肝臓がんの予防にコーヒーポリフェノールを

コーヒー豆

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肝臓がんの発がんリスクを
「コーヒーが減らす」との朗報届く

コーヒーとがんの関係については、「あまり飲み過ぎるとがんになるのでは……」と気にしながらコーヒーを飲んでいる時代がずっと長く続いていました。ところが3年ほど前、コーヒー愛飲家たちをホッとさせるニュースが届きました。

世界保健機関(WHO)の外部組織で、フランスに本部を置く「国際がん研究機関」、通称IRAが、「コーヒーに発がん性を示す決定的な証拠はない」と発表したしたことを、フランスの通信社が世界に向けて発信したのです。

このニュースには、コーヒーの発がんリスクを否定したことに加え、肝臓がんや子宮がんに限って言えば、コーヒーには、むしろ発がんリスクを減らす効果がある、とする研究結果が添えられていました。

アルコールや喫煙が肝臓がんリスクを高めることを知りながら、飲酒量を減らせない、あるいは禁煙できないでいる方たちには、大変な朗報でした。

コーヒーの成分「クロロゲン酸」が
肝臓のがん化を抑える

実は、コーヒーと肝臓がんの関連性を調査したのは、IRAが初めてではなかったようです。

IRAが研究結果を発表する10年ほど前、2005(平成17)年には、日本の国立がん研究センター・がん予防研究チームが、コーヒーの摂取量と肝臓がんの発症率の関連について、大規模な調査研究を行っていました。

その結果として、コーヒーをよく飲んでいる人はほとんど飲んでいない人に比べ、肝臓がんの発症率が低いことが確認されていたのです

ただしこの研究では、肝臓がんの発症に関連があるとされている「アルコール飲酒」や「喫煙」の影響については、検討されていませんでした。

そのため、コーヒーの摂取量だけで肝臓がんの発症率を評価することはできないとの考えから、広く一般に知らされることはなかったようです。

とはいえこの研究には、注目すべき点がありました。コーヒーには「クロロゲン酸」に代表される数種の抗酸化物質が大量に含まれていて、それらの物質が肝臓のがん化を抑えている、といった見解が盛り込まれていたのです。

クロロゲン酸をより多く摂るには
「浅煎りコーヒー豆」がおすすめ

クロロゲン酸とは、ポリフェノールの一種です。

コーヒーの色(褐色)や香り、酸味、苦みのもととなっている成分で、コーヒーポリフェノールとも呼ばれています。

植物の樹皮や表皮、種子に含まれるポリフェノールと呼ばれる色素成分に、強い抗酸化作用があることはすでにご承知のことと思います。

ポリフェノールの抗酸化作用は、ビタミンCやビタミンEの抗酸化作用に負けないほど強く、体内に発生する活性酸素を除去し、身体のさまざまな機能が錆びつくのを防ぎ、正常に機能し続けるように働いてくれているのです。

クロロゲン酸はコーヒーの生豆に多く含まれています。

私たちはこの生豆を焙煎(ロースト)、つまり火で煎って使用しているわけですが、クロロゲン酸は熱に弱いため焙煎の過程でかなりの量が失われてしまうことがわかっています。

そのため同じ一杯のコーヒーからクロロゲン酸をより多くとりたいと思ったら、低温で焙煎した「浅煎りのコーヒー豆」でいれたコーヒーを飲むのがいいようです。

そのためには、コーヒー豆を購入する際に「浅煎り豆を使用」と表示してあるものを選ぶといいでしょう。

コーヒーポリフェノール同様に
カフェインへの配慮も忘れずに

インスタントコーヒーを常用している方も少なくないでしょう。

幸い最近は、イニックロースタリーミディアムローストのような浅煎りのコーヒー豆を使用したインスタント物も出回っています。

ちょっとコスト高になりますが、肝臓がんの予防に効くことを思えば、安いものです。

また、「一般のコーヒーに比べ、ポリフェノールのクロロゲン酸が約2倍含まれ、酸化成分が約50分の1に抑えられている」ことをキャッチコピーにした特定保健用食品(通称「トクホ」)のヘルシア コーヒー も出回っています。

ただ、クロロゲン酸の抗酸化作用は、コーヒーに砂糖やクリームを混ぜると、幾分か低下するようですから、飲むならブラックがおすすめです。

カフェインには利尿作用が

また、コーヒーに含まれているカフェインによる利尿作用(何度もトイレに行きたくなる)や覚醒作用(気持ちが高ぶって眠れなくなる)、胃液分泌作用(空腹時には胃もたれ吐き気などを招く)、場合によっては血圧上昇作用(頭痛や強い疲労感を自覚する)があることを念頭に、TPOに応じてコーヒーを選び、あなた好みのコーヒータイムを楽しんでください。

なお、健康の維持・増進を図るうえで摂取することが望ましいエネルギーや栄養素の量をまとめた「日本人の食事摂取基準」には、ポリフェノールの目安量は記載されていません。

しかし一般には、ポリフェノールから健康効果を得るには、1日200~500㎎を毎日何回かに分けて摂取するのがいいとされています。

一方で、コーヒーについてはカフェインのとり過ぎに対して注意喚起されることが多いのですが、わが国では現時点ではっきりした目安量の提示はありません。

ただ、妊婦に対しては1日にマグカップ2杯程度と忠告されていますから、これを目安に量の調整をされてはいかがでしょう。

なお、コーヒーの温度については、食道がん予防の観点から、65度以下に冷ましてから飲むのがいいとされています。詳しくはこちらを。

コーヒーについては、一時期発がん性が指摘されたものの、その後コーヒー成分の発がん性は否定された。だが、ホットコーヒーが熱すぎると食道がんのリスクがあることが指摘されている。一方で、コーヒーに含まれるポリフェノールのクロロゲン酸には抗酸化作用が期待できる。

肝機能の強化、脂肪肝の予防・改善に肝炎体操を

肝臓に関しては、大きな筋肉を鍛えることにより肝機能を強化する「肝炎体操」のプログラムが、久留米大学の医師らにより開発されています。

この肝炎体操には脂肪肝を効率よく改善することも期待できることが確認されています。食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎ、運動不足気味で肝臓が弱っている方にはおすすめです。

肝炎などの肝疾患では安静の必要性が強調されてきた。しかし、今や体を動かさずに筋肉を委縮させることは逆効果であるとして適度の運動がすすめられる。「第二の肝臓」とされる筋肉を鍛え、低下している肝機能を補完する方法として開発された「肝炎体操(10分体操)」を紹介する。

参考資料*¹:国立がん研究センター 多目的コホート研究「コーヒー・緑茶摂取と肝臓がんとの関連について」