水銀血圧計をこの先も使い続けたいという方へ

聴診器

水銀血圧計は2020年で
製造・販売禁止です

わが国には高血圧患者がおよそ4300万人いると推定されています。

ただし、実際に医療機関を受診して高血圧の診断を受け、食事や降圧薬などによる治療を続けている方となると、その57%、約2450万人にとどまっているそうですが……。

いずれにしても、かかりつけ医の指示で、あるいは血圧を気にして自主的に、自宅で毎日血圧を測定している方はかなりの数にのぼるものと思われます。

この家庭血圧測定には、水銀柱に直接目盛りがついている水銀血圧計を使用している方が少なくないのではないでしょうか。

ところがこの水銀血圧計は、「水銀汚染防止法」により、その製造・販売、輸入が2020(令和2)年12月末で、全面的に禁止となっていることは先にこちらの記事でお伝えしました。

高血圧の診断、治療をより適正に進めるうえで、本人が毎日決めた時間に、同じ条件で自分で測定して得られる家庭血圧測定値が貴重な情報であることはよく知られている。この家庭血圧測定に水銀血圧計を使用している方に、水銀血圧計の早めの切り替えをおすすめする。

手元にある水銀血圧計の継続使用はOK

ただし、製造や販売は全面的にストップされるのですが、現在使用している水銀血圧計は、今までどおり使い続けることができます。

そのため、「新しいのに買い替えるのはまだ早いから」とか「使い慣れているから」と、この先も手元にある水銀血圧計を継続して使いたいという方が少なくないようです。

そう考えている方に、水銀血圧計の継続使用について注意していただきたいことを、改めてまとめてみたいと思います。

製造・販売禁止後も
水銀血圧計を破棄する必要はない

市販されてきた水銀血圧計は、正しい方法で使用し、保存管理もきちんとしていれば、水銀自体の問題は別として、温度や湿度など環境の影響を受ける心配もなく、比較的高精度の血圧測定が可能とされています。

したがって日本高血圧学会は、2021年以降も、「現在使用している水銀血圧計を、直ちに破棄したり交換したりする必要はない」としています。

とはいえ、耐久性の問題は残ります。

同じ水銀血圧計を使い続けているうちには、水銀の蒸発や不純物の混入、カフ(腕帯:マンシェット)のような部品の劣化といった、いわゆる金属疲労が起きてくる可能性があるのです。

測定値のわずかな誤差も治療方針に影響する

金属疲労が起きているような血圧計を使い続けていれば、血圧の測定値に誤差が生じるリスクはどうしても高くなります。

仮にその誤差が5~6㎜Hg程度のわずかな違いでも、医師の診断や治療方針の決定に影響を及ぼす可能性が否定できません。

特に注意したいのが、「仮面高血圧」とか「隠れ高血圧」と呼ばれる高血圧の一種で、起床に合わせるように血圧が急上昇する「早朝高血圧」のケースです。

高血圧のなかには診察室血圧は正常範囲でも、家庭で測定すると高血圧を示す「仮面高血圧」がある。そのなかに「早朝高血圧」と言って、起床する時点ですでに血圧が上がっていて、脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクが高いタイプがあり、その発見には家庭血圧測定が必須だ。

このタイプの高血圧は診察室では気づくのがなかなか難しく、そのまま放置していると心筋梗塞や脳卒中といった深刻な脳心血管疾患につながるリスクが高いことがわかっています。

そのため、このタイプの高血圧の早期発見・診断には、家庭血圧測定による測定データが重要な意味を持つとされています。

このようなケースでは、深刻な事態に陥るのを防げるかどうかは、家庭血圧測定が正確に行われているか否かにかかっていると言っても言い過ぎではないということです。

水銀血圧計の継続使用には
定期的メンテナンスが不可欠

こうした点を重視して、日本高血圧学会は、家庭血圧測定に水銀血圧計をこの先も継続して使用する場合は、定期的なメンテナンスを行うことを推奨しています。

このメンテナンスについては、国内で販売された水銀血圧計であれば、その製造・販売に携わっている企業が、自社製品の各機器やカフの耐用年数などから割り出したメンテナンスの時期を、購入時に渡される保証書や使用方法説明書などに明記しているはずです。

ところが、水銀血圧計の製造・販売や輸出入が禁止となった2021年からは、このメンテナンスを受けることがこれまで以上に困難になることが懸念されます。

血圧は水銀血圧計の点検をしてから測定を

そこで対策ですが、手元の水銀血圧計で血圧を測定する際には、以下の点を必ず点検して、血圧計に異常がないことを確認してから測定することをおすすめします。

  1. 水銀が漏れていないか、水銀柱が切れていないか
    (水銀柱に空気が混入すると切れ目ができる)
  2. ゴム管の連結部位からの空気の漏れはないか
  3. 送気球から送気、排気ができるか
  4. 水銀血圧計を垂直に置いて圧力を加えないときは指針がゼロ位に戻っているか

この点検で1点でも異常や異変に気づいたら、決してそのままにせず、まずはかかりつけ医にその旨相談するようにしてください。

その際は、使用している血圧計を持参して、かかりつけ医に精度チェックをしてもらうのも一法です。

そのチェックにより、このまま使用し続けてOKか、買い替えが必要かどうかを判断してもらえばなお安心です。

測定位置は手首ではなく上腕で

なかには、血圧計を買い替えることを考えている方もいるでしょう。

水銀血圧計に代わる血圧計として日本高血圧学会は、医療機関で使用している上腕式電子血圧計、つまり手首ではなく上腕にカフを巻くタイプの血圧計をすすめています。

このタイプの血圧計も、消耗品の劣化や故障、電池切れ等により測定精度が落ちる可能性がありますから、必ず定期的なメンテナンスを行うようにしてください。

なお、水銀血圧計を処分する場合は、産業廃棄物処理業者に依頼することになります。

最寄りの有資格の産業廃棄物処理業者については、市区町村の公式ホームページで調べるか、窓口にお尋ねください。

日本高血圧学会は、家庭血圧測定の重要性とその正しい測定法のポイントを、「家庭で血圧を測定しましょう」のペーパーにまとめ、Webサイトで公表しています*¹。

是非ダウンロードして、家庭血圧測定の参考にしてみてください。

なお、降圧治療を始めた方が目標とすべき最新の血圧の値、いわゆる「降圧目標値」については、こちらの記事を参照してください。

5年ぶりに改訂された「高血圧治療ガイドライン2019」。基準値は据え置かれたものの、降圧目標値は10㎜Hg引き下げられ、より厳しくなっている。降圧治療の基本は減塩だ。この1日摂取目標量も来年度から0.5㌘減が予定されている。そのポイントは……。

参考資料*¹:日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」