訪問看護を週に4日以上利用できることも

テディベア

「訪問看護指示書」の利用枠は
1回30~90分、週3回が原則

このところ、訪問看護を受けながら在宅療養を続ける方が目に見えて増えています。特に、気管切開をして気管カニューレを使用しているとか、酸素療法や経管栄養を続けている、などなど……。日々の生活に医療的な処置やケアが欠かせない方にとっては、訪問看護師の存在が大きな安心材料となっているのではないでしょうか。

訪問看護は介護保険サービスの一環として利用することが基本とされています。ただ、医療保険で利用することもできます。その場合は、かかりつけ医に訪問看護を頼みたいと希望を伝え、かかりつけ医がその必要性を認めて「訪問看護指示書」を交付する、という手順を踏むことになります。

この「訪問看護指示書」で受けることができる訪問看護には、「原則として1日1回、1回の訪問時間は30~90分程度、週に3回まで、1か所の訪問看護ステーションから訪問看護師1人で対応」、という利用制限があります。

しかし訪問看護が欠かせない方のなかには、この利用枠内では安心・安全の下に在宅で療養生活を続けることが難しい場合があります。そういった方のために、原則に縛られることなく、枠を超えて訪問看護を利用できる仕組みが用意されています。

今回は、この、既定の利用枠を超えて医療保険対応の訪問看護を利用する際に求められる要件について書いてみたいと思います。

厚労大臣が定める疾病・状態なら
週4日以上、1日3回まで利用可能

医療保険サービスとしての訪問看護を例外的に利用するための要件としては、おおむね以下の3つのケースが用意されています。これらのいずれかに該当するときは、必要な手続きをとれば、「週に4日以上、かつ1日3回まで」訪問看護を利用できるようになります。

  1. 「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当する場合
  2. 「厚生労働大臣が定める状態等」に該当する場合
  3. かかりつけ医から「特別訪問看護指示書」が発行された場合

「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当するのは

上記「1」の「厚生労働大臣が定める疾病等」としては、2024年1月の時点では、以下の19疾病と1つの状態があげられています。

末期の悪性腫瘍・多発性硬化症・重症筋無力症・スモン・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・脊髄小脳変性症・ハンチントン病・進行性筋ジストロフィー症・パーキンソン病関連疾患・多系統萎縮症・プリオン病・亜急性硬化性全脳炎・ライソゾーム病・副腎白質ジストロフィー・脊髄性筋萎縮症・球脊髄性筋萎縮症・慢性炎症性脱髄性多発神経炎・後天性免疫不全症候群・頸髄損傷・人工呼吸器を使用している状態

「厚生労働大臣が定める状態等」に該当するのは

「2」の「厚生労働大臣が定める状態等」に該当する状態としては、2024年1月の時点で、以下の4ケースがあげられています。

  1. 在宅悪性腫瘍等の患者、もしくは在宅気管切開患者としてかかりつけ医から指導管理を受けている、または気管カニューレもしくは留置カテーテルを使用している
  2. 在宅において、かかりつけ医から次のいずれかの指導管理を受けている
    自己腹膜灌流・血液透析・酸素療法・在宅中心静脈栄養法・成分栄養経管栄養法・自己導尿・人工呼吸療法・持続陽圧呼吸療法・自己疼痛管理・肺高血圧管理
  3. 人工肛門または人工膀胱を設置している
  4. 真皮を超える褥瘡(じょくそう;床ずれ)がある

「特別訪問看護指示書」の交付は
「訪問看護指示書」の交付医師が

一方、「特別訪問看護指示書」は、すでに「訪問看護指示書」の交付を受けているかかりつけ医による対面での診察により、以下のいずれかに該当すると判断された場合に、契約している訪問看護ステーションを介して発行を受けることができるようになっています。

  • 急性感染症などの急性増悪、または末期の悪性腫瘍以外の終末期にある
  • 頻回(週4日以上)の訪問看護が必要

この場合の、末期の悪性腫瘍以外の「終末期」の判断には明確な定義はなく、かかりつけ医の判断次第ということになります。

ちなみに厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアのガイドライン」では、「終末期」の考え方として、「予後〇か月」と目安を決めるのではなく、患者の状態を踏まえてその都度判断するのが重要」、としています。

別の医師から頻回な訪問看護の提案を受けたときは

「特別訪問看護指示書」の交付については、前提に「訪問看護指示書」の交付がありますから、この指示書を交付していない医師が交付することはできません。

したがって、例えばかかりつけ医からすでに「訪問看護指示書」の交付を受けている方が、他の診療科や別の病院やクリニックなどの主治医から「特別訪問看護指示書」の交付を受けることはできません。

別の医師から「訪問看護を頻回に受けた方がいいのでは……」との提案を受けた場合には、訪問看護師を介して、あるいは直接かかりつけ医にその旨を伝えます。

これを受け、かかりつけ医がその必要性を認めた場合に限り、かかりつけ医から「特別訪問看護指示書」の交付を受けるという手順を踏むことになります。

月2回の「特別訪問看護指示書」で
最長28日間の訪問看護が可能に

かかりつけ医が交付できる「特別訪問看護指示書」は、患者1人につき、基本的に月に1回限りと、制度上決められています。この交付を受けると、最長14日の訪問看護を受けることができます。

ただしこの制度にも、さらなる例外が設けられていて、次の2点に該当する場合は、月に2回まで「特別訪問看護指示書」の交付を受けることができます。

  1. 気管カニューレを使用している状態にある場合
  2. 真皮を超える状態の褥瘡(床ずれ)がある場合

これにより、「1」の「気管カニューレ使用」と「2」の「真皮を超える褥瘡」に該当する場合は、1か月に最長28日間1日3回までの訪問看護を受けることができることになります。この場合の「2」の「真皮を超える褥瘡」に該当するかどうかは、かかりつけ医、もしくは訪問看護師が、褥瘡の重症度分類などを基準に判断することになっています。

介護保険には「上乗せ・横出し」の追加サービスも

訪問看護は、基本的には、必要な患者は必要なだけのサービスを利用できるように、特例としての優遇策がいくつも用意されています。訪問看護をより頻繁に受けたいときは、以上を参考に例外的な利用が可能かどうかを判断したうえで、訪問看護師なりかかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。

なお、公的サービスとしての訪問看護の利用条件に当てはまらない場合は、保険外(自費)の訪問看護を利用することを検討する手もあります。介護保険にある追加的なサービスとして、各自治体が独自に用意している「上乗せ・横出し」と呼ばれるサービスについても、こちらを参考に活用してみるのも一法です。

介護保険制度にはさまざまなサービスが用意されているが、それだけではカバーしきれないこともある。そこで各自治体は独自に介護保険以外の在宅サービスを各種用意して、在宅介護の充足を心がけている。そのサービスと利用時にかかる費用についてまとめた。