COVID-19予防に見直されるマスクの効用

マスク

マスク着用に関する指針
WHOが一部修正

新型コロナウイルスの感染が世界規模で広がり、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の患者は193の国と地域において240万人を超え、死亡者数が20万人に届こうとしています。

そんななか、WHO(世界保健機関)は4月6日、今年(2020年)1月に作成したばかりのマスクの着用に関する指針の一部を修正し、公表しています。

この修正指針でWHOは、健康な人が一般用のマスクを着用してもウイルスの感染を100%予防できる根拠はないことを改めて指摘。
マスク着用の効果を過信しないよう忠告しています。

その一方で、感染していながら無症状で経過している、いわゆる無症候性感染者(無症状病原体保有者)が周りの人にウイルスをうつさないためには、マスクの着用が役立つこともあるとする見解を、WHOとして初めて表明しています。
いわゆる「咳エチケット」の効用です。

そのうえで各国の新型コロナウイルス対策の政策決定者に対しては、国民にマスクの着用をすすめる際には、その目的や期待できる効果、どのような種類のマスクを使うべきか、その取り扱い方などを具体的に示すよう求めています。

新型コロナを含む飛沫は
咳で6m、くしゃみで8m飛ぶ

WHOが新型コロナウイルス感染予防策としてマスクの着用に関する指針を見直すきっかけとなったのは、米国マサチューセッツ工科大学で最近行われた研究結果に基づくものです。

研究チームは、ハイスピードカメラやセンサーなどを使い、人が咳やくしゃみをした際に何が起こるのかを正確かつていねいに観測しました。

その結果、咳では最長6m先まで、くしゃみの場合は最長8m先まで飛沫(ウイルスを含むつばや唾液など)が飛ぶことが確認されたというのです。

この結果をもとに、研究チームは次のことを指摘しています。
⑴ 換気の悪い室内などでは、マスクの着用により感染リスクを軽減できる
⑵ 感染者と対面している場合のマスク着用は、感染者からの呼吸の流れを遮断し、大量のウイルスを口や鼻から遠ざける助けになる
⑶ フィルター効果のない薄いマスクでは、空中をただよう微細な飛沫からは守ってくれないだろうが*、咳やくしゃみに伴い勢いよく吐き出される飛沫を正面から受け止めず、横に流す効果は期待できるかもしれない
(*現時点で、新型コロナウイルスが空気感染、つまり空気中をただよう微細な飛沫や粒子を吸い込むことにより感染することを示す科学的エビデンスは得られていない)

米国CDCがマスク着用を推奨する見解を発表

この研究成果を受け、新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大する状況にありながら「予防効果なし」としてマスクの着用を奨励してこなかった米国の疾病対策センター(CDC)は4月3日、従来の見解を修正し、マスク着用をすすめる新たな指針を発表しています。

このなかで、「外出時や周囲の人との距離をとりにくい環境では、マスクなど鼻と口を覆う布の着用をすすめる」としています。

欧州各国でもマスクの効用が改めて見直され、チェコやオーストリアなどでは、新型コロナウイルス対策として、国民にマスクの着用を義務づけるようになっています。

布製マスクに期待できる
新型コロナ感染防止効果は?

一方で、新型コロナウイルス感染対策としてのマスク着用に関するWHOの新しい指針では、安倍晋三首相が「全戸配布」の方針を打ち出して以来、しばしば話題にのぼっている「布製マスク」についても、新しい見解を表明しています。

これまでの指針では布製マスクについては、
「いかなる状況下においてもすすめられない」としてきたところです。

ところが、修正された最新の指針では、
「予防の効果があるかはまだ評価ができていない」
として、推奨することも反対することもできないと、表現を修正しているのです。

サージカルマスクに匹敵する飛沫飛散防止効果

布製マスクについては、厚生労働省はWEBサイト上に「布マスクの全戸配布に関するQ&A」コーナーを設け、全国から寄せられるさまざまな質問(マスクの洗濯方法についても詳しく紹介している)に答えています*¹。

そのなかの「Q3」では、「布製マスクに効果はあるのですか?」に対する回答として、次の点をあげて、感染の防止に効果が期待できることを伝えています。
⑴ (ウイルスを含むリスクのある)咳やくしゃみなどの飛散を防ぐ(咳エチケット)
⑵ (ウイルス付着のリスクがある)手指で口や鼻に直接触れるのを防ぐ(接触感染予防)
⑶ マスクの着用により喉や鼻が湿潤することにより風邪などにかかりにくくなる
⑷ 洗濯して繰り返し利用することができるため、店頭でマスクを入手できないことに対する不安を解消できる(マスクを求めようと並び、他者と密接するリスク予防にもなる)

また、北里大学医療衛生学部公衆衛生学部の伊与亨講師(公衆衛生学)は産経新聞の取材に応え、布製マスクの「飛沫の飛散を防ぎ他人にうつさない効果は、不織布でできたサージカルマスクと遜色ない」、つまり効果はほとんど同じだと答えています。

全戸に配布される布製マスクは、洗濯して再利用可能とはいえ、当面は世帯当たり2枚とのことなので、家族の多い家庭では、決して十分な数とは言えません。

この点も考慮して、小学校、中学校、高等学校、特殊支援学校等の児童にも順次配布していく予定であること、また介護施設、障害者施設などにも併せて配布していく予定としています。

なお、布製マスクの洗濯法の詳細は厚生労働省のサイト*¹をご覧いただくとして、注意したいのは洗剤です。汚れが特に気にならないときはエマール 洗濯洗剤 のような衣料用中性洗剤、汚れが気になるときはハイター 衣料用漂白剤 などの塩素系漂白剤(衣料用を使うこと)を、商品のボトルなどに明記されている指定の濃度を厳守して使用するのがいいようです。

医療用マスクは
医療従事者に優先的配布を

WHOの新たな指針は、新型コロナウイルス感染症の感染対策でマスクを使用する優先順位としては、まずは感染患者と接触している医療従事者であるとして、
「医療従事者が使用する(「サージカルマスク」や「N95」など)高性能のマスクは、医療従事者に行き渡らせなければならない」と強調しています。

具体的には、
⑴ 医療用マスクは医療従事者に優先的に配分されるべきとし、
⑵ 一般の人が医療用マスクを使うのを控えるよう呼びかけるとともに、
⑶ 医療用マスクを着用していれば感染を予防できるという誤った理解に基づく安心感により、手洗いや人との物理的距離を1m以上とる(ソーシャルディスタンス)など、感染拡大防止の基本的予防策がおろそかになりかねない、
との懸念を表明しています。

なお、新型コロナウイルス感染予防策としてマスクの効用が見直されたものの、過信は禁物。正しい装着方法や取り扱い方などについては、こちらの記事を参照してください。

中国武漢市で発生した新型コロナウイルスによる感染が拡大し、マスク姿が目立っている。ただ、マスクの着用法や取り扱い方に「これではマスクをしている意味がない」と気づくことが多い。そこで、ウイルス感染の予防効果を高めるマスクの着け方、取り扱い方をまとめてみた。

参考資料*¹:厚生労働省「布マスクの全戸配布に関するQ&A」