塩分摂取の7割弱は調味料
3割強は食品の隠れ塩分
高血圧の方はもちろんですが、たとえ血圧が正常の範囲内にあっても、食事をとるたび、あるいはおやつや飲み物を口にするたびに塩分が気になる方は少なくないと思います。
2019(令和元)年に実施された「国民健康・栄養調査」*によれば、私たち日本人(20歳以上)は、1日あたりの塩分摂取量の7割弱(66%)を調味料から、3割強(34%)を食品から摂取しているとされています。
しょうゆや味噌、塩、あるいはコンソメのような固形や粉末のだし類といった調味料に塩分が含まれていることはよくご存知でしょう。
まずは、日頃からこれらの調味料を使用する際、意識して減らす努力をする、あるいは減塩タイプのものを選択することで、減塩効果をあげることができます。
加工食品には隠れ塩分が潜んでいる
一方で食品となると、たとえば煮豆をふっくらさせるために隠れ塩分の多い重曹を使うように、加工段階で塩分を含む添加物が使われている食品は少なくありません。
むしろ加工食品には隠れ塩分が少なからず潜んでいるものと認識し、加工食品を購入する際には細心の注意が必要です。
そこで今回は、減塩のポイントとも言うべきこの「隠れ塩分」について、摂り過ぎないためにはどのような食品に注意が必要なのか、書いてみたいと思います。
身近な食品ランキング
現行の「日本人の食事摂取基準 2020年版」では、健康の保持・増進と生活習慣病を予防するためには、1日の塩分摂取目標量を、食塩相当量で男女ともに従来より0.5g引き下げるよう提案しています。
具体的な値としては、男性は1日7.5g未満、女性は1日6.5g未満となりますが、厚生労働省が2023年6月に示した、健康づくりに向けた食事や生活習慣に関する新たな数値目標では、塩分摂取量を男女とも「7g未満」に設定しています。
ちなみに日本高血圧学会は、男女とも1日6g未満にすることを、またWHO(世界保健機関)のガイドラインはさらに厳しく、1日2~5gの範囲内に抑えることを推奨しています。
調味料の使い方に留意することに加え、加工食品の隠れ塩分の摂取量を極力減らすことが求められているわけで、そのためには、日頃から自分はどんな食品(加工食品)から塩分を摂っているのか知っておく必要があります。
2019年の国民健康・栄養調査のデータによれば、日本人が食塩を多くとっている食品のランキングは次のようになっています。朝の主食はパンの方が増えていますが、市販のパンに隠れ塩分が多いことは少々驚きではないでしょうか。
- 漬物類
(たくあん漬けは5切れに食塩0.5g、梅干し1個に食塩1.8g) - パン類
(クロワッサン1個に食塩0.4g、トースト6枚切り1枚に食塩0.8g) - 干物等、魚介類加工品
(あじ干物1枚に食塩1.4g、あま塩タイプ塩サケ1切に食塩0.8g) - ハム、ソーセージ類
(ウインナーソーセージ1本に食塩0.4g、ハム2~3枚に食塩0.8g) - ちくわ等、魚介練り製品
(ちくわ1本に食塩0.6g、かまぼこ3枚に食塩1.3g) - 即席めん
(カップラーメン1食分に食塩5.1g)
加工食品の隠れ塩分は
「栄養成分表示」で確認
隠れ塩分量を知ったうえで加工食品を利用するには、食品を購入する際にパッケージに明記されている「栄養成分表示」の「食塩相当量」をチェックする習慣をつけることです。栄養成分表示は、新食品表示法により2020年4月から、一般に市販されている包装済みの加工食品全製品への表示が義務づけられています。
その栄養成分表示で塩分は、従来の「ナトリウム(㎎)」表示から「食塩相当量(g)」という表示に改められています。ただ、スーパーなどの店頭には、栄養成分表示に「ナトリウム(Na)量」で表示してある食品も並んでいるようです。
そのような食品を購入する際は、「食塩相当量」と「ナトリウム量」はイコールではありませんからご注意ください。ナトリウム量(㎎)×2.54÷1000=食塩相当量(g)となります。なお、加工食品のパッケージに表示されている栄養成分表示の数値には、±20%の誤差が許されていることをお忘れなく。
「無塩」「低塩」「減塩」
隠れ塩分が少ないのは?
加工食品や調味料の表示のなかには、含まれている食塩相当量(ナトリウム量)を少なくしているという意味で、「無塩」「低塩」「減塩」という表現がよく使われていますから、個々の表示の意味を正しく理解しておくことも大切です。
まず「無塩」など食塩を「含まない」旨の表示があっても、その食品や調味料に含まれる食塩が「ゼロ」という意味ではありません。食品100gあたりの食塩相当量が0.127g未満に抑えられている場合にかぎり「無塩」の表示が許されることになっています。
次の「低塩」など食塩含有量が「低い」旨の表示がある場合ですが、その食品100gあたりの食塩相当量は0.3g以下であることを意味します。
最も多く使われているのは「減塩」でしょうか。この「減塩」など「低減された」旨の表示は、食塩の低減量が100gあたり0.3g以上である場合にかぎり使用が許されています。
しょうゆの「うすくち」「うすしお」表示の意味は?
また、「しょうゆ」の表示には「うすくち」「うすしお」などの表現がよく使われます。いずれも食塩の含有量が少ないと思われがちですがそうではありません。
しょうゆについて減塩表示を行う場合は、減塩の条件、つまり食塩の低減量が100g当り0.3g以上であることを満たしたうえで、標準的なしょうゆに比べ食塩低減割合が20%以上のものにかぎり、「うすくち」「うすしお」などと表示することが許されています。
具体的な食塩相当量は、しょうゆのラベルにある栄養成分表示に「食塩相当量」として表示されていますから、チェックして購入するといいでしょう。
カリウムの多い野菜類を一緒に
隠れ塩分の多い加工食品を利用する際は、野菜類などカリウムの多い新鮮な一品を添えるようにすると、カリウムが余分な塩分の排泄を促してくれます。この点については「高血圧の改善に減塩を助けるカリウムを」で詳しく書いていますので、あわせてご覧ください。
なお、隠れ塩分を極力少なくした減塩食品を「安全・安心で美味しい減塩食品の選び方」で紹介していますので、お役立てください。