排尿のタイミングを事前に知らせるセンサー

トイレ

「排泄予測支援機器」が
介護保険で購入可能に

在宅療養者で排泄ケアが欠かせない方のなかには、「排尿のタイミングさえわかれば自分でトイレに行って排尿できるのに」という方が少なくないと聞きます。

あるいは、自分ひとりでトイレに行くのは難しいものの、「そろそろかな」と排尿の頃合いがわかれば、家族の手を借りてトイレで排尿できるという方もいるでしょう。

このような方に是非紹介したいのが「排泄予測支援機器」と呼ばれる介護用品です。

排泄予測支援機器とは、いわば排尿予測センサー、つまりトイレのタイミングを事前に知らせてくれるモニターです。

この種の機器はすでに5年ほど前から市販されているのですが、少々値が張るためでしょうか、あまり普及しませんでした。

それが今回、正確には2022年4月1日からこの排泄予測支援機器が、特定福祉用具販売*の対象となり、介護保険で購入できるようになりましたので、その旨お伝えしたいと思います。

*特定福祉用具販売とは、購入費用が介護保険給付の適用となる福祉用具のこと。衛生的な理由から、あるいは使用により品質や形状が変化するため貸与(レンタル)に適さない福祉用具5種類が指定されていたが、今回(2022年4月から)そこに、排泄予測支援機器が加わった。
⇒ 介護保険でレンタル・購入できる福祉用具

排泄予測支援機器購入前に
膀胱機能のチェックを

排尿予測支援機器とは、デジタル技術を活用して膀胱内の尿量を推定し、排尿のタイミングを知らせてくれる機能を備えたディバイス(情報端末)のことです。

具体的には、腹部に貼った超音波センサーで膀胱のふくらみから尿のたまり具合をリアルタイムでモニタリングし、排尿のタイミングを本人あるいは介護者のパソコンやスマートフォンに知らせる仕組みになっています。

この知らせを受け取って、自分で、もしくは介護者の誘導でトイレで排尿することによって失禁を防ぎ、おむつからの解放、つまり排尿の自立を可能にしようというわけです。

そのため、この排泄予測支援機器を使用する前提として膀胱の二つの機能、つまり尿をためる「畜尿(ちくにょう)機能」とたまった尿を尿道を介して体外へ排泄する「排尿機能」が正常に機能していることが必須条件となります。

ですから排泄予測支援機器の購入を検討する際には、事前に主治医に自分の膀胱機能に問題がないことを確認してもらっておく必要があります。

この確認方法としては、主治医に個別に診断してもらうか、担当のケアマネジャーに要介護認定審査の際の「主治医の意見書」などから確認してもらうこともできます。

要介護認定を受けるための申請手続きについてはこちらを。
⇒ 介護が必要になったら介護保険を利用する

介護保険給付の対象は
「トイレでの排尿が見込める人」

介護保険の特定福祉用具販売の対象となる排尿予測支援機器の販売対象者、つまり購入費に介護保険給付の適用が受けられる対象者は、次のように決められています。

「トイレでの自立した排尿が困難となっている居宅要介護者等であって、排尿の機会の予測が可能となることで失禁を回避し、トイレで排尿することが見込める人」

まずは、「居宅要介護者等」とありますから、介護保険の要介護認定で「要介護1~5」あるいは「要支援1・2」の認定を受けていることが条件となります。

また、膀胱が正常に機能していても「トイレでの自立した排尿が困難となっている」原因としては、以下の3つのケースが想定されています。

  1. トイレで排尿する際に必要な運動動作機能が低下している
  2. 排尿のタイミングを感知することができない
  3. 感知した排尿のタイミングを介護者に伝えることができない

また、排泄予測支援機器はトイレでの自立した排尿を目指して使用するわけですから、使用する方が以下の3条件を備えていて、この機器を正しく使用できる状態にあることが介護保険給付適用の条件となります。

  1. 機器の使用目的を理解して、トイレでの自立した排尿を目指す意思がある
  2. 機器(センサー)を常時装着(腹部に貼付)しておくことができる
  3. 使用者本人あるいは介護者が機器から送られる排泄タイミングの通知を理解でき、トイレまで移動あるいは誘導することができる

トイレでの自立した排尿が無理なら「自動排泄処理装置」を

なお、上記条件から外れる方の排泄ケアには、「自動排泄処理装置」を活用する方法もあります。こちらも介護保険が適用となります。
⇒ 自動排泄処理装置で排泄ケアの介護負担軽減を

排泄予測支援機器が
介護保険給付対象となる使用方法

排泄予測支援機器については、介護保険給付の対象となる使用方法として次の2ケースが想定されています。

  1. 在宅の要介護・要支援者本人が機器(センサー)を常時装着して排尿のタイミングを感知することで、適時に自らトイレに移動して排泄する
  2. 介護者が排尿のタイミングの通知を受け、本人に排泄の声かけやトイレへの誘導を行って排泄を促す

ひとり暮らしでの使用も給付対象になる

したがって、ひとり暮らしの要介護・要支援の方でも「1」の方法で使用可能ですから、介護保険給付の対象となります。

ただしその際は、本人が排泄予測支援機器の使用目的や使用方法について正しく理解していることが前提条件となることをご承知おきください。

おむつの交換時期を把握する目的での使用は給付対象外

なお、排泄予測支援機器については、常時失禁状態にある方の介護者が、おむつの交換時期を把握するために使いたいというケースもあるようです。

しかし、排泄予測支援機器の購入が介護保険給付の対象となるのは、あくまで「トイレでの自立に向けた排泄を促す」目的で使用する場合に限られます。

おむつの交換時期を把握するという目的での使用は、介護保険給付の対象外となり、全額自費で購入することになります。

排泄予測支援機器を
介護保険を利用して購入する方法

現在市販されている特定福祉用具販売の対象となる排泄予測支援機器としては、トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の「DFree(ディー・フリー)製品のなかの「DFree Home care」*¹などがあります。

特定福祉用具は介護保険を利用して購入することができるのですが、都道府県の指定を受けている事業者*で購入する必要があります。

指定を受けていない事業者から購入した場合は介護保険給付の対象とはならないため、全額自己負担となりますのでご注意ください。

*最寄りの介護保険指定事業者は担当のケアマネジャーに尋ねるか、「介護保険指定事業者一覧〇〇県(お住まいの都道府県)あるいは○○市(お住まいの市区町村)」などでネット検索して調べることができます。

排泄予測支援機器購入の流れ

排泄予測支援機器を介護保険を利用して購入すると、65歳以上の方は購入価格の1割、または一定以上の所得のある方は所得に応じて2割あるいは3割負担で購入することができます。

なお、特定疾病*²で介護保険を利用できる40歳以上64歳までの方は1割負担となります。

特定福祉用具購入の給付限度額は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で、合計10万円まで、10万円を超えた額については全額自己負担となります。

介護保険を利用して排泄予測支援機器を購入するには、担当のケアマネジャーもしくは最寄りの地域包括支援センター*に相談して必要な手続きをとることになります。

購入手続きを終えて商品が届いたら、いったん全額(10割)を自己負担で購入し、その後市区町村の窓口に「福祉用具購入費支給申請書」を提出します。

後日、払い戻しの9割分(所得に応じて8割ないし7割)が、指定口座に振り込まれることになります(申請方法や支払い方法は市区町村により異なる場合があります)。

*地域包括支援センターは、地域に暮らす高齢者の医療・介護・福祉関係のあらゆる相談窓口として、原則として市区町村に最低1つは設置されています。
最寄りの地域包括支援センターは、厚生労働省のホームページにある「全国の地域包括支援センターの一覧」*³から検索できます。

参考資料*¹:トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社「DFree Home care」

参考資料*²:介護保険の特定疾病

参考資料*³:厚生労働省「全国の地域包括支援センターの一覧」