人生会議(ACP)は元気なうちから何度でも

会議

「人生会議」はACPの愛称
「いのちの終活」のこと

いのちの終活作業、つまり人生の終わりを見据えたこの先の生き方、とりわけ医療やケアの受け方について、自分が中心となり家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組み、「アドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)」の大切さについては、このブログでも幾度となく書いてきました。

1人でも多くの方が納得して最期のときを迎えるためにも、ACPのいっそうの普及が待たれるところですが、残念ながら、この呼び名自体、知名度はまだあまり高くありません。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及を

そもそもACPの考え方は、欧米で生まれたものです。それだけに「カタカナ語で意味がわかりにくい」などと敬遠されがちで、厚生労働省が期待している割には、一般にはあまり普及していないのが現状です。

そこで厚生労働省は、国民になじみやすい名称にして認知度を高め、ACPのさらなる普及を図ろうと、広く一般から「愛称」を募集してきました。そして、集まった1,073件の中から選ばれたのが「人生会議」です。

「人生会議」では
最期のときのことを話し合う

「人生会議」という愛称が発表されたのは、2018(平成30)年11月30日でした。この発表に併せて厚生労働省は、「いいみとり」「いいみとられ」の語呂にちなんで、毎年11月30日を「人生会議の日」とすることも公表しています。

選ばれた「人生会議」の名付け親は、聖隷浜松病院(静岡県浜松市)の現役看護師、須藤麻友さんです。須藤さんの職場は、大きな手術後を含む、きわめて重篤な患者を24時間体制で濃密な管理体制のもとに専門的かつ高度な治療・ケアを行う集中治療室です。

厚生労働省内で開かれた愛称発表会の席で須藤さんは、重篤な状態に陥り、意思表示もできないままに最期を迎える患者をケアすることの多い日々のなかで、「患者さん自身はどう最期を迎えたいと考えているのかを、意思表示できるうちに医療従事者に話しておいてほしいと思うようになった」ことが応募のきっかけだったと語っています。

食卓で気軽に話題にできるほど身近なものに

自分の死について語ることを「縁起でもない」と避けないでほしい。人にはいつか必ずそのときがやってくることを真摯に受け止め、元気なうちから「もしものとき」のことを考えることが広く受け入れられ、定着していって、より多くの人が自分の望む最期を迎えられるようになったらいいのになぁ――、と須藤さん。

「人生会議」という愛称に込めた思いを、「食卓の場で気軽に話題にできるくらいACPが身近になり、広く浸透していってほしい」、と説明しています。

最期のときに至るまでの
生き方を考える

この愛称には賛否両論あるようですが、「人生会議」という言葉自体、まだ私たちのお茶の間までは届いていないように思いますがいかがでしょうか。

思えば47歳で亡くなったフリージャーナリストの千葉敦子さんは、「よく死ぬことは、よく生きることだ」というとても重い言葉を遺しておられます。

1987年にニューヨークで亡くなった千葉敦子さんの生き方が、30年以上が過ぎ、「死への準備」の重要性が叫ばれる今になり、改めて注目されています。アドバンス・ケア・プランニングの観点から、思うことを書いてみました。

人生の終わりを見据えて自らのいのちの終わり方について考えることは、その最期のときに至るまでの自分の生き方を考えることにつながるということです。そんなふうに考えると、ACPの愛称が「人生会議」というのも、言い得て妙だと思うのですが、いかがでしょう。

事前指示やリビングウイルを一歩進めて

「人生会議」を愛称に決定したのは、元NHKアナウンサーで国立成育医療研究センターもみじの家ハウスマネージャーの内田勝也さんを座長とする「ACP愛称選定委員会」です。委員会は選定理由として、以下の2点を挙げています。

  • 意味が明確な単語の組み合わせにより、日常会話に浸透していくことが期待できる
  • 家族等、信頼できる人たちと輪を囲んで話し合う、というイメージが湧く

加えて、座長の内田さんは、「将来的には『うちもそろそろ人生会議をやろうよ』というのが日常会話として定着するのを期待している」と話しています。

人生会議は繰り返し行うもの

先に、一度書いた事前指示書は定期的な見直しが必要という話を書きましたが(コチラ)、人の気持ちは状況によって、また時間の経過とともに目まぐるしく変わるものですから、人生会議も一度やったらそれでOKというものではありません。

人生の締めくくりを自分らしいものにするためにも、事前指示やリビングウイルをさらに一歩進めて、家族や友人、医療関係者と繰り返し人生会議で話し合い、その都度文章に書き留めておくようにしたいものです。

なお、ひょんな話から人生会議に発展したケースをこちらの記事で紹介しています。是非読んでみてください。

死にまつわる話は避けがちだ。そのため「人生会議」の普及はあまり進んでいない。しかし、熱中症が心配されるこの時期、父親の脱水を心配して点滴をすすめる娘との話がきっかけとなり、実は平穏死を希望している旨を家族に伝えることができた父親の話を紹介する。

人生会議のきっかけづくりに短編ドラマを

ところで、人生会議といっても何を話し合えばいいのか、どんなことをきっかけに家族に働きかけたらいいのか、等々……。迷っている方も多いと思います。

そんなときは、神奈川県横浜市が作成した人生会議の短編ドラマをご家族で鑑賞してみるのもいいのではないでしょうか。このドラマについてはこちらを。

新型コロナウイルスの感染拡大が影響しているのか、自分のいのちの終わりを意識して終活に取り組む人が増えている。ただしその終活は、いわゆる身辺整理のレベルで終わることが多い。そんななか横浜市は、短編ドラマを作成して「人生会議」の大切さをアピールしている。