介護の疲れをデイサービス・デイケアで癒す

リラックス

父の介護から
母が解放される時間を

「このままでは介護している母が倒れてしまう」――。訪問先で、見舞いに訪れていた娘さんや息子さんから悲壮な顔で相談を受けることがよくあると話してくれたのは、友人の訪問看護師さんです。

自分が介護を手伝えればいちばんいいのだが、仕事もあるし、家族もいて簡単に近くに引っ越してくるわけにもいかない。母にはせめて父の介護から解放される時間を作ってあげられたら、少しは身体だけでなく気持ちも休めることができると思うのだが、何かいい方法はないだろうか――。

このような相談は、妻が夫を自宅で介護している場合、特に認知症のケースに多いそうです。

「認知症は決して恥ずべき病気ではないのですが、何もできなくなった人として見るような謂れなき偏見が、今もって根強く残っています」

「周りのそんな目にさらされることを嫌って、本人も家族も引きこもりになりがちで、それだけに介護している方が消耗してしまうのです」

デイサービスやデイケアを利用して
介護者に休息を

このような場合は、遠慮なく訪問看護師などのプロにSOSを出してほしい、という話をこちらで書きました。
⇒ 認知症者の在宅介護で疲れ果てないために

プロの支援もいろいろあります。訪問看護師としてはその一つとして「介護保険サービスのなかに、認知症の方も対象にしたデイサービスがあります。これを利用してみてはどうでしょうか」と提案することがよくあるそうです。

デイサービスとは、「通所介護」とも呼ばれています。介護保険の「要介護認定(要支援認定を含む)」で「要介護」もしくは「要支援」の認定を受けていれば、認知症のあるなしに関係なく、誰でも受けられる日帰りのサービス*です。

介護保険の日帰りのサービスには、「通所リハビリテーション」とも呼ばれるように、主にリハビリテーションを行う「デイケア」もある。

要介護・要支援の認定を受けるための申請についてはこちらをチェックしてみてください。
⇒ 介護が必要になったら介護保険を利用する

介護からいっとき解放される

デイサービスとは、認知症などにより介護を必要としている方が最寄りのデイサービスセンターやグループホームに通い、そこでスタッフのケアを受けながらレクリエーションやリハビリテーションに参加したり、食事や入浴、健康状態の確認といったサービスを受けながら数時間を過ごすというものです。

デイサービスもデイケアも、原則として送迎サービスつきです。自宅から施設までの往復は、施設側で引き受けてくれますから、介護している方が送り迎えをする必要はありません。

週に何日、1日何時間をデイサービスセンターなどで過ごすかは、本人・家族の希望や要介護度などにより変わってきます。

また、その利用間隔や利用時間によってかかる費用も違ってきますが、1日24時間、365日を家族の世話をしながら一緒の時間を過ごしている介護者にとっては、介護からいっとき解放されて身体とこころを休める貴重な時間となります。

最近は、ビジネスケアラーと呼ばれるご家族が仕事と介護を両立させる手段として、このデイサービスやデイケアを活用するケースが増えているとも聞きます。

「ビジネスケアラー」という言葉を最近耳にするようになった。家族等の介護をしながら仕事を続けている人だが、介護のために仕事を辞めたり、セーブせざるを得ないケースが多いと聞く。そこで、「介護と仕事の両立」に活用してもらいたいサービスをまとめた。

認知症の進行を遅らせたり
生活機能、口腔機能の改善も

ところで、認知症について言えば、デイサービスのそもそもの目的は、介護者の心身の負担を軽くして、介護疲れを癒すことにあるわけではありません。

認知症高齢者がデイサービスセンターなどで同じ認知症の方やスタッフと出会い、交流を持つことにより、社会的な孤立感やそれに伴う不安な気持ちが和らげられ、認知症症状の進行を多少なりとも遅らせる効果が期待されているのです。

また、食事のたびにむせたり、飲み込みにくくなっていると誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)につながりやすいのですが、デイサービスで口腔機能訓練を行えば、その予防を図ることもできます。

レクリエーションとして、楽しみながら手足や身体を動かすことが、運動不足で固まりがちだった筋肉や関節の運動になり、機能回復につながるメリットもあります。

プライドがデイサービスに行くことの弊害に

ほかにもいろいろな効果が報告されているのですが、デイサービスを利用して何らかのプラスの変化を期待するからには、一にも二にも通い続けることが前提です。ところが当初は、「デイサービスに行きたがらない」方が多いようです。

認知症によりこれまで当然のようにできていたことができなくなったり、記憶や判断力が低下していることがあっても、長い人生をかけて培ってきたその人ならではのプライドのようなものはしっかり残っているものです。

実際、何かにつけてそのプライドが顔を出すことが珍しくないという話を、認知症ケアに携わるスタッフの方々からよく耳にします。

このプライドが無意識のうちに働いて、「あそこはぼけた年寄りが行く所で、自分が行くような所ではない」とか「いい歳をして、みんなと一緒に歌ったり、ゲームをして遊ぶなんてことはとても恥ずかしくてできないよ」などと、デイサービスに行きたがらない高齢者も少なくないようです。

プロの協力を得て嫌がっても、行ってもらう工夫を

「でも、その方がこれまで大切にしてきたこととか、生きがいにしてきたことを知って、それを再現するような働きかけをすると、行ってもらえるようになることがよくあります。認知症ケアを専門にしているスタッフのなかには、そうした声掛けがとても上手な方がいて、なるほどと感心させられることが珍しくありません」

とにかくダメもとで迎えに来てもらっていると、いつも来てくれているスタッフの誘いに、「そんなに言うなら、一度行ってみようか」となることが多いとのこと。「とにかく簡単に諦めないことが肝心です」と、訪問看護師さんは語っています。

なお、介護保険には介護疲れ対策としては、ショートステイというサービスもあります。また、医療的なかかわりが必要な方の場合は、健康保険のレスパイト入院を利用することもできます。詳しくはこちらを読んでみてください。

在宅療養では介護者自らの疲労回復が重要だ。その対策として介護保険にはショートステイというサービスがある。しかし医療的なかかわりが必要な場合は断られてしまう。その救済策として医療保険では「レスパイト入院」制度を設けている。この制度のポイントをまとめた。