あなたも「認知症カフェ」に出掛けてみませんか

交流

「認知症カフェ」には
誰もが立ち寄れる

新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの「認知症カフェ」が活動休止を余儀なくされていましたが、ここにきて活動を再開するカフェが出てきたと聞き、ホッとしています。

感染防止対策で家にこもりがちだった生活は、認知症の有無に関係なく、誰もがストレスをためこんで精神的に不安定になりがちです。

不安で落ち着かない気持ちからにっちもさっちもいかない状態に陥る可能性もあります。

そうなる前に、「認知症カフェ」に出掛けて行き、そこに集っている同じように不安な気持ちをいだいている方たち、あるいは医療や介護のプロたちと気軽に話すことができたら、気持ちもずいぶん楽になるのではないでしょうか。

「認知症カフェ」については、すでに認知症の診断を受けた方やその介護をされているご家族のための場所であって、認知症ではない自分とはいっさい関係ないと多くの方が理解されているのではないでしょうか。

しかし、「それは誤解です」という話を今回は書いてみたいと思います。

「認知症カフェ」での交流が
認知症の予防につながる

「認知症カフェ」にかかわっている医師ら専門職(看護師、訪問看護師、介護スタッフなど)の方々は、よくこんな話をしてくれます。

「認知症でない方が認知症の方やその介護をしている方と出会い、日々の生活ぶりを見聞きしておくことは、自分が認知症になったときに認知症であることを受け入れて周りの人たちに助けてもらいながら生活していくうえで大きな意味がある」と――。

私たちの国では、高齢化の進行に伴い認知症の方が年々増加しています。

厚生労働省は、戦後ベビーブームの団塊世代(1947~1949年生まれ)がすべて75歳以上になる2025年には、そのおよそ5人に1人が認知症を患い、その数は累計で約700万人に達するだろうと推計しています。

それなりの年齢になれば、認知症は誰もがなり得るとの認識のもと、「予防」に自ら力を入れていくことが求められているのです。

この場合の「予防」について厚生労働省は、「認知症にならないという意味ではなく、認知症になるのを遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにするということ」と説明しています。

このような「認知症予防」に、「認知症カフェ」に出掛けて行き、さまざまな立場の方々と会い、話すことが大いに役立つというわけです。

全国約8,000カ所で
「認知症カフェ」を運営

「認知症カフェ」とは、認知症の当事者やその家族、地域で暮らす人々、医療や介護の専門職など、認知症に多少でも関心のある方なら誰もが気軽に集まり、すべての人が同じ立場で交流することのできる、言ってみれば「サロン」のような場所です。

1997年にオランダで「アルツハイマーカフェ」として始まったのをきっかけに、今では世界中に同様のカフェが普及しています。

日本では、2012年に提唱された認知症施策総合プラン、いわゆる「オレンジプラン」に、認知症対策の一環として、このカフェが「認知症カフェ」として取り入れられています。

「オレンジプラン」の一つということで「オレンジカフェ」とも呼ばれています。

国の肝いりで活動が進められたこともあり、2019年度末(2020年3月)の時点で、全国約8,000カ所で「認知症カフェ」が運営されています。

この8,000という数は、世界でもまれに見る多さとのこと。

ちなみに、「認知症カフェ」のルーツであるオランダの「アルツハイマーカフェ」は全国に240カ所と聞きますから、日本における普及状況はまさに驚きの数字です。

自由な雰囲気のなかで
一緒の時間を過ごす

「認知症カフェ」を運営しているのは、介護事業所やNPO法人が多いのですが、個人で運営しているところもあります。

「認知症カフェ」の開催場所で多いのは、デイサービスやデイケアセンター、地域のコミュニケーションセンター、あるいは特別養護老人施設や老健施設の一角、なかには商店街の空き店舗や病院等医療機関のティールームで開催しているケースもあります。

運営主体によりいろいろな名前で呼ばれていますが、「カフェ」という名が示すように、支える人支えられる人という隔てをなくし、地元の方たちが自然に集まり、自由な雰囲気のなかで一緒の時間を過ごすことに重点が置かれています。

オランダの「アルツハイマーカフェ」を見習い、認知症やその介護に関するミニ講和や相談を受け付ける時間もあれば、介護者同士の情報交換、フリートークの時間、さらにはコンサートや脳トレゲーム、パソコン教室などのプログラムが組まれているところもあります。

最寄りの「認知症カフェ」は
地域包括支援センターに相談を

今現在認知症の家族を介護している方はもちろんですが、たとえば「最近物忘れがひどい」ことが気になっている方、あるいは身内に認知症の方がいて「もしかしたら自分も……」と心配になっている方は、最寄りの「認知症カフェ」に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

カフェのほとんどが参加者の名前などを確認することはありませんから、安心して参加することができるはずです。

最寄りの「認知症カフェ」がどこにあるのか、そこではいつ(1カ月に1~2回、約2時間開催されているところが多い)、どのようなことが行われているのかといった情報は、市区町村のホームページか地域包括支援センターに問い合わせてみてください。

最寄りの地域包括支援センターは、たとえば千葉県市川市にお住まいの方なら「地域包括支援センター 市川市」で検索すれば、すぐにわかります。あるいは厚生労働省のホームページにある全国の一覧からもチェックできます*¹

気になる参加費用ですが、無料のところもありますが、多くは施設の利用代やお茶代として1回数百円程度と、金銭面の負担はほとんどありません。

ただし、なかにはランチを一緒にしたり、プロによるミニ講習会があれば講師代を含むとして1,000円以上の参加費がかかるところもありますから、あらかじめ電話で確認してから出掛けられることをおすすめします。

なお、認知症の方とのコミュニケーションに自信がないていう方は、国土交通省が公共交通機関のスタッフ向けに用意しているガイドラインを活用されてはいかがでしょうか。

物忘れを見過ごさず血液検査で認知症リスクチェックを

なお、物忘れが気になる方は、認知症の一歩手前の軽度認知障害のリスクを判定できる血液検査を受け、その結果に応じて先手を打つことで認知症を防ぐことも期待できます。詳しくはこちらをチェックしてみてください。

認知症は早い段階で発見して先手を打てば予防も期待できることがわかっている。幸い、簡単な血液検査で、アルツハイマー型認知症の前の段階である軽度認知障害のリスクを判定する検査法が開発され、実用化されている。その紹介と、認知症予防策を紹介する。

介護疲れになる前にSOSを

認知症の家族を自宅で介護している方は、介護疲れから「介護うつ」に陥るリスクがあります。その予防に「認知症カフェ」への参加が役立つと同時に、その他にも利用できるサポートがさまざまあります。詳しくはこちらを参考に、遠慮なくSOSを発信してください。

自宅で認知症家族を介護していると頑張りすぎて、「介護疲れ」から「介護うつ」に陥るリスクがあります。遠慮なく第三者やプロにSOSを出してほしいとの思いから、相談窓口や地域包括支援センター、さらには認知症サポーターについても書いてみました。

参考資料*¹:厚生労働省「全国の地域包括支援センターの一覧」