がん治療中は普段より5割増しのたんぱく質を

トーフステーキ

がんの治療効果を高めるには
よりよい栄養状態を保つ

がん治療中のあなた、食事はきちんととれているでしょうか。

がんの部位や進行の度合いに関係なく、また抗がん剤による化学療法であれ、放射線治療であれ、あるいは手術であっても、治療効果をより高めるには、「栄養状態を良好に保つ」ことが極めて重要であることは重々ご承知でしょう。

食欲がわかないために食事が十分にとれなかったり、食事内容が偏っていたりすると、低栄養の状態に陥りがちです。

その結果、せっかくの治療もねらいどおりの効果を期待できなくなってしまいます。

さらには治療後の経過にもマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

たとえば、手術自体はうまくいったのに、手術創の回復が思わしくないとか、予想外の感染症をひき起こしてしまうなどです。

また、抗がん剤を使用している場合であれば、副作用による苦痛が増強し、からだの衰弱がより深刻化してしまうことも考えられます。

このような事態に陥らないよう、今日は、がん治療中の食事のとり方として、とくに「がん悪液質(あくえきしつ)」と呼ばれるやせ細った状態に陥るのを防ぐのに不可欠な「たんぱく質」を中心に書いてみたいと思います。

たんぱく質を多めにとり
がん治療から健康細胞を守る

がんのためにもともと食欲が低下しているところへ治療の副作用などが加わり、食事量が大幅に減ってしまうことは格別珍しいことではありません。

そうした十分に食べられない状態が長引くと、体力も気力も低下し、併行して食欲もなくしてしまうといった悪循環に陥りがちです。

がんになると大抵の方がやせ細ってくるのは、この悪循環にはまり、からだが必要としている栄養分を食事から十分補うことができていないからです。

この栄養不足の状態がそのまま進行すると、どんどん痩せ細って体重が減っていき、やがては「がん悪液質」と呼ばれる状態に陥ってしまいます。

がん治療とたんぱく質とがん悪液質

がん治療中にこのような消耗しきってやせ細り、パワレスな状態にならないためには、できる限り高たんぱく質、高カロリー、そしてビタミンとミネラルを豊富に含む食品を優先的にとるようにしたいものです。

とりわけ大事になってくるのがたんぱく質です。

がん治療においては、がん細胞だけでなく健康な細胞をも傷つける可能性があります。

その傷ついた正常細胞の修復、回復に使われるたんぱく質を補うためには、健康だったときの少なくとも5割増し、理想を言えば10割増し、つまり2倍のたんぱく質をとる必要があると考えられています。

なお、最近注目の時間栄養学(食べるタイミングを重視する)では、たんぱく質は夕食よりも朝食に多くとるほうがより高い栄養効果が得られるとされています。

たんぱく質は
動物性・植物性をバランスよく

たんぱく質を多く含む食品としてとっさに頭に浮かぶのは、肉類、魚類、卵、牛乳やチーズなどの乳製品といったところでしょうか。

最近人気の大人向け粉ミルク雪印 プラチナミルクfor バランス やさしいミルク味 なども、手軽に摂れる貴重なたんぱく源です。

なお、手軽なたんぱく源である牛乳については、「おなかがゴロゴロするので飲めない」という方が少なくないと思います。この予防法については、こちらを参照してください。

高齢者にとって牛乳は、フレイルやサルコペニアの予防に貴重なたんぱく源だ。しかし、牛乳を飲むと「お腹ゴロゴロ」等の症状に見舞われるため牛乳は飲めない人が少なくない。その主な原因である乳糖不耐症でも飲み方を工夫すれば牛乳を飲めるようになるという話をまとめた。

バナナやアボカドにもたんぱく質が

いずれも動物性たんぱく質ですが、最近注目されているのは植物性たんぱく質です。

つまり大豆などの豆類や豆腐、納豆などの大豆製品、さらにはバナナやアボカドなど一部の果物にもたんぱく質が多く含まれています。

なかでもアボカドは、必須アミノ酸を豊富に含む良質な植物性たんぱく源です。

がん治療中に肉類などの動物性たんぱく質をとることについては、その是非をめぐっていろいろ議論があるようです。

ただ、少なくとも「低栄養状態を改善して自己免疫力を高める」という観点から言えば、アミノ酸スコアの高い肉類の動物性たんぱく質は欠かせないでしょう。

要は、動物性と植物性をバランスよくとっていれば安心ということです。理想を言えば、動物性・植物性が1対1になるように心がけたいものです。

なお、アボカドの栄養についてはこちらを。

高齢者の単身世帯や高齢者だけの世帯が増えるなかで、その食生活が気がかりだ。食が細くなることに加え、手間を省こうと食事を簡略化、あるいは欠食して、低栄養状態からフレイルに陥りがちだ。そんなリスクを避けるべく、栄養価の高い「アボカド」をすすめたい。

体重と血液検査値の変動から
栄養状態を把握する

がん治療中に限らず、医師たちは患者さんのそのときどきの栄養状態を、体重の変動や血液検査の結果、特に「血清アルブミン値(Alb)」などから評価しています。

最近では、病院などで血液検査を受けると、担当医あるいはかかりつけ医による説明があった後に、検査結果報告書を患者さんに渡してくれるようになっています。

検査を受けたらその報告書にある値を、そこに書かれている基準値との比較ではなく、自分の前回あるいは前々回の検査値との変動具合をチェックし、その結果を踏まえて、食事内容を工夫していくようにするといいでしょう。

腎臓の機能が正常に機能しているかどうかもチェック

ただし高たんぱく食をとるには、腎臓の機能が正常に機能していることが前提になります。

たんぱく質の代謝産物、いわゆる老廃物は腎臓で処理されて体外に排出されるのですが、腎機能が低下していると、この処理が追いつかずに、体内に老廃物が溜ってしまうからです。

腎機能の評価に用いられる検査項目は、血液検査では「クレアチニン値(Cr)」や「尿素窒素値(UN)」が代表的です。「β2マイクログロブリン(β2-m)」も腎機能の参考となりますが、この項目は尿で検査されることもあります。

これらの値の変動は担当医やかかりつけ医が当然チェックしてくれているはずですが、当事者としても前回の検査値と比較して変動はないかどうかを確認しておけばなお安心です。

腎機能をより正確に評価して異常を早期に発見しようと、スタンダードクリアランス(イヌリンクリアランス)という検査が行われることもあります。

市販の大豆製品や栄養補助食品も活用を

たんぱく質を意識すると、つい肉類のような動物性たんぱく質にかたよりがちてすが、幸い最近は、手軽な大豆製品が各種市販されています。

いくつか紹介すると、野菜に大豆をおからまで丸ごと使ってブレンドしたカゴメ野菜生活Soy+(ソイプラス) や、50代以上の中高年層に向け、おやつで手軽に植物性たんぱく質を摂れるようにと商品化されたビスケット、ギンビス アスパラガスプロテイン などを上手に活用するといいでしょう。

なお、治療の副作用、あるいは食べるときのつかえ感やむせるなどの症状があって食べにくいときは、少量で効率よくたんぱく質などの栄養を補給できるエンシュア・リキッドやエンシュア・H、明治 メイバランス などの栄養補助食品を活用するのもいいでしょう。

最寄りのドラッグストアなどで簡単に購入できる明治のメイバランスには、1本(125ml)飲めばエネルギーが200kcal、たんぱく質が7.5gの他主要栄養素のすべてを摂ることができるタイプもあります。

食が細くなったとか、食事中にむせたり咳き込むことが多くなるなど、食事だけでは十分な栄養を補えないものの経腸栄養剤の処方を受けられないときに頼りになるのが市販の栄養補助食品だ。今回は歯の治療で満足に食事を摂れない経験を生かし、明治メイバランスを試飲してみた。

一方、エンシュア・リキッドやエンシュア・Hといった経腸栄養剤は医療用医薬品で、入手するには医師の処方せんが必要になります。詳しくはこちらを参考にしてみてください。

がん患者や誤嚥性肺炎のリスクにより口から食べることを「やめたほうがいい」と医師から言われる高齢者の間で、「エンシュア・リキッド」という栄養剤が人気と聞く。医薬品だから医師の処方が必要だが、胃瘻などの人工栄養を選択する前に検討してみてはどうか。