「孤独死が心配、でも最期は自宅で」という方に

モーニングコーヒー

孤独死(孤立死)は、
ひとり暮らし高齢者に身近な問題

78歳を過ぎて、東京近郊のマンションでひとり暮らしを続けている知人女性が、「孤独死だけは避けたいから」と、習い事やボランティア活動に日々多くの時間を割いて人的ネットワークを広げているという話を、先に紹介しました。

高齢になり、自らの終末期に備えて事前指示書の作成を考えた知人に、無料で入手できる国立長寿医療研究センターの事前指示書を紹介しました。シンプルですが、受けたい医療、拒否する医療を考えておくきっかけなるはずです。

そもそも「孤独死」あるいは「孤立死」には、治療中の病気の有無や自殺との鑑別等々、複雑な問題が絡んでくることから、きちんとした定義はまだないのが実情です。

しかし一般には、「誰にも看取られることなく自宅で亡くなった後に発見される死」といった意味で理解されていると言っていいでしょう。

高齢になり自らのいのちの終わりに思いをはせたとき、彼女のように孤独死を身近な問題として感じている方は少なくないようです。

内閣府が60歳以上の男女に行った調査によると、ひとり暮らしを続けている人の34.0%、およそ3人に1人が、孤独死あるいは孤立死を身近な問題と感じていることが明らかになっています(「2019年版高齢社会白書」による)。

自分が孤独死を心配していることは、とかく語りたがらないものです。

しかし実際は、多くの人が共通する悩みとしてこのことを考えていることをおわかりいただけるのではないでしょうか。

孤独死につながりやすい
高齢男性に多い希薄な人間関係

孤独死の実態に関する全国的なデータはないのですが、東京都監察医務院が公表している統計データを見てみると、東京23区内の65歳以上・ひとり暮らしの人の自宅における死亡者数は、2006(平成18)年の1892人から2016(平成28)年には3179人と、この10年余りで大幅に増加しています。

東京都監察医務院が検索や解剖を行うのは、死因不明の急性死や事故でなくなった人ですから、上記の死亡者数はそのまま孤独死の数とみることができます。

孤独死には、近隣社会との人間関係のありようが大きく影響します。

東京都監察医務院のデータは、人間関係がとくに希薄とされる都会における統計値です。

しかし、今や私たちの国では「無縁社会」という言葉が一般化していることからしても、孤独死の増加は東京に限定されたことではなく全国的な現象と考えていいでしょう。

実際、内閣府が60歳以上の男女に「電話やメールを含む会話の頻度」を尋ねた調査によると、単身世帯、とくに男性の単身世帯では、「毎日会話している」と答えた人は全体の71.3%にとどまっています。

一方で、17.5%が「会話は1週間に1回未満、ほとんど会話はしない」と回答しています。

知人や友人、さらには周囲の人とも日頃からコミュニケーションがとれていないという、あまりに希薄な人間関係のありように、改めて驚かされます。

国は社会的孤立対策として、2021年2月に「孤立孤独担当大臣」を誕生させ、内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を設置している。このホームページには、「孤独・孤立で悩まれている方へ」として相談先一覧が掲載されている。

孤独死防止策は多々あるが、
自分の生活信条に合った方法を

こうしたなか、高齢者、特にひとり暮らしの高齢者を孤独にさせないさまざまな取り組みが、国や各自治体で、さらには企業レベルでも積極的に進められており、これらが確実に孤独死の防止につながることが期待されています。

看取りまで託せる「かかりつけ医」をもつ

そのいくつかを紹介すると、まず個人でできる対策としておすすめしたいのは、日頃から健康に関することならなんでも気軽に相談できる「かかりつけ医」、いわゆるホームドクターを持つことです。

かかりつけ医の選び方については先に記事にまとめてありますので、かかりつけ医をまだ決めてないという方は、是非参考にしていただけたら嬉しいです。

最期のときに備えて事前指示書をまとめていくうえで、身近にいて、健康に関することはなんでも気軽に相談できる「かかりつけ医」は何より心強い存在です。できれば看取りまで託せるような信頼の置ける「かかりつけ医」を選ぶヒントをまとめてみました。

その記事でも書きましたが、身近にいるかかりつけ医には、通常、看取りまで支えてもらうことができます。

仮に、自宅にひとりでいて急変しそのまま息を引きとるようなことになったとしても、かかりつけ医は事前にそこに至るまでのあなたの病状を把握していますから、不審死として警察のお世話になるようなことにはならないはずです。

民間企業との連携による自治体の見守りサービス

自治体レベルでの見守りサービスの取り組みも広く行われるようになっています。ただしこれには、少なからず地域差が避けられません。

その点、全国ネットを有する民間企業によるサービスは、コスト面でも、またサービスの質の面でも、どこでも安心して受けることができます。

たとえば日本郵便が提供している「郵便局みまもりサービス」のオプションのひとつである「みまもり電話サービス」は、他人との会話や多くの人が集まるところへ出かけていくことがあまり得手ではないという方には特におすすめです。

このサービスでは、毎日自動音声の電話で利用者の体調確認を行い、その回答内容がすぐに家族などの指定した先へメールで報告されるという、気軽に利用できるサービスです。

クロネコでお馴染みのヤマト運輸も、自治体との連携のもとに、ひとり暮らしの高齢者を対象に「高齢者を宅急便で見守る」サービスを行っています。

同様にヤクルトレディが週に1回、ヤクルト製品を届けながら高齢者の安否や体調などの変化を確認するサービスも、自治体との連携で行われています。

自治体と連携している見守りサービスについては、社会福祉協議会が対応しているケースが多いようですが、所管する自治体(市区町村)のホームページでチェックするか電話で問い合わせてみてはいかがでしょうか。

企業による見守りサービスや見守りアプリも活用を

企業独自のサービスとしては、たとえば「セコムみまもりホン」のように、セキュリティ会社が独自の見守りサービスを行っています。

また、象印マホービンは「みまもりほっとラインi-pot」として、無線通信機を内蔵した「電気ポット」を高齢者が使うと、その情報がインターネットを通じて、離れて暮らす家族のもとに送信され、さりげなく安否が確認できるというサービスを2001(平成13)年という早い時期から提供しています。

また、ソフトバンクの「みまもりGPSアプリ」やNTTドコモの「つながりほっとサポート」など、通信各社が提供しているアプリの開発も進んでいますから、ご自分の生活信条やライフスタイルに合ったサービスを選んで活用されてみたらいかがでしょうか。

室内に設置しておけば安心な装置

室内に設置しておくだけで、安否確認や体調管理、活動状況をチェックして、緊急時にはメールで家族らに知らせてくれる装置もあります。活用するのもいいでしょう。