介護サービスの利用者負担が4月から増額に

ケア

介護サービス利用料改定に伴い
利用者の自己負担額が増額に

公的介護保険サービスを利用している方は、原則として各種サービスにかかる利用料の1割を、また一定以上の収入がある方(および世帯)は所得額に応じて2割ないし3割を負担し、毎月支払っていることと思います。

この、介護サービスごとに決められているサービスの利用料金体系、いわゆる「介護報酬」は3年ごとに見直し(改定)が行われています。

この4月からの2021(令和3)年度はその改定の年に当たります。

厚生労働省は1月18日、この先3年間の改定方針をまとめたものを厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会の「介護給付分科会」に提示し、了承されています。

4月から実施される改定では、すでに1年余り続く新型コロナウイルス感染拡大の影響で経営状態が悪化している介護事業者に配慮し、職員の待遇改善を手厚くしています。

それに伴い、その財源となる個々の介護サービス料が引き上げられることから、利用者の自己負担額が増えることになりそうです。

そこで今日は、厚生労働省が試算したケースを参考にしながら、以下の3点を中心にまとめてみたいと思います。

  1. 利用者負担が増額になるのは特にどのような介護サービスか
  2. どの程度増額になるのか
  3. 介護サービス利用料の負担が高額になったときに利用できる制度

個々のケースについてはケアマネジャーに相談を

なお、介護サービス個々の単価は、サービスを利用する方の要介護度によって異なります。

また、同じ介護サービスでも、東京23区や大阪府などの都市部では単価が高くなるなど、市区町村により変動がありますが、ここで紹介するのは平均的なケースです。

今現在、自分が利用している介護サービスについて、今回の改定により自己負担額がどの程度増額になるのかは、担当のケアマネジャーにお尋ねください。

身体介護や生活援助の
介護サービス料利用者負担増

まず、自宅で受けている「居宅サービス」では、ヘルパーらが自宅を訪問してケアを提供する「訪問介護(ホームヘルプ)」については、入浴や排泄(はいせつ)などの身体介護や掃除、調理といった生活援助に対する報酬を今までより手厚くしています。

そのため、たとえば「要介護2」の方が、
〇1回につき20分以上30分未満の身体介護、月に9回、および
〇1回につき45分以上の生活援助を月に8回
利用した場合、1か月の自己負担額は、現行よりも21円増え、5832円となります。

この額は、利用者の自己負担が1割のケースで試算していますから、2割負担の方はその2倍の42円増、3割負担なら3倍の63円増となります。

また、認知症の方への訪問介護サービスについては、専門的なケアの提供を受けた場合は、別途、加算されることになのます。

新型コロナの影響で利用者激減の
通所介護サービス料も負担増に

新型コロナウイルスの感染拡大により最も深刻な影響を受けているのが、日帰りでデイサービスセンターなどの施設に通って食事や入浴などの支援を受ける「通所介護」です。

新型コロナウイルスについては、65歳以上の高齢者、および持病のある方が感染すると重症化するリスクが高いことから、外出の自粛が再々アピールされています。

そのため、感染を恐れる高齢者の間で通所介護サービスの利用を控える機運が高まったことも手伝い、多くの事業者が苦境に立たされています。

そんな状況下にある事業者を経営面で安定させるため、利用者が減少した場合には、通常より高い報酬を受け取れるように設計されています。

そのため、たとえば「要介護2」で1割負担の方が、
〇1回7時間以上8時間未満のサービスを月に11回
利用した場合の自己負担額(月額)は、現行よりも66円増え、1万539円となります。

特養などにおける
施設サービス費も負担増に

「特養」として知られる「特別養護老人ホーム」における「施設サービス費」については、
たとえば「要介護4」で1割負担の方が、個室で30日間生活した場合、1か月の自己負担額は、現行より34円増え、2万7173円となります。

ご承知のように、特別養護老人ホームのような介護保険施設を利用する際は、この施設サービス料の1割負担(収入によっては2割または3割)のほかに、居住費、食費、日常生活費の支払いが必要となります。

今回の改訂では、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、食材の購入や調理スタッフの確保など、入所者に食事を提供するうえで施設側の負担が増えている実態を踏まえ、今年8月から、月額にして1590円増額の4万3350円となります。

介護サービス利用料の負担が
高額になり困ったとき

わが国の公的介護保険制度は、公的医療保険制度同様に、利用者に過度の経済的負担を強いることで、必要な医療や介護サービスの利用を控えてしまうことがないよう、一定以上の金額は支払わなくても済む制度になっています。

その制度とは、公的医療保険は「高額療養費制度」ですが、公的介護保険の場合は「高額介護サービス費制度」です。

高額介護サービス費制度を活用する

高額介護サービス費制度では、利用した介護サービス料の自己負担額の1か月の合計額が一定ラインを超えた場合、所定の申請手続きを行うと、超えた分の金額の支払い補助を公費で受けることができるようになっています。

ただしこの制度を利用して、介護サービス料の支払い補助を受けるには、以下の条件をクリアする必要があることをご承知おきください。

  1. 40歳の誕生日の前日から発生する介護保険料を毎月きちんと収めている
  2. 市区町村へ高額介護サービス費を利用したい旨の申請を「本人」が行う
    (申請には、介護サービス利用時に支払った自己負担金の領収書が必要)
  3. 市区町村から本制度の対象である旨の通知が届いてから「2年以内」に申請する
    (2年の時効を過ぎると、支給を受ける権利は失効する)

高額介護サービス費制度については、こちらで詳しく書いていますので参考にしてください。

医療費に高額療養費制度があるように、介護サービスにかかる費用にも高額介護サービス費制度という負担軽減の仕組みがある。申請すれば、決められた自己負担上限額を超える額を給付してもらえるのだが、所得に応じた上限額がなかなか複雑だ。ポイントをまとめた。
なお、今回の介護報酬改定では、消毒など新型コロナウイルス感染対策の原資とするために、2021年4~9月はすべてのサービスの基本料をさらに0.1%上乗せすることが盛り込まれており、その分利用者負担も増えることになります。