自治体独自の介護保険以外のサービスも利用を

高齢者ケア

介護保険以外の
在宅介護を支えるサービス

介護保険制度は、高齢になり介護が必要な状態になっても、住み慣れた地域で安心して暮らしていけるように、社会全体で支えていこうという制度です。しかし、介護保険さえあれば誰もが納得いくだけの介護サービスを受けながら暮らしていけるかというと、必ずしもそうではありません。

介護保険の各種介護サービスを利用するには、65歳以上で、要介護認定*にて「要介護」か「要支援」と認定されることが条件となります。

この認定を受けていても、利用できる介護サービスの上限額は「要介護度」によって定められていますから、その限度額を超えてサービスを利用すれば、超過分の費用は全額自分で負担しなくてはなりません。

*要介護認定については、こちらをご覧ください。
⇒ 介護が必要になったら介護保険を利用する

介護保険サービスだけではカバーできない

あるいは、「受診するときに病院まで付き添ってほしい」とか「1日に1食でもいいから食事の準備を手伝ってもらいたい」といった程度のことも、要介護認定で「自立」と認定されていれば、介護保険サービスを利用することはできません。

そこで、介護保険によるサービスだけではカバーしきれず日常生活に支障が生じるような場合に備え、介護保険の保険者である各市区町村(自治体)は、介護保険の利用枠を広げるなど介護保険以外のサービスを独自に用意しています。

今回は、必要なサービスが介護保険で受けられないときに利用したい、この追加的サービスについて紹介しておきたいと思います。

なお、在宅での療養生活に欠かせない車いすや歩行器など、福祉用具のレンタルや購入に介護保険が使えるという話をこちらで書いています。是非活用を!!
⇒ 介護保険でレンタル・購入できる福祉用具

介護保険の法定外サービス
「上乗せ・横出し」サービスとは

介護保険で受けられる介護サービスは、要介護度別に設定された利用限度額によって決まってくるのですが、この限度額は、国が標準的な水準として示したものです。

介護保険の運営母体である各自治体は、独自の判断で、この水準を上回る法定外サービスを設けることができるようになっています。このプラスアルファの自治体独自のサービスには、下記の2種類があります。

  1. 上乗せサービス
    介護保険法にある在宅で受けられる居宅サービス(訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション)、デイサービスなどの通所サービス、特別養護老人ホームや介護医療院*などの施設に入所して受けられる施設サービス、および福祉用具購入や住宅改修費などの支援サービスについて、利用できる回数や1回当たりの時間を増やすサービス
  2. 横出しサービス
    配食サービスや移送サービス、理髪サービス、おむつを含む介護用品補助(支給)サービスなど、介護保険法にはないサービス項目を独自に介護保険に加えるサービス
    特徴的なところでは、寝具丸洗い乾燥サービス(杉並区・中央区・横須賀市・上越市・鹿沼市・福岡市など)や徘徊症状のある認知症高齢者専用の小型発信機を貸し出す徘徊探索サービス(中野区・さいたま市・北九州市など)を用意している自治体もある。
*介護医療院とは、長期的な医療と介護が必要な高齢者を対象にした、医療機能と生活機能の両方を兼ね備えた施設。詳しくはこちらを。
2018年4月から開設されている「介護医療院」は、要介護高齢者が介護サービスと併行して医療サービスも受けながら、看取りのときまで暮らすことができる新しいタイプの施設です。いわゆる特養などとの違い、入居条件など、簡単に紹介してみました。

自治体独自のサービスとして多くの自治体が行っている、在宅要介護高齢者が使用するおむつに関するサービスについては、こちらをご覧ください。

要介護高齢者が在宅で生活していくには、公的保険のある医療費や介護費以外にかかる費用が多々ある。そのひとつで、月に1万円を超えることもあるおむつにかかる費用については、各市区町村が現物支給やおむつ代を助成する制度を設けている。その紹介を。

介護保険以外のサービスの
利用にかかる費用は

介護保険サービスにプラスして各自治体が独自に提供する「上乗せサービス」や「横出しサービス」は、多くの場合、介護保険サービス同様、おおむね1割程度の自己負担*で利用することができます。

*介護保険サービスの利用者負担は、通常はサービス費用の1割だが、現役なみの所得(年収280万円以上340万円未満)がある高齢者は2割負担、年収にして340万円以上の高齢者は3割負担となる。

利用者負担を除いた自治体独自のサービスにかかる費用は、原則としてその自治体の第1号被保険者、つまり65歳以上の高齢者の保険料のみで補うことになっています。ただ、この原則に従うと、プラスアルファのサービスを充実させようとすれば、その分、第1号被保険者の介護保険料を押し上げることになり、高齢者に過分な負担を強いることになってしまいます。

地域福祉サービスとして追加的サービスを提供する自治体も

そこで、追加的なサービスについては、介護保険とは別に、地域福祉サービスという位置づけで、一般財源(税金)による事業扱いとすることで、高齢者の負担を軽くしてサービスを確保する施策に切り替える自治体が多くなっています。

ただし、なかには追加的サービスにかかる費用の全額を利用者負担にしている自治体もありますから、これらの追加的サービスについては、担当のケアマネジャー(ケアプランの作成を依頼した担当者)に聞いてみてください。

あるいは、介護サービスの利用者がお住まいの市区町村の介護保険担当課や高齢者福祉担当窓口、もしくは最寄りの地域包括支援センター*に問い合わせるのもいいでしょう。

*地域包括支援センターは、原則として市区町村に最低1つは設置されている。最寄りの地域包括支援センターは、厚生労働省のホームページにある「全国の地域包括支援センターの一覧」*¹から検索することができます。