憂うつな気分を野菜や果物の「葉酸」で和らげる

ホウレン草

憂うつな気分の改善に
緑黄色野菜の「葉酸」が効く

「野菜、果物はこころの健康にも効く? 英チーム調査」という記事を見つけました。

英国の研究チームが約5万人の食習慣を2010~17年にかけて追跡調査を行ったところ、野菜や果物を食べる量や頻度が多い人ほど、幸福感が強い傾向がみられた。

生活習慣や収入、家族構成など、こころの健康に影響しそうな要因を調整して分析しても結果は変わらなかった、というのです*¹。

この記事を読んで、思い出したことがあります。

すでに3年以上前のことになりますが、国立精神・神経医療研究センターの功刀(くぬぎ)浩医師ら研究チームが発表した研究成果です。

うつ病や「憂うつ」「気が滅入る」などの症状について栄養学的な側面から研究を続けた結果、緑黄色野菜や一部の果物に多く含まれている「葉酸」がこれらの症状を和らげる、つまり「こころに効く」ことを発表しているのです。

功刀医師らの研究成果は、『こころに効く精神栄養学』(女子栄養大学出版部)と題する一冊の本でとてもわかりやすく紹介されています。

そのなかで功刀医師がこころの健康との関連で特に注目している栄養素は、「葉酸」と「n-3系多価不飽和脂肪酸」、つまり魚の脂に多く含まれることで知られるDHAやEPAなどです。

このうちここでは、「葉酸」にスポットを当ててみたいと思います。

憂うつな気分やうつ病と
脳内セロトニンと葉酸の3者関係

葉酸は、緑黄色野菜や一部の果物に多く含まれる水溶性ビタミンB群の一種です。

からだのなかで、たんぱく質やDNAなどの核酸を合成するうえで重要な役割を担うとともに、脳内における神経伝達物質の1つで、感情や気分のコントロール、さらには睡眠や精神の安定に深くかかわっているセロトニンの分泌・生成促進にも密に関与しています。

脳内にセロトニンが満たされると、気持ちが落ち着いて幸せな気分になってくることから、セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれています。

葉酸は、この幸せホルモンの脳内における分泌を促す働きをしているわけです。

実際、功刀医師ら研究チームの研究では、うつ病患者の4人に1人が血液中の葉酸の値が低い、という結果が出ているそうです。

心身ともに健康な人の場合、血液中の葉酸値が低く出るのは10人に1人とのこと。

この値と比べても、葉酸が憂うつな気分を改善して穏やかな気持ちにするうえで重要な働きをしていることが確認できると、功刀医師は説明しています。

葉酸は水や熱、光に弱く
調理段階での損失分が多い

さてその葉酸ですが、その名のとおり、緑色をした葉っぱをもつホウレン草や春菊、小松菜、さらにはグリーンアスパラ、ブロッコリー、芽キャベツといったごく身近な緑黄色野菜に多く含まれています。

加えて、イチゴや夏ミカン、アボカド、甘柿など、果物のなかにも葉酸の含有量が多いものが多々あります。

ただし葉酸は、水溶性、つまり水に溶けやすいことに加え、熱や光に弱いビタミンです。

調理する段階で、ゆで汁に葉酸が流れ出たり、加熱により破壊されるなどして失われる割合が高いため、できるだけ生のまま食べられる食材を選び、鮮度が落ちないうちに、水にさらす時間を短く、さっと洗って食べることをおすすめします。

とはいっても、サラダ用のほうれん草は別として、葉っぱ物の多くはもちろんブロッコリーやグリーンアスパラも一度は熱を通すことになります。

その際は、ゆでるよりもレンジでチン、しかも加熱時間をできるだけ短くして失われる葉酸を極力少なくすると同時に、煮汁ごと食べるメニューにするなどの工夫が必要です。

憂うつな気分の改善には
葉酸の多い緑茶もおすすめ

緑黄色野菜や果物以外にも、葉酸を多く含む食材があります。

身近なものとしては納豆や焼きのりがあげられます。この二つでしたら、調理の必要はありませんから、毎日の食事におすすめです。

ただし、納豆で言えばかき混ぜ過ぎないこと、また焼きのりは火であぶらないほうが栄養価の損失を少なく抑えられます。

納豆も焼きのりも、熱々のご飯と一緒にという方が多いでしょうが、熱による損失ということを考えると避けたほうがいいでしょう。

葉酸を多く含む食品としては、鶏や牛、豚のレバーといった赤身の肉類や大豆製品が挙げられることも多いのですが、いずれも加熱調理による損失が大きいことから、葉酸の補給源としては緑黄色野菜などのほうがおすすめです。

また、最近は新玄米  葉酸米 葉酸たまごスープ のような葉酸を補強した食材も各種出回っていますから、ときにはこんなものを利用してみるのもいいでしょう。

ただ、葉酸をうたったサプリメントも各種ありますが、その利用の仕方についてはかかりつけ医に相談してみることをおすすめします。

食材とはちょっとニュアンスが異なりますが、日本人が愛飲している緑茶にも葉酸が含まれています。特に抹茶や玉露に葉酸の含有量が多いのですが、これらの緑茶については、むしろ「テアニン」と呼ばれる成分が憂うつな気分の改善に効くことを、功刀医師等のチームが別の研究で明らかにしています。

この点については、また別の記事で紹介させていただきます。

参考資料*¹:産経ニュース20190405