「味覚」が変わったら亜鉛不足を疑って!!

牡蠣

亜鉛不足による味覚障害が
高齢者に増えている

毎日、三度三度の食事を美味しくいただけているでしょうか。もしも、次のような症状を自覚しているなら、味覚障害かもしれません。

「最近、食べ物の味がわからなくなった」「食べ物の味が変わった」「食事をすると薬臭い感じがして美味しくない」「いつも口の中で苦い味がしていて食欲がわかない」――。

私たちが食べ物や飲み物の味を楽しむことができるのは、舌に「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚を感じとるセンサーとも言うべき細胞の集合体があるからです。この味蕾が感じとった味を、味覚神経を通じて大脳に信号を送り、「甘い」「苦い」「酸っぱい」「塩からい」「うまい」というように、それぞれ味を判別しているわけです。

ところが、このセンサーそのものや大脳への伝達経路のどこかになんらかのトラブルが発生すると、味覚が衰えて異常を感じるようになります。いわゆる「味覚障害」です。服用している薬が原因のこともあればストレスなどによる心因性の場合もあるのですが、このところ高齢者を中心に増えているのが「亜鉛不足」による味覚障害です。

嗅覚の低下が味覚の低下を招いていることも

なお、味覚はにおいを感じとる力(嗅覚)と密接な関係がありますから、嗅覚の低下が味覚障害を招いていることも少なくありません。幸い、この嗅覚の低下は、セルフトレーニンクで回復することができます。詳しくはこちらを読んでみてください。

歳を重ねるにつれ嗅覚は徐々に低下し、60歳を境にその低下は急激に進むという。その結果、食事の味がわからなくなる、料理を焦がしてしまう、等々の弊害があるが、最も気になるのは認知症との関係だ。幸い嗅覚はトレーニングにより取り戻せる。その方法は?

通常の食生活を続けていれば
亜鉛不足による味覚障害は防げる

必須ミネラルの1つである亜鉛(Zn)は、体内のいたるところで休みなく繰り返されている細胞の新陳代謝に深くかかわっています。味覚でいえば、舌の味蕾を構成している味細胞一つひとつの代謝にも関与しています。

この味細胞は、体内にあるさまざまな細胞のなかでとりわけ代謝が活発です。約1カ月ごとに古い細胞から新しい細胞へと入れ替わっているのですが、この新しい細胞を形成するうえで、亜鉛が重要な働きを担っているのです。

亜鉛自体は、魚介類、肉類、海藻、野菜、豆類、木の実などの種実(しゅじつ)類、玄米など、さまざまな食材に含まれています。そのため通常の食生活を続けてさえいれば、不足する心配はないだろうと言われています。

ところが、食事からの亜鉛の摂取量が不足したり、せっかくとった亜鉛も胃腸機能の低下で十分消化吸収されなかったり、あるいは薬などのために亜鉛の吸収が阻害されたりすると、からだが亜鉛不足に陥り、それが即、味覚障害につながりかねません。

ファーストフードに依存していると
亜鉛不足から味覚障害へ

亜鉛不足の状態に陥りやすい原因として高齢者でよく指摘されるのは、歳を重ねるにつれて食が細くなり、食事の摂取量自体が目に見えて減少してくることです。

加えて、特に高齢者二人だけの家庭や単身者では、手間のかからない出来合いの総菜や弁当、菓子パンといったファーストフード(ファストフードとも言う)で簡単に食事を済ませることが多くなっているのはないでしょうか。

同様に、手軽さが魅力でつい利用したくなるハムやソーセージ、ちくわやかまぼこのような魚肉の練り製品、つくだ煮、さらにはカップ麺に代表されるインスタント食品やレトルト食品、スナック菓子類などの加工食品もファーストフードの範疇に入ります。

これらの調理済み食品には、亜鉛の吸収を妨げる食品添加物が、微量ながら含まれています。そのため、時々摂取するぶんにはまず問題はないのですが、これに頼りすぎて毎食のように食べ続けていると、やがて亜鉛不足に陥り、味覚障害へとつながりかねません。

晩酌の習慣がある方では、アルコールの飲み過ぎも原因となります。体内におけるアルコールの分解には亜鉛が使われますから、アルコール量が増えれば増えるほど体内の亜鉛が減っていき、その結果として、亜鉛不足から味覚障害になりやすいというわけです。

コーヒーや緑茶、紅茶、烏龍茶などに含まれるカフェインにも亜鉛の吸収を妨げる作用がありますから、食事をとったすぐ後にこれらを飲むときは、少し時間を置いてから飲むことをおすすめします。

亜鉛の吸収を抑制する薬により
亜鉛不足に陥るリスクも

亜鉛不足による味覚障害は若者に比べ高齢者に圧倒的に多いのですが、食生活とは別に考えられる原因として、高血圧や脳卒中など、いわゆる生活習慣病の方が長期間にわたり飲み続けている薬の問題があります。

薬そのものが原因で味覚障害を招くこともあります。それとは別に、降圧薬のほか、多くはめまいや意欲の低下といった脳梗塞後遺症の症状軽減を目的に処方される脳循環改善薬やがん治療に使用される抗腫瘍薬、抗うつ薬などのなかには、「亜鉛キレート作用」と呼ばれる、亜鉛の吸収を抑制する作用をもつ薬があります。

このタイプの薬の服用を続けていると、より多くの亜鉛が尿に排泄されてしまうため亜鉛不足に陥り、やがて味覚に異変を感じるようになってくるのです。この場合は、気づいた時点でかかりつけ医に「味がしなくなった」ことなどを伝え、薬の変更を検討するなど適切な対応をとってもらうことをおすすめします。

なお、低栄養状態や亜鉛キレート作用のある薬による亜鉛不足は床ずれの発生や治癒の遅れにも影響していることが研究で確認されています。

牡蠣やうなぎ、ナッツ類で
亜鉛不足を防ぐ

亜鉛不足による味覚障害は食欲を減退させます。そのままにしていると、フレイルと言って、体力も気力も低下して日々の生活に介護が必要な状態に陥りかねませんから、毎日の食事では、意識して亜鉛をとるようにしたいものです。

前述したように、亜鉛はあらゆる食材に含まれているのですが、身近な食品で含有量が多いものとしては、ウナギのかば焼き、牡蠣(かき)、たらこ、シシャモ、レバー、カシューナッツ、アーモンド、ゴマなどがあります。

カシューナッツやアーモンドは、歯がよほど健康でないとそのままではなかなか口にする気にならないでしょうから、サイレントミルサー などで粉砕し、ふりかけとして気軽にとることができるようにしておくことをおすすめします。

牡蠣は抜群に亜鉛が多く、普通サイズのものを3個もとれば、1日の推奨量をほぼ補うことができます。牡蠣は「海のミルク」とも呼ばれるように、亜鉛だけでなく、低脂肪のたんぱく質に加え、ビタミン類もカルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラルも豊富で、栄養価がきわめて高いことで知られています。

ただ牡蠣には、冬に流行するノロウイルスによる感染性胃腸炎の感染源となるリスクもありますから、流行期にはきちんと加熱調理をするなどの注意を怠らないようにしてください。

手軽でおすすめのすりゴマ

最も手軽な食材はゴマでしょうか。ゴマには亜鉛に加えカルシウムも豊富に含まれているうえに、すりゴマならいろいろなものにかけて毎食でもとることができるのではないでしょうか。

亜鉛を強化したエビオスの活用も

なお、食事からの亜鉛摂取だけでは心もとないときは、エビオス錠でお馴染みのビール酵母にビタミンB と亜鉛を強化したスーパービール酵母Z (亜鉛配合)を使ってみるのも一法です。

ビール酵母の効用について詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてみてください。

加齢に伴い胃腸機能の低下や食欲不振などにより低栄養に陥りやすくなる。低栄養は要介護状態になるリスクの高い「フレイル」につながりやすい。その予防措置としての栄養状態の改善に、栄養価値が高いことで古くから人気の「エビオス錠」の活用をすすめたい。