「加熱式タバコ」の禁煙治療にも保険が使える

禁煙

この記事は2023年1月12日に更新されました。

加熱式タバコ喫煙者も
保険適用の禁煙治療の対象に

医療サービスとして行われている禁煙治療については、従来は、紙巻きタバコに限り、公的医療保険、いわゆる健康保険が適用されていました。

それが2020年4月からは、「新型タバコ」の一つである「加熱式タバコ」の禁煙治療も対象となり、保険が使えるようになっています。

ただ、医療保険による禁煙治療には厳しい条件があり、条件を満たさないかぎり、自費診療となり、医療保険を使って禁煙治療を受けることはできません。

今日はその条件について書いてみたいと思います。

ニコチン依存症のリスクは
加熱式タバコの常用にも

ご存知のことと思いますが、「加熱式タバコ」とは、電気式の専用器具を使って葉タバコを加熱し、発生するエアロゾル(蒸気)を吸引するタイプのたばこです。

このエアロゾルにニコチンが含まれているわけです。

ちなみに、新型タバコと呼ばれているものにはもう一つ、「電子タバコ」があります。

こちらはある種の液体(リキッド)を加熱してエアロゾルを発生させ、それを吸引します。

このとき使うリキッドには、ニコチンを含むものと含まないものとがあります。

海外ではニコチン入りのリキッドが販売されていますが日本では、医薬品医療機器法(旧薬事法)により、ニコチン入りリキッドの販売は禁止されています(ネットで海外から個人輸入している人もいるようですが……)。

加熱式タバコも電子タバコも、紙巻きタバコのように葉タバコを燃焼させるわけではないので、紫煙(しえん)と呼ばれるタバコ特有のニオイを伴う煙は出ません。

そのため、周囲の人に受動喫煙というかたちで迷惑をかける心配がなく、また自分の髪の毛などにニオイがつき喫煙していることを他人に気づかれることもないことから、喫煙者の間で人気が高まっているようです。

しかし加熱式タバコには、紙巻きタバコと同程度のニコチンを含む製品があり、ニコチン依存症の管理が必要な加熱式タバコ喫煙者も少なくないようです。

しかも、このところ加熱式タバコは静かなブームになっており、加熱式タバコの喫煙者はかなりの数になると考えられています。

こうした背景から、禁煙治療を受けやすくしようと、2020年度に行われた診療報酬改定により、加熱式タバコの喫煙者も医療保険の対象に含まれることになったようです。

禁煙治療の初回と最終回は対面
3回の再診はオンライン治療も

そこで、禁煙治療に医療保険を使える条件ですが、以下に示す3条件のすべてに該当し、担当医がニコチン依存症の管理が必要であると認めることが必要となります。

  1. 「ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)」の得点が5点以上で、ニコチン依存症と診断された人
  2. ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の人
  3. ただちに禁煙することを希望し、日本循環器学会、日本肺がん学会、日本癌学会および日本呼吸器学会が作成した「禁煙治療のための標準手順書」*¹に則った禁煙治療について説明を受けたうえで、その治療を受けることを文書により同意している人

以上の条件をすべてクリアすれば、12週間に5回行われる禁煙治療に、医療保険の「ニコチン依存症管理料」が適用されることになります。

この5回の治療は、従来は、すべて通院による対面診療で行われていました。

これが2020年度の診療報酬改定により、5回のうち初回と最終回は現行どおり通院による対面診療ですが、2~4回の診療についてはスマートフォンなどの情報通信機器によるオンラインでも受診できるようになりました。

オンライン診療では、禁煙治療の経過中に禁煙補助薬が必要になった場合は、わざわざ受診しなくても、薬剤または処方箋を医療機関から患者宅に送付してもらうことができます。

あるいはかかりつけ薬局があれば、医療機関からその薬局に処方箋がファクシミリなどで送信され、それを受け取ったかかりつけ薬剤師を介して薬剤が宅配されるようになります。

オンライン診療の流れについては、こちらの記事を参照にしてください。

慢性疾患で定期的にかかりつけ医の診療を受け、定時処方を受けている人には、この時期、新型コロナウイルスの感染リスクの高い医療機関に出掛けて行くのは不安だろう。この際、出掛ける必要のないオンライン診療、オンライン服薬指導を活用してみてはどうか。その方法をまとめた。

また、禁煙治療の途中で挫折してしまう人を極力減らす狙いから、初回から5回までの医療費(自己負担分)を最初の回に一括して支払うと、1~5回分を個別に支払うよりも若干安くなる仕組みも、新たに導入されています。

ニコチン依存症の
スクリーニングテスト(TDS)

禁煙治療に医療保険が適用される条件の「1」にある「ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)」は、「自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまったことがありますか」「禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか」など、リストアップされている10項目の質問に回答していくものです。

「はい(1点)」「いいえ(0点)」で答えていき、合計点(TDSスコア)が5点以上であればニコチン依存症と診断されるというものです。

質問に対する答えが「はい」にも「いいえ」にも該当しないこともあるでしょうが、その場合は、0点としてカウントされます。

このスクリーニングテストの全問は、こちらの記事で紹介していますので、挑戦してみてはいかがでしょうか。

毎年5月31日は世界禁煙デー。今年は「たばこの健康影響を知ろう」をテーマにさまざまなかたち、さまざまな場所でキャンペーン活動が展開される。これを機に禁煙を決意する喫煙者が1人でも増えることを願い、禁煙外来における禁煙治療を健康保険で受ける話を書いてみた。

喫煙による健康リスクを示す
ブリンクマン指数

適用条件「2」のブリンクマン指数とは、喫煙による健康リスク、つまり喫煙が喫煙者自身の健康に与える影響を調べるための喫煙指数で、「1日に吸うたばこの平均本数×喫煙していた年数」で割り出されます。

タバコには、ニコチン、一酸化炭素、タールなど、発がん物質を含む有害物質が200種類以上も含まれています。ブリクマン指数が高くなるほど、これらの有害物質による健康被害のリスクは高まると考えられています。

ただし、タバコの種類が違えば、有害物質の含有量も微妙に違ってきますし、タバコの吸い方によっても、1本の喫煙がからだに与える影響も異なります。

そのため、ブリンクマン指数だけで健康リスクを正確に把握できないものの、一般に、
■ブリンクマン指数が400を超えると肺がんの発症リスクが高くなり、
■600を超えると肺がんに加え肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)
■1200を超えるとさらに喉頭がんの発症リスクも高くなる
と考えられています。

禁煙治療の補助薬出荷停止について

なお、禁煙治療は補助薬と医療者による面接指導の両輪を基本に行われます。

この補助薬として広く使われてきた「チャンピックス」が、一部から発がん性物質が検出されたため2021年6月から出荷が停止されています。

出荷の再開は2022年後半以降が予定されていたものの、2023年1月12日現在再開の報はなく、チャンピックスを使えないことを理由に禁煙外来を休止する医療機関も出てきています。

しかし、補助薬としては、ニコチンパッチやニコチンガムがあります。

また、補助薬がなくても面接指導によりニコチン依存から立ち直ることは十分可能ですから、禁煙治療を諦めないでいただきたいと思います。

参考資料*¹:「禁煙治療のための標準手引き書・第7版」