栄養豊富な「乾物」の火を使わない調理法

干し椎茸

昔ながらの保存食「乾物」
柔らかい状態に戻すには

買い物も自粛しがちだったウイズコロナの時期の食生活に、冷凍食品と並ぶ保存食としてフリーズドライ食品を活用してはどうだろうか、といった話を先に書きました。

フリーズドライ食品と聞くと、あの乾パンのような風貌から、どうしても「栄養的にどうなのかしら」と疑問をもってしまいます。

しかし、宇宙食に採用されるほど栄養価が優れていることを紹介し、そのなかで「乾物(かんぶつ)」のことにも少しだけ触れています。

ウイズコロナの食生活に、冷凍食品と並ぶ利用したい食品が「フリーズドライ食品」。長期常温保存が可能なうえに「お湯を注いで混ぜる」だけでOKは魅力だ。しかし、「栄養的価値はどうなのか」との疑問の声は多い。冷凍して乾燥させる製法から、その疑問を解いてみた。

すると、この記事を読んでくれた長年の友人からこんな電話が入りました。「切り干し大根とかひじきのような乾物って、必ずしも水やぬるま湯で戻さなくてもいいし、加熱せずに食べられるって知ってた!?」

いいえ、正直、知りませんでした。水などで軟らかい状態に戻してから、加熱して食するものと思い込んでいました。その手間が面倒で、保存が効くからと購入はしたものの、ストックしたままになっている乾物類が結構ある、といった方も少なくないのではないでしょうか。

そこで今日は、昔ながらの保存食で、いつでもさっと取り出して使える乾物の手軽な調理法、そしてもちろん栄養的にどうなのか、といったことについて書いてみたいと思います。

乾物の研究・普及に勤しむ
2人の女性がすすめる調理法

先に電話をくれた友人は、新型コロナウイルスが現れる1年ほど前、横浜市(神奈川県)で開催された「1日だけの乾物大学」といったイベント*に参加し、そこで、乾物類はそのほとんどが加熱しなくても食べられることを知ったそうです。

しかも、「戻すときに必ずしも水やぬるま湯を使う必要はない。ジュース類や缶詰などの汁気で戻してもいいと聞かされて、驚いた」――と。早速その日の夕食用にと、講座でレシピを教わった「切り干し大根とノンオイルのツナ缶のあえもの」を作ってみたそうです。

*このイベントを主催したのは、乾物の研究・普及に努める一般社団法人「DRY and PEACE(ドライ・アンド・ピース)。
Webサイト*¹によれば、2人の女性が東日本大震災直後、スーパーで生鮮食品は売り切れたのに、乾物の棚には食材が豊富に残っているのを目の当たりにし、「これを活用しない手はない」と乾物の活用法の研究に取りかかった、とのこと。サイトには、乾物に関する情報とレシピが満載!!

切り干し大根を
ツナ缶の汁気で戻す

彼女によれば、手順は至って簡単。切り干し大根は、さっと水洗いしてからツナ缶の汁気で戻す。その際、汁気が切り干し大根によく行き渡って軟らかくなるように、手で軽くもむようにして混ぜ合わせるのがコツ。

好みの味つけをし(彼女は市販の減塩麺つゆを4倍ほどに薄めたものを使用)、そこにツナ缶の身の部分を混ぜ入れ、15分ほど置いてから、小鉢に盛りつけ、軽くゴマをまぶして食卓へ。

汁気を全体によく行き渡らせて切り干し大根を軟らかくするには、材料をポリ袋に入れて袋ごとよくもむといい、とのこと。美味しく出来上がり、「おふくろ料理のようだ」と、ご主人も絶賛。

以来リクエストが頻繁にあるため、ツナ缶を貝柱の水煮缶、またはアサリの水煮缶に変えたりして、バリエーションを持たせるようにしているそうです。

私もやってみました。確かに手軽で、なかなかの美味です。すでに何回かビールのつまみにしています。

天日乾燥でかさは減るのに
ビタミンもミネラルもパワーアップ

ここでやはり気になるのは栄養面のことです。この点については、実はちょっと意外なことに、日本医師会が公式Webサイトで、乾物についてこんなふうに紹介しているのです。

「乾物には他の保存方法にはない優れた付加価値がある」「天日に干して乾燥することで、うまみや香り、栄養が増す」――と。

たとえば生の大根と同量の切り干し大根を「日本食品標準成分表」で比較すると、エネルギーは約15倍、たんぱく質は約14倍、食物繊維は約16倍、さらに驚くことに、カルシウムは23倍、鉄に至っては35倍にもなるとのデータがあるとのこと。このほか、気になるビタミン類やミネラル類も天日乾燥によりぐんと増すとのことです。

干し椎茸は太陽のチカラで
ビタミンDが10倍にも

また、太陽のチカラで栄養素が変化する食材もあるとして、椎茸を例にあげています。生の椎茸には食物繊維が豊富で、便秘の解消に効果が期待できるにうえに低カロリーであることから、ダイエット志向の方には最適の食材です。

この椎茸が天日干しにより紫外線を浴びて「干し椎茸」になると、独特の香りとうまみが生まれることはご承知のとおりです。同時に、椎茸に含まれる「エルゴスチン」と呼ばれる成分がビタミンDに変化して、椎茸にもともと含まれているビタミンDの10倍になることがわかっているとのこと。

ビタミンDはカルシウムの吸収を助けて骨の形成を促進させる働きがありますから、女性に多い骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防に欠かせない栄養素です。

更年期以降の女性に多い骨粗鬆症は、骨折や猫背、変形性関節症につながりやすい。予防策の要は、早い時期から定期的に骨量チェックを行うこと。最近は体組成計で推定骨量をチェックできるが、自治体の骨粗鬆症検診を受診して、検診後の指導も受けておきたい。予防にはミカンも。

同時に、ホルモン分泌の調整、そして感染予防の基本となる免疫力を維持し、より高めるうえでもビタミンDは重要な役割を担っています。

ビタミンDについては、日本人の98%が不足していて骨が危ない、といわれています。是非、干し椎茸を上手に活用して骨を健康に!!

「98%の日本人が骨の健康維持に必須のビタミンDが不足している」とのショッキングな調査結果が報告されている。その原因は、ビタミンDが体内で合成されるには日光が必須という特殊性にある。食事でビタミンDを補うと同時に十分な日光浴が必要だ。

参考資料*¹:一般社団法人「DRY and PEACE(ドライ・アンド・ピース)