在宅療養にかかる費用を知りたい

医療費計算

在宅療養への移行で気になる
医療費と介護費

そろそろ退院して在宅療養に切り替え、残された時間は家族と一緒に自宅で過ごし、そのままゆっくり人生の幕を閉じたい――。

今のところは病院で亡くなる方が圧倒的に多いものの、「住み慣れた自宅で、家族に看取ってもらいたい」と希望する方が徐々に増えているようです。そんなふうに考えたとき、やはり気になるのはかかるお金のことではないでしょうか。

在宅療養にかかる費用は、おおまかに医療費と介護費の2つに分けられます。まず医療費ですが、かかりつけ医(在宅医)による定期的な訪問診療や臨時の往診、さらには夜間や深夜の訪問回数、使用する薬剤などにより大きく違ってきます。

また、胃瘻(いろう)などを介して人工栄養を受けていたり、在宅酸素療法、在宅人工呼吸法などの医療処置を受けながら在宅療養を続ける場合、あるいは重症化した床ずれ(褥瘡:じょくそう)などのために、訪問看護師による定期的な医療的ケアや管理が必要ということになれば、これにかかる費用も医療費に含まれます。

高額療養費制度により医療費の自己負担額に上限が

こう考えると、かなりの額になりそうで、在宅療養に切り替えるのを躊躇する方がいるかもしれません。しかし、医療サービスを受ける場所が医療機関か在宅かに関係なく、医療費については公的医療保険制度により、かかる医療費の自己負担分(患者さんが支払う金額)は一定(1~3割)に設定されています。

さらにその自己負担分については、国の高額療養費制度により、1か月(その月の1日から末日まで)に支払うことになる自己負担額に上限額が決められています。

上限額、つまり自己負担の限度額は、年齢や所得水準、また障害者医療証があるか否かなどによって異なりますが、決められた額を超える金額は免除されることになります。

たとえば75歳以上で現役並みの所得がある方以外は、自己負担は1割ですから、実際に支払う費用は月に1万円弱です。訪問診療や訪問看護の回数が増えたり、処置や検査、薬が加わると金額は上がりますが、その場合も70歳以上の方の上限額はおおむね月に1万8000円です。

この「高額療養費制度」について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

医療機関で検査を受けたり薬局で処方薬を受け取って支払う医療費は、一部の自己負担分だけに抑えられるものの、高額になることも珍しくない。その負担が家計を苦しめないよう「高額療養費制度」が設けられている。この制度の利用方法についてポイントをまとめた。

在宅療養で受ける介護は
介護保険が適用になる

一方の、訪問介護サービスや施設に出かけて受けるデイサービスなどにかかる介護費については、原則1割の自己負担で公的介護保険を利用することができます。ただし、介護サービスを受ける方、あるいは同世帯の収入が一定以上あると、その額に応じて自己負担分が2割、さらに所得の高い場合は3割に増額となります。

ご承知のように、介護保険制度は65歳以上の高齢者が対象です。ただ、末期がんや関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)、骨折を伴う骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、初老期の認知症など、介護保険制度で「特定疾病」*¹とされている病気を診断された場合は、40歳以上65歳未満の方も介護保険を利用することができます。

いずれの場合も、こちらで紹介している要介護・要支援認定を受ける必要があります。その結果判定される要介護度(要介護1から5)により、給付(支払い)限度額が異なります。

介護保険制度については、「申請方法がよくわからない」「かかりつけ医がいないので申請できないのでは」といった声をよく見聞きする。用意されているサービスを上手く利用できていない方も多いと聞く。そこで、改めて基本的なことを整理してみた。

要介護認定により、「要支援」と言って、日常生活に介護を必要とする状態ではないが、要介護状態に陥らないためにはある程度の支援が必要と判断された方の場合は、予防給付というかたちで予防サービスを受けることができます。

在宅での療養生活では
公的保険対象外の費用も

公的介護保険の給付額は、公的医療保険と同じように、具体的な要支援・要介護度と利用するケアサービスの内容によって違ってきます。

介護保険についても医療保険同様、自己負担額が所得に応じた限度額を超えた場合、その超えた額が「高額介護・高額介護予防サービス費」として払い戻される制度があります。この「高額介護サービス費制度」の詳細は、こちらを参考にしてみてください。

医療費に高額療養費制度があるように、介護サービスにかかる費用にも高額介護サービス費制度という負担軽減の仕組みがある。申請すれば、決められた自己負担上限額を超える額を給付してもらえるのだが、所得に応じた上限額がなかなか複雑だ。ポイントをまとめた。

MSWやケアマネジャーに具体的な相談を

医療費や介護費の大まかな予想額を事前に知りたいときや高額療養費制度などを利用する方法を知りたいときは、入院中であれば担当医や看護師を介して医療相談室などにいる医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談するといいでしょう。

通称「MSW」として知られる医療ソーシャルワーカーは社会福祉の専門家。入院中や退院後の暮らしに関する困りごとや気になることで、病状や治療に関すること以外なら何でも相談できる。特に、退院や転院時には、介護保険や社会福祉・保証制度などには頼もしい助っ人だ。

また、すでに在宅に移行している場合は、かかりつけ医や担当の訪問看護師、あるいはケアマネジャー(介護支援専門員)に尋ねてみるのがいいと思います。当事者がお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に、直接あるいはインターネットを介して相談することもできます。

なお、医療費も介護費もかなり高額で、その負担が家計に重くのしかかる場合は、その世帯を対象にし年間の負担額を一定額まで軽減してもらえる制度があります。詳しくはこちらを。

在宅療養を続けていると医療費、介護費共にかなりの高額で、家計への負担が重すぎることがある。そんなときに積極的に利用したいのが「高額介護合算療養費制度」だ。世帯単位であること、毎年申請が必要なこと、2年間という事項があることなど、制度活用上の注意点をまとめた。

負担の軽減に民間の保険サービス活用も

在宅療養生活には、公的医療保険や公的介護保険の自己負担分に加えて、公的保険では手当てされない食費などの生活費、おむつ代、訪問診療や訪問看護の際の交通費など、予想以上に費用がかさみ、それが思わぬ負担になる例が少なくないようです。

このうち「おむつ代」については、かかる費用の助成制度を設けている市区町村が増えています。詳しくはこちらを。

要介護高齢者が在宅で生活していくには、公的保険のある医療費や介護費以外にかかる費用が多々ある。そのひとつで、月に1万円を超えることもあるおむつにかかる費用については、各市区町村が現物支給やおむつ代を助成する制度を設けている。その紹介を。

こうしたなか、在宅療養者やその家族の負担を軽減しようと、民間の保険会社が在宅療養にかかる費用を保障するサービスを各種売り出しています。民間の医療保険について詳しく知りたい方はこちらを参考にしてみてください。

公的な医療保険も介護保険も在宅療養の費用負担を軽減してくれるが、これでお金の問題がクリアできるわけではない。療養が長引けばその分負担は重くなり心労に…。その負担を少しでも軽くしようと、民間の保険会社が始めた在宅医療向けサービスに注目してみた。

民間の医療保険に精通しているフィナンシャルプランナーなどの意見も参考にしながら、これらのサービスの利用を検討してみるのもいいと思います。インターネットを介して経験豊富なフィナンシャルプランナーに直接相談できるというサービスもあることをお知らせしておきます(無料保険相談)。

参考資料*¹:厚生労働省「特定疾病の範囲」