更年期症状改善の切り札、ホルモン補充療法

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更年期のホルモン補充療法
「何歳から何歳まで?」

このところNHKが「更年期」をテーマに、さまざまな角度から特集を放映しています。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。

先日、ある集まりで顔を合わせた婦人科クリニックの女医さんから、この番組を見たという女性からの問い合わせが、ここ数日、格別増えていると伺いました。

とりわけ多いのは50代や60代、数は少ないものの70代の女性からの問い合わせもあり、その内容としてはホルモン補充療法に関するものが目立つとのこと。

副作用を心配する声も相変わらず少なくないのだそうです。

加えて、新しいところでは、「閉経してから5年ほど経っているが、これからホルモン補充療法を始められるか」とか「ホルモン補充療法を続けているがやめどきは?」といった内容の問い合わせが目立って増えているとのこと。

NHKが集中的に取り上げたこともあって、このところ話題にのぼることが多いホルモン補充療法について、基本的なことを押さえたうえで、始めるタイミングや何歳まで続けられるのかといったことについてまとめておきたいと思います。

ホルモン補充療法は
なぜ普及していないのか

女性の閉経前後に現れるホットフラッシュ(上半身や顔面のほてり・のぼせ・発汗)や気分の落ち込みといった不快な症状、いわゆる更年期症状を緩和する切り札として、ホルモン補充療法があることは先刻ご承知のことと思います。

ホルモン補充療法とは、卵巣機能の低下に伴って分泌が急激に低下する女性ホルモン、主にエストロゲンを薬(ホルモン製剤)で補う治療法です。

この治療法にはすでに30年を超える実績があり、欧米諸国では、対象人口(更年期世代の女性)の30~40%に普及していると聞きます。

ところが日本では、この30年間ほどんど普及が進まず、対象人口における普及率はいまだ2%にも届かないと推定されています。

副作用への懸念が普及にブレーキを

私たちの国では、一般に薬や治療などの副作用にことのほか敏感であることが、新薬とか新しい治療法が広く行き渡らない原因として、しばしば指摘されているところです。

ホルモン補充療法の副作用については、2002年に行われたアメリカの臨床試験において、この治療を受けた女性に乳がん、卵巣がん、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、静脈血栓症が増加したという結果が報告されています。

この報告が、日本におけるホルモン補充療法の普及にブレーキをかける一因となっていることは否めないようです。

しかし、乳がんや静脈血栓症等の副作用を指摘したアメリカにおける臨床試験の対象者には、高度の肥満者や喫煙者、高齢者が多かったことから、その結果がそのまま日本女性にも当てはまるかどうかには疑問が残るとされています。

わかってきたホルモン補充療法のメリット

むしろ最近では、更年期にホルモン補充療法を開始した人では、更年期症状が和らぐことに加え、動脈硬化による心臓・血管系の疾患や骨粗鬆症といった老年期に罹患しやすい疾患が予防できるというメリットが、改めて見直されるようになっているそうです。

こうした経緯もあり、現在、日本女性医学学会(旧:日本更年期医学会)と日本産科婦人科学会は、ホルモン補充療法を更年期症状の改善に必須の治療法として推奨しています。

そのうえで両学会は、安全かつより効果的なホルモン補充療法を行うためのツールとして「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」*¹をまとめ、徹底した管理のもとにこの治療を行うことを求めています。

ホルモン補充療法の開始時期は
閉経直後がベスト

そこで、ホルモン補充療法の開始時期ですが、更年期症状の改善に加えて動脈硬化を抑えるためには閉経直後がベストタイミングとされています。

日本人女性の閉経年齢は平均51歳とされていますから、50歳前後といったところでしょうか。

ただし「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」には、「60歳以上または閉経10年以上の新規投与は、慎重投与ないしは条件付きで投与可能な症例」とあります。

慎重投与の理由ですが、ホルモン補充療法は動脈硬化の予防にもなるのですが、すでに動脈硬化症などが発症していると、ごくわずかながら心臓・血管系疾患の発症リスクが上がってしまうからだと説明されています。

ホルモン補充療法が禁忌になる場合

治療の開始年齢にかかわらずホルモン補充療法が禁忌、つまり適応でない場合もあります。

「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」は、以下の疾患で現在治療中、または既往がある場合は禁忌としています。

  1. 重度の活動性肝疾患
  2. 乳がん
  3. 子宮内膜がん、子宮内膜間質肉腫
  4. 原因不明の不正性器出血
  5. 妊娠が疑われる場合
  6. 急性血栓性静脈炎または静脈血栓塞栓症
  7. 心筋梗塞および冠動脈に動脈硬化性病変
  8. 脳卒中

ホルモン補充療法は
基本、いつまでも続けられる?

ホルモン補充療法には、骨密度を増加させて、閉経後の女性に多い骨粗鬆症を予防する効果も期待できることがわかっています。

また、コラーゲンを増やすため、肌の弾力アップや乾燥感の軽減による美肌効果も期待できるとされています。

特に仕事に就いている女性の場合、精神的に安定して自分に自信が持てるようになったり、活動的になって職場における人間関係もスムーズになり、仕事の効率もよくなるケースが多いようです。

ホルモン補充療法を開始してこれらの効果を実感するようになってくると、このままホルモン補充療法を続けたいと考えるようになる方も少なくないと聞きます。

やめどきは個々の治療効果や健康状態で判断

この点について「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」の序文には、「ホルモン補充療法の投与継続を制限する一律の年齢や投与期間はない」とあります。

つまり、基本的には「いつまで続けてもいい」ということです。

とは言え、個々の健康状態や治療によるメリットと中止によるデメリットのバランスをみながら、開始から5年を目安に中止を判断するのが理想的だとされているようです。

この場合、急に治療を中止すると更年期症状がぶり返すことがあるため、ホルモンの量を徐々に減らしていく必要があり、その判断をする医師にはそれなりの専門的な知識と経験とが求められます。

ホルモン補充療法は内科医などが行っているケースもあるようですが、この治療を安全かつ効果的に受けるには、婦人科外来あるいは更年期の専門外来を受診することをおすすめします。

その際、日本女性医学学会認定の専門医のいる外来であればなお安心でしょう。

この専門医の所在については、日本女性医学学会の公式ホームページにある「近隣の専門医・専門資格者を探そう」*²で検索することができます。

ホルモン補充療法の費用は事前に確認を

なお、ホルモン補充療法には健康保険が適用になりますが、使用するホルモン製剤や使用方法によっては自費扱いになるものもあります。

また、検査や相談(カウンセリングなど)に別途費用がかかることもありますから、かかる費用について事前にきちんと確認しておくことをおすすめします。

骨粗鬆症予防も忘れずに

更年期の女性にとって重要な健康課題の一つである骨粗鬆症の予防については、こちらも併せて参照してください。

更年期以降の女性に多い骨粗鬆症は、骨折や猫背、変形性関節症につながりやすい。予防策の要は、早い時期から定期的に骨量チェックを行うこと。最近は体組成計で推定骨量をチェックできるが、自治体の骨粗鬆症検診を受診して、検診後の指導も受けておきたい。予防にはミカンも。

参考資料*¹:「最新女性医療Vol5 No.1 特集:ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版: HRTの最新情報

参考資料*²:日本女性医学学会「近隣の専門医・専門資格者を探そう」