追い炊き浴槽で気をつけたいレジオネラ感染

浴槽

追い炊き浴槽が
レジオネラ属菌の感染源に

加湿器が必要になるのは空気が乾燥しがちな冬です。

しかし、夏の間も、屋外はむしろ湿度が上がっているような時でも、冷房のためにエアコンが稼働していると屋内は乾燥気味になりますから、喉や肌が乾燥して不快に感じ、加湿器を使うという方も少なくないと思います。

この加湿器のタイプによっては、レジオネラ属菌という細菌による感染症(レジオネラ症)のリスクがあるため注意が必要、といった話を先に紹介しました。

新型コロナ対策も加わり、今冬は例年以上に加湿器を使うことになりそうだ。加湿器にはいくつか種類があるが、加熱しない水を使う加湿器では、タンク内でレジオネラ属菌が増殖し、その菌で汚染されたエアロゾルを吸い込みレジオネラ症を発症するリスクがある。その予防を。

この記事の中で、循環水を利用する追い炊き機能付き浴槽も、このレジオネラ属菌の感染源となるリスクが高いという話を書いています。

これを読んでくれた方から、「我が家の風呂はその追い炊き機能付きだが、感染を防ぐにはどうしたらいいのか」と尋ねられることが何回かありました。

そこで今回は、その予防策についてまとめておきたいと思います。

なお、レジオネラ症の潜伏期間は2~10日。重症の肺炎を引き起こす「レジオネラ肺炎」では、全身の倦怠感(けんたいかん:体のだるさ)や頭痛などで始まり、咳や38度以上の高熱がみられるようになります。抗菌薬で治療可能ですから、感染を疑ったときは早めに受診を。

浴槽内の汚れや「ぬめり」が
レジオネラ菌の繁殖を促す

レジオネラ属菌による感染症、「レジオネラ症」については、厚生労働省がホームページで多くのページを割き、原因菌や発生状況、症状、治療法、予防策などについて「Q&A」のスタイルで詳しく解説しています*¹。

そこには全部で12の「Q」があるのですが、そのなかの「Q5」の「加湿器などからの感染を防ぐためにはどうしたらよいですか?」に対する「A」欄に、次のような記述があります。

循環式浴槽(追い炊き機能付き風呂・24時間風呂など)を備え付けている場合は、レジオネラ症を予防するため、浴槽内に汚れやバイオフィルム(生物膜。細菌で形成される「ぬめり」)が生じないよう定期的に洗浄等を行うなど、取扱い説明書に従って維持管理しましょう。汚れや「ぬめり」を落としてレジオネラ属菌が増殖しやすい環境をなくすことが大切です。

(引用元:厚生労働省ホームページ「レジオネラ症」*¹)

循環アダプターフィルムと
配管内の定期的清掃・消毒を

追い炊き機能付きの浴槽は、浴槽(バスタブ)が追い炊き機能付きの給湯器(いわゆる「風呂釜」)と2本の配管でつながっていて、浴槽内の残り湯など冷めたお湯をいったん給湯器に戻して加熱し、温まったお湯を浴槽に戻すといった動作を繰り返すことで浴槽内のお湯を設定温度まで沸かし直す仕組みになっています。

この追い炊きが機能するには、浴槽に設置されている「循環アダプター*」と呼ばれる循環湯の吸い込みと吐き出し用の穴(金具でカバーされている)、および給湯器につながる「配管」が欠かせません。

*浴槽からお湯を吸い込む穴と加熱されて温まったお湯を浴槽に吐き出す穴が一緒になっている「一つ穴タイプ」と、浴槽の上の部分に吸い込み口、下に吐き出し口が付いている「二つ穴タイプ」がある。一つ穴の方が配管内の水流の勢いが強く、汚れがたまりにくいとされている。

この循環アダプターのフィルターには、湯垢と呼ばれる皮脂汚れや石けんカス、さらには髪の毛がつまりやすく、配管内もぬめりや汚れが溜りやすいため、掃除をさぼっていると不衛生な状態になり、レジオネラ属菌など雑菌が繁殖しやすい環境を生んでしまいます。

その予防には、循環アダプターに付いているフィルターの小まめな掃除と配管内の定期的な洗浄と消毒が欠かせません。

塩素系薬剤による消毒で
レジオネラ症を予防する

循環式フィルターの掃除や配管内の洗浄・消毒の頻度や具体的な方法については、製品による違いがありますから、ご自宅の浴槽の製造メーカーによる取り扱い説明書で確認されるのが一番です。

そのポイントは、レジオネラ菌属が繁殖する上で栄養源となる浴槽内や配管内の湯垢やバイオフィルム、いわゆる「ぬめり」をできる限り完璧に落としておくことです。

レジオネラ属菌の繁殖によるレジオネラ症の予防に、厚生労働省は、塩素系薬剤を使用して浴槽内や配管内の洗浄・消毒を行うことを推奨しています*²。

塩素系薬剤には、「ハイター」や「ブリーチ」の名で知られる次亜塩素酸ナトリウム(液体)、「ハイクロン」や「さらし粉」の次亜塩素酸カルシウム(散剤、顆粒、錠剤がある)、「ネオクロール」などの塩素化イソシアヌル酸(顆粒と錠剤がある)の、おおむね3種類があります。

使用方法はそれぞれ異なりますが、いずれの塩素系薬剤も、浴槽内に溜めた水に入れると次亜塩素酸が発生し、その殺菌効果により消毒が行われます。

なお、塩素系薬剤は、素手で触れると肌荒れを起こす怖れがあります。

使用する際は、必ずゴム手袋をし、皮膚に付着してしまった場合は、直ちに流水でしっかり洗い落とす必要があります。

また、塩素系薬剤とたまたまあった酸性タイプの製品とが混ざると有毒なガスが発生する可能性があります。塩素系薬剤を使用中は浴室内の換気を怠りなく。

レジオネラ菌の感染リスクが高い人は?

ところで、先に紹介した厚生労働省の「レジオネラ症」の「Q&A」コーナーの「Q10」では、「レジオネラ属菌の感染リスクが高い人」について触れています。

それによると、高齢者や新生児はレジオネラ菌を吸い込んで感染し、レジオネラ肺炎を起こすリスクが通常より高いとのこと。

また、「大酒家、喫煙者、透析患者、移植患者や免疫機能が低下している人は、レジオネラ肺炎のリスクが高い」ともあります。

このところのコロナ禍も影響して免疫力が低下しがちな方も一層の注意が必要です。

参考資料*¹:厚生労働省「レジオネラ症」Q&A

参考資料*²:循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアルについて