「リビング・ウイル」で準備は万全だろうか

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リビング・ウイルとして
「尊厳ある死」を選択する意思を表明

樹木希林さんや千葉敦子さんのように、「自分らしい、尊厳あるいのちの終わり」にするためには、元気なうちからどんな準備をしておけばよいのでしょうか。

「尊厳」という言葉から、とっさに、日本尊厳死協会の「尊厳死の宣言書」、いわゆる「リビング・ウイル」を思い浮かべる方が多いのではないかと思います。

回復する見込みのたたない病気で、しかも死期が迫ったりすれば、「どうしたいか」を自分で説明できない状態に陥ることも稀ではないでしょう。

たとえば、意識が混濁するなどして「意思表示できない」、あるいは認知症などにより「判断力が鈍る」といった事態がこれに該当します。

このような状態に陥ったときに備え、むやみに延命をはかるのではなく、自分らしい尊厳を保ちながら自然な死を迎えたい旨を、元気なうちに生前の意思として書面に残しておく、これが「リビング・ウイル」です。

「日本尊厳死協会」のホームページで紹介されている直近の統計によれば、協会への入会者は1990(平成2)年以降急増し、2016(平成28)年11月30日現在、「リビング・ウイル」の登録者は11万3000人を超えています。

ちなみにその登録者の80%以上は65歳以上の高齢者で、全体の半数以上(7万5000人)が女性、男性は3万7000人とのことです。

いたずらに死を引き延ばす
延命処置はいっさいことわる

日本尊厳死協会には、満15歳以上で、意識がはっきりしており、自分の意思をきちんと表明することができる状態であれば、誰でも入会できます。

入会をネットや電話、ファックスを介して希望すると、A4版1枚の「尊厳死の宣言書」(生前の意思:リビング・ウイル)が送られてきます。

この書面には、「尊厳死の宣言」を表明する内容として以下の3点が特記されています(臓器提供の登録に関する項目は省略)。

  1. 私の傷病が、現在の医学では不治の状態であり、既に死期が迫っていると診断された場合には、徒に死期を引き延ばすための延命処置は一切おことわりいたします。
  2. 但しこの場合、私の苦痛を和らげる処置は最大限に実施して下さい。そのため、たとえば麻薬などの副作用で死ぬ時期が早まったとしても、一向にかまいません。
  3. 私が数カ月以上に渉って、いわゆる植物状態に陥った時は、一切の生命維持装置をとりやめて下さい。

引用元:尊厳死の宣言書

この書面に署名・捺印して協会に送り返すと、これがそのまま協会側に登録・保管されます。
併せて登録料を払い込むなど、必要な手続きが完了すると、会員証と証明済みの、あなたの「尊厳死の宣言書」、つまりリビング・ウイルのコピーが手元に届きます。

届いたリビング・ウイルを常に携帯し、受診ないし入院時などにあらかじめ担当医に提示しておけば、たとえば意識の回復が見込めないような状態になってからも延々と治療が続くようなことはなく、自然な死をとげられることを目指しています。

なお、日本脳神経外科学会は「植物状態」を、自力で動けず、食べられず、尿や便が失禁状態で、意味のある言葉を話すことができず、意思の疎通がはかれない、目でものを認識することもできない、という状態が3カ月以上続く場合、と定義しています。

リビング・ウイルによる意思は、
9割以上の医師が尊重し、
受け入れてくれてはいるが……

ところで、「リビング・ウイル」は、現時点では法律に定められたものではありません。
ということは、法的効力がないということですから、果たしてどこまで有効なのか気になるところです。

日本尊厳死協会は、2017(平成29)年の1年間に亡くなった会員遺族1175人を対象にアンケート調査を実施し、その結果をホームページで公表しています。

それによると、回答した777人のうち656人(84%)がリビング・ウイルを医療者サイドに提示し、611人(93%)が提示したリビング・ウイルがそのまま本人の意思として「受け入れられた」と回答しています。

一方で、数は14人(2%)と少ないものの、リビング・ウイルは「受け入れられなかった」と答えています。

必ずしも100%の医師がリビング・ウイルに示された申し出を受け入れてくれているわけではないということを、よく承知しておく必要がありそうです。

この点については、「現行のリビング・ウイルでは、無条件に了解しましたとは言えない」と話す医師に、その理由を尋ねてみたことがあります。
返ってきた答えは、こうです。

「延命措置としてひとくくりにするのではなく、心肺蘇生、人工呼吸器、人工栄養など、具体的な医療行為個々について、希望するかどうかが記してないと、結局は、その一つひとつについて改めてご家族に決めていただくことになってしまう。そうなると、ご本人本来の意思とは別のものになってしまう恐れがあるのです」
ひと口にリビング・ウイルと言っても、まだこのへんに課題が残されていそうです。

「延命措置」は一つではありません。いざというときに自分の意思が尊重されるように、希望する措置と拒否する措置を明記し、同時に代理意思決定者を指名した「事前指示書」を準備したい。その一例として『私の四つの願い』を紹介してみました。

なお、「日本尊厳死協会」の監修による『これで安心 最期の望みをかなえるリビングウイルノート』(ブックマン社)が完成し、発売中です。