)が一堂に会して開かれます。

このカンファレンスでは、まず病院側のスタッフが、患者さんの病状や入院後の治療の経過と現状(健康状態、栄養状態、精神状態、日常生活でできること・できないこと、必要な治療やケア・介護など)について、専門スタッフの視点から詳しく説明されます。

この説明を受けた在宅スタッフは、この先の大まかな支援の方針を各専門スタッフの立場から明らかにしたうえで、ではどんな訪問・介護サービスをどのくらいの頻度で利用するかといったことを病院側スタッフと話し合います。

退院前カンファレンスには
患者・家族も参加できる

退院前カンファレンスについては、患者さん側の同意を得て行うことが診療・介護報酬上の評価(サービスへの報酬)の条件となっています。

ですから、患者さんやご家族の知らないところで、知らないうちに退院前カンファレンスが開催されることはまずありえないと考えていいでしょう。

当然ながら、患者さんご自身もご家族も、希望すれば、当事者として退院前カンファレンスに参加することができるのです。

たとえば最近急増しているビジネスケアラー、つまり介護と仕事を両立させている方の多くが抱えている「どう両立させるか」という悩みも、この場で相談すれば、いろいろとアイデアを出してもらえるはずです。

「ビジネスケアラー」という言葉を最近耳にするようになった。家族等の介護をしながら仕事を続けている人だが、介護のために仕事を辞めたり、セーブせざるを得ないケースが多いと聞く。そこで、「介護と仕事の両立」に活用してもらいたいサービスをまとめた。

ところが、「参加しても、そこで話し合われるのは専門的な話ばかりで、医療や介護といったことについては素人の自分たちにはまったく理解できないのではないか」などと考えて、参加を控える方が圧倒的に多いと聞きます。

退院前カンファレンスで
希望や不安などを伝える

ところが、退院前カンファレンスに患者側の立場で参加した経験のある方によれば、そこに参加している専門スタッフの方々は、専門外の方も理解できるようにしようと、難しい専門用語などは極力使わないように心がけておられるようだったとのことです。

何よりも、退院前カンファレンスはとてもなごやかな雰囲気のなかで進められていて、退院後の生活について自分の希望を伝えることができ、しかも心配なことや不安に感じていることには納得いくまで説明を受けることができたそうです。

また、退院後に受ける予定の訪問診療や訪問看護、および介護サービスの内容、さらには介護保険で介護用ベッドや車いすなどをレンタルできること、また「そのためには入院中の今から介護保険の申請をしておきましょう」といった話まであったそうです。

退院前カンファレンスに参加してもろもろの説明を聞いているうちに、「これからお世話になる方々と直接お会いできたこともあって、退院後の自宅での生活を具体的にイメージできるようになり、妻ともこれなら安心して退院できると話したものです」と、話しています。

退院前カンファレンスに
参加できないときは

こんな話を伺うと、「退院前カンファレンスには、当事者としてぜひ参加を」とおすすめしたいところです。しかし現時点では、病院によっては諸事情から患者さん本人やご家族は参加できないところもあるようです。

その場合は、退院前カンファレンスに必ず参加する看護師(退院時の支援を専門に行っている看護師ならなお理想的)や医療ソーシャルワーカーなどに、退院後の生活に関する希望や不安に思っていることなどを事前にきちんと伝えておくことをおすすめします。

そのうえで、退院前カンファレンスが終わった後にそれらの点についてどう話し合われたのか説明を受けることで、不安をできるだけ解消しておけば、安心して退院の日を迎えることができるのではないでしょうか。

介護保険の申請は入院中にすませる

なお、介護保険の「要介護認定」は、申請してから認定結果を受け取れるまで、通常3~4週間かかるようです。

退院したその日から介護保険のサービスを利用する予定があれば、入院中に「要介護認定」の申請手続きを行って認定審査を受けておく必要があります。

その方法や審査結果を受け取って実際に介護サービスを利用できるようになるまでの話は、こちらで詳しく紹介していますので、是非参考にしてください。

介護保険制度については、「申請方法がよくわからない」「かかりつけ医がいないので申請できないのでは」といった声をよく見聞きする。用意されているサービスを上手く利用できていない方も多いと聞く。そこで、改めて基本的なことを整理してみた。