家庭血圧測定に水銀血圧計を使っている方へ

水滴

毎日の家庭血圧測定に
水銀血圧計を使用していませんか

高血圧を正確に診断し、治療していくためには、診察室で医師が行う血圧測定とは別に、家庭血圧測定、つまり本人が家庭で、毎日決めた時間に、同じ条件で自分の血圧を測定して得られる情報が欠かせないという話を先に記事にしました。
読んでいただけましたでしょうか。

かかりつけ医から高血圧の診断を受けて降圧薬を服用している方はかなりの数にのぼります。あるいは、降圧薬を使うほどではないものの減塩を心がけるように指示を受けている方も少なくないでしょう。

いずれの方も、医師からすすめられて家庭血圧測定を習慣にしておられるかと思います。

その際に、水銀血圧計を使っている方、あるいは現在使っている血圧計の買い替えを検討している方に、是非お伝えしたい情報があります。

水銀血圧計の製造・販売が
2021年1月1日以降全面的禁止に

水銀血圧計や水銀体温計などに使用されている「水銀」は、有毒性の重金属です。
私たちの国は、この水銀化合物による「水俣病」という公害病を経験しています。

患者の第1号が公表されてからすでに60年が経ちます。
しかし、水銀の毒性は強く、いまだに水銀中毒による四肢の感覚障害や運動障害、あるいは視力や聴力の障害、さらには言語障害といった症状に襲われる患者が発生しており、地元の方々には依然、深刻な事態が続いています。

そんななか、やや遅きに失した感はあるものの、2013年10月に国際条約として「水銀に関する水俣条約(略称、水俣条約)」が採択されています。

2年後の2015年12月には、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律(略称、水銀汚染防止法)」が、やっと成立しています。

水俣条約も水銀汚染防止法も、水銀の人為的な排出などによる健康被害や環境汚染を防ぐことを目的に、水銀血圧計や水銀体温計、および水銀温度計といった水銀を使用した製品の取り扱い、および管理を厳しく規制しています。

これにより水銀血圧計も水銀体温計も、2021(令和3)年1月1日以降の製造・販売および輸出入が全面的に禁止されることになりました。

使用している水銀血圧計は
水銀非使用の血圧計に切り替えを

水銀血圧計の製造も販売も2021年からストップすることになっていますが、使用が全面的に禁止されるわけではありません。

現在使っている、あるいはすでに購入して保管してある水銀血圧計はそのまま使い続けることができます。
→ 水銀血圧計をこの先も使い続けたい方へ

ただし、困ったことがあります。
どんな製品もそうですが、長く使い続けていれば例外なく金属疲労が起こります。
水銀血圧計も劣化し、測定値の精度が落ちてくる可能性があります。

こうした事態を防ごうと、血圧計を販売する企業サイドは、消費者に定期的なメンテナンスを受けるよう奨励しているわけです。

ところが水銀を使用した全製品の製造・販売が禁止となる2021年以降は、このメンテナンスを受けること自体、今以上に難しくなってくるものと予想されています。

電子圧力柱血圧計が馴染みやすい

こうした事態を想定し、日本高血圧学会は、水銀血圧計から水銀を使っていない血圧計に切り替えることを推奨しています。

その場合の代替品としては、水銀血圧計を使い慣れている方に最も馴染みやすい電子圧力柱血圧計がいいようです。

この血圧計は、液晶画面に水銀柱をイメージした電子柱による棒グラフで血圧が表示されるようになっていますから、水銀血圧計の見やすさがそのまま維持されています。

「水銀柱イメージデジタル血圧計」「水銀レス血圧計」「ハイブリッド血圧計」「疑似水銀血圧計」といった商品名で市販されている血圧計が、このタイプです。

不要となった水銀血圧計は
産業廃棄物として適正に処分する

不要となった、あるいは破棄を決めた水銀血圧計は、水銀を取り扱うことを法的に認められている産業廃棄物取り扱い業者、いわゆる産廃業者に処分を委託する必要があります。

くれぐれも不用品回収業者と間違わないように!!

ただ、自分で産廃業者に直接依頼すると、水銀の処理費用に運搬コストも加わりますから、かなりの額(数万円との説もあります)になります。
なによりも、手続きが複雑で、厄介です。

幸い、環境省の意向を受け、それぞれの自治体が水銀製品の回収時期や回収拠点を決め、適正に処分する事業を行っています。

最寄りの市区町村窓口に相談して、この回収事業を利用するのが一番手っ取り早く、しかもリーズナブルなコストで処分することができます。

ところで、高血圧治療の目標とすべき「降圧目標値」が10㎜Hg引き下げられて厳しくなっていることはご存知でしょうか。詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。

5年ぶりに改訂された「高血圧治療ガイドライン2019」。基準値は据え置かれたものの、降圧目標値は10㎜Hg引き下げられ、より厳しくなっている。降圧治療の基本は減塩だ。この1日摂取目標量も来年度から0.5㌘減が予定されている。そのポイントは……。