「笑い」が食後血糖値の上昇を抑える

笑い

「笑いの効用」を
2型糖尿病患者にも

怒っているよりも笑っているほうが健康にいいことは改めて言うまでもないでしょう。

「笑い」の健康への効用が注目を集めるきっかけとなったのは、アメリカの科学ジャーナリストで作家のノーマン・カズンズ氏の取組みでした。

「笑うこと」「笑顔で過ごすこと」を闘病の重要な柱にして、自らの不治に近いとされる難病を克服したことを一冊の本『笑いと治癒力 (岩波現代文庫―社会)』にまとめ、「笑いの効用」を広くアピールしたのです。

以来、そして現在もアメリカを中心に、カズンズ氏が指摘した治癒力としての「笑いの効用」について、引き続き研究が進められています。

日本においても、さまざまな研究が行われています。
ただ、その多くは、がん患者の免疫力を高めることに焦点が当てられてきました。

そんななか、
「2型糖尿病の患者さんが笑ったら、食後血糖値は下がるんだろうか」という、
ちょっとユニークな発想から行われた研究があります。

そこで今日は、この研究で明らかにされたことを書いてみたいと思います。

糖尿病患者の大多数を
2型糖尿病患者が占めている

糖尿病には1型と2型の2つのタイプがあることは、皆さんご承知のとおりです。

治療にインスリン注射が必須の「インスリン依存型」と、治療に必ずしもインスリンを使わなくてもいい「インスリン非依存型」の2つ。
前者が1型糖尿病、後者が2型糖尿病です。

日本人の場合、1型糖尿病患者は非常に少なく、全糖尿病患者の5%程度、大目に見ても10%ほどだと言われています。
子どもに多いのは、こちらのタイプです。

残りの90%以上が2型糖尿病の患者。このタイプの糖尿病になるのは、ふつう40歳以上で、50歳前後が発症のピークだと言われています。

「笑い」と「食後の血糖値」に関する研究は、この2型糖尿病で治療中の中高年患者を対象に行われています*¹。

食後に漫才を楽しんだ日の
食後血糖値の上昇が抑えられた

「笑い」が「食後血糖値」に与える影響に関する実験は、筑波大学の研究者チームが吉本興業株式会社の芸人さんの協力を得て、2日間にわたり行われました。

被験者である2型糖尿病患者に、
1日目は夕食後に糖尿病に関する講義を受けてもらい、
2日目の夕食後には芸人による漫才を鑑賞してもらいます。

1日目の講義は、冗談がいっさい入らない、聞く側にとっては退屈とも言える話でした。
一方、2日目の芸人による漫才には、どの患者もお腹を抱えて大笑いし、それはそれは楽しい40分間を過ごしています。

講義も漫才も40分間で終えた後、夕食を終えてからちょうど2時間が経った時点で、血糖値を測定し、食前に測定しておいた血糖値と比較します。

結果は、1日目も2日目も、食後の血糖値は食前の測定値に比べ、当然、上昇しました。

しかしその上昇の度合いを比較してみたところ、漫才を鑑賞して大笑いをした2日目は、お堅い講義を聞いた1日目に比べ優位に抑えられていたそうです。

この結果から研究チームは、
「笑いによって、2型糖尿病患者の食後血糖値の上昇が有意に抑えられることを確認した」
と、結論づけています。

食事療法のストレスを
笑って解消する

改めて考えてみると、2型糖尿病という病気は、いったん発病すると、治療上いちばん大事だとされる食事について言えば、制限がかなり厳しくなります。

その制限も、「塩分を摂りすぎないように」とか「この食品は避けるように」といったある一定の栄養素や食品に限られるものではありません。

合併症がなければ、栄養バランスに偏りがないことを条件に何を食べてもいいのですが、摂取カロリーを決められた範囲内に抑えなくてはならないという、ストレスのかかるものです。

同時に糖尿病という病気には、食べ過ぎたり運動量が不足したりすると、深刻な事態につながりかねない合併症を併発するというリスクがあります。
そのため、なかなか気を許せない日々が続きます。

もちろん、食事療法と運動療法を中心に、かかりつけ医との約束事をきちんと守ってさえいれば、普通に生活できるのですが、それでも何かとストレスの多い毎日となります。

このようなネガティブなストレスが血糖値を上げる手助けをしていることを考えると、ポジティブなストレスの代表とも言える「笑い」を糖尿病の血糖コントロールに活用しない手はないと思うのですが、いかがでしょうか。

「笑み」を絶やさない生活に挑戦を

今や、思わず大笑いしてしまうような漫才などの動画は、YoutubeでもDVDでもさまざまなものが数多く出回っています。

これらを活用して、自分の趣味に合ったものを食後に鑑賞してリラックスした時間を過ごすようにすれば、食後血糖値の上昇を抑える効果が期待できるはずです。

あるいは、大笑いしなくても、笑う、つまり「笑い筋」と呼ばれる表情筋を動かす機会を増やす習慣をつけることもおすすめです。

最近はMTG フェイシャルフィットネス のような表情筋を鍛えるトレーニンググッズもありますから、これを活用して「笑み」を絶やさないことに挑戦してみるのも一興かもしれません。

参考資料*¹:糖尿病患者における「笑い」の生理的及び心理的効果に関する研究