急激な温度変化により
血圧が変動しヒートショックに
寒さが本格化してきました。これからの冬場は「ヒートショック」による入浴中の事故死が起きやすいことは、よくご承知と思います。
「ヒートショック」とは、急激な温度変化により血圧が上がったり下がったりと、大きく変動することにより起こる症状です。
失神のように気を失って倒れることもあれば、急激な血圧の変動が脳出血や脳梗塞、心筋梗塞等、心臓血管系の発作を引き起こします。
特に冬場の入浴時は、暖房がよく効いた部屋から冷え切った脱衣場へ移動し、いきなり熱い湯に入ったり、逆に、暖まった浴室から寒い脱衣場に移動したようなときに急激な血圧の変動が起きやすく、特段の注意が必要です。
ヒートショックに関しては、何と言っても予防としての日頃の備えが肝腎です。その辺りの話はこちらに詳しく書いてありますので、一度目を通してみてください。
習慣化した換気が
ヒートショックの誘因に
このところの特徴としては、コロナ対策として行ってきた「換気」によりヒートショックを起こすリスクが高いと言われています。
厚生労働省は、換気の悪い密閉空間を改善するために、「30分に最低1回は、数分間程度,窓を全開する」方法で室内の空気を外気と入れ替えることを奨励してきました。
室内に空気の流れを作るのがポイントですが、そのためには複数の窓があれば2方向の壁の窓を開放して換気を行うこと、窓が一つしかない場合は、窓とドアを同時に開けて空気の流れをつくることを勧めています。
寒さの厳しい冬場は、窓を常時2~3㎝開け放しておき、その窓側に暖房器具を設置するなどして、寒さをしのぎつつ換気する方法を提案しています。
とは言え、換気のために開放した窓やドアから入り込む冷たい外気により、ヒートショックのリスクにさらされる可能性が大きいことは否めません。
このリスクを極力避けるには、冷たい外気に直接体をさらさない、あるいはいきなり室温を下げない換気方法を工夫する必要があります。
ヒートショックに
なりやすい人
ヒートショックを防ぐには、室内全体の温度はもちろんですが、「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」の実践、つまり足元付近を温める工夫も必要です。
ただ、いろいろと予防策を講じても、自分だけでなく家族の誰かがヒートショックで倒れることがないとは言い切れませんから、万が一の場合を想定した備えが必須です。
ヒートショックになりやすい、いわゆるヒートショック予備群は、圧倒的に高齢者が多いものの、健康な若者と言えども油断は禁物です。
このシーズンはどうしても飲酒する機会が増えますから、飲酒後の入浴によるヒートショックのリスクも避けられません。
また、入浴習慣の面から言えば、かけ湯をせずに直接浴槽に入ってしまうとか、いつもシャワー浴で済ましている方では、いきなり頭や肩からシャワーをかけることにより、リスクはいやが上にも高まります。
高齢者について言えば、基礎疾患のある方、とりわけ高血圧や糖尿病、高脂血症、心血管疾患や呼吸器疾患で治療中の方、それと肥満気味だったりメタボの方も、ヒートショックのリスクが高いと自覚した方がいいでしょう。
ヒートショックが起きたら
すぐに助けを求める
ヒートショックは軽い脳貧血のような症状で済むこともあれば、いきなり失神して倒れ、頭を打って深刻な事態に陥ることもあります。いずれの場合も、立ちくらみやめまいのような前兆が必ずあります。
入浴中にいきなり目の前がぼやけたり、暗くなったり、あるいは胸がドキドキしたときは、そのまま失神し、倒れて頭を打ったり、溺れたりしないために、すぐに浴槽から出て身をかがめるなど、低い姿勢をとって安静にし、迷わず誰かに助けを求めるのがいちばんです。
入浴前は家族にひと声かける
そのためには、入浴前に「これから風呂に入るから」などと、家族にひと声かけておくことです。一方の、声をかけられた家族は、浴室で変な物音がしないか、入浴時間がいつもより長くないかなど、異常の気配がないかどうか気にかけてあげることが大切です。
何かあったときにいち早く助けを求められるように、浴室内の手の届きやすいところに、居間などにいる家族がすぐ気づけるような呼び鈴などを置いておくのも、一法です。
1人暮らしの場合は、ソフトバンクやNTTドコモといった通信各社が提供しているアプリ、あるいは「セコムみまもりホン」のようなセキュリティ会社の各種見守りサービスや緊急時対応サービスなどを事前にチェックし、活用するのもいいでしょう。
入浴中の家族が
ヒートショックになったら
入浴中の家族がめまいや立ちくらみを訴えたときは、むやみに動かさず、その場で横になってもらい、じっと安静にして症状が鎮まるのを待ちます。
待っている間はそこから離れずに、落ち着いて、静かに声をかけながら、手や腕を軽くさすってあげたり、顔がほてっているようなら、冷たすぎない濡れタオルを軽く当て、ほてりを軽くしてあげるといいでしょう。
声をかけても反応がない場合、あるいは激しい胸の痛み、あるいは頭痛を訴えるような重度の場合は、直ちにかかりつけ医に連絡して指示を仰ぐか、救急車を呼ぶことになります。
高血圧や心疾患があるなど、ヒートショックになるリスクの高い方は、ヒートショックを起こすことを想定して、あらかじめかかりつけ医らとの、いわゆる「人生会議」の話題として取り上げ、対応を話し合って方針を決めておけば、なお安心、かつ安全です。