新型コロナウイルス対策の基本は「手指の清潔」

手洗い

新型コロナウイルス感染症に
公衆衛生上の緊急事態宣言

中国湖北省の武漢市を中心に日増しに感染が拡大した新型コロナウイルスによる感染症について、WHO(世界保健機関)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に相当することを宣言したのは2020年1月31日未明(日本時間)のことでした。

WHOは、1月22、23日の2日間にわたり専門家による緊急委員会で協議を重ねましたが、その時点では緊急事態には当たらないと判断、緊急事態宣言を見送っていました。

しかしその後、感染が世界中に広がり、医療体制の整備が遅れている国でも感染が拡大するおそれが出ていることを重視したWHOは、やや遅きに失した感は否めないものの、緊急事態宣言を出すに至りました。

これを受けて日本政府は、同年2月7日施行予定の「指定感染症」と「検疫感染症」の指定に係る政令を前倒しし、2月1日より施行し、以来今日まで継続しています。

指定感染症となったものの
被感染リスクは依然残る

新型コロナウイルスによる肺炎が「指定感染症」と「検疫感染症」に指定されたことにより、国内における感染拡大の防止、および感染が疑われる外国人の入国に関しても、厳しく制限できるようになっています。

指定感染症や検疫感染症に指定される前に比べれば、新型コロナウイルスの被感染、つまり感染を受けるリスクは下がりました。

しかし、完全にゼロではないので、油断はできません。

人に感染を起こすコロナウイルスには6種類あることがわかっています。

そのうち4種類については、発熱や上気道症状(鼻水、くしゃみ、鼻づまり、のどの痛みなど)を主な症状とする、いわゆる風邪の原因ウイルスで、深刻な状態を引き起こすことはほとんどないとされています。

一方、残りのウイルスは動物から感染するものです。

このタイプのコロナウイルスにより、2003年にはサーズ(SARS)として知られる重症急性呼吸器症候群が、また2014年にはマーズ(MARS)で知られる中東呼吸器症候群が、いずれも世界的規模で流行し、多くの死者を出して問題となったことはご承知のことと思います。

今回の新型コロナウイルスは後者の、動物から感染するタイプです。

その遺伝子構造がサーズを引き起こしたコロナウイルスに非常によく似ている、あるいは感染が拡大していくなかですでに変異を起こし、感染力や症状を引き起こす病原性が高まっているとする説を、一部のウイルス学者が発表しています。

飛沫感染対策の基本は
手指の清潔を保つこと

いずれのタイプにしてもコロナウイルスは、原則として、コロナウイルスに感染している人が咳やくしゃみをした際に周りに飛び散る細かい水滴、いわゆる飛沫(ひまつ)を介して感染が広がることがわかっています。

感染者から飛び出した飛沫にはウイルスが含まれている可能性がありますから、その飛沫を直接浴びないためには、マスクを着用することも感染から身を守るうえで大切です。

しかし、飛沫は空中にとどまらず、空気中をごく短い距離しか飛ばない(2m弱)ことが確認されています。

一方で、飛沫中のウイルスはドアノブなどでは2時間程度、段ボール箱などではさらに数時間生き続けるとされていますから、ウイルスで汚染された手すりやドアノブなどに触れた手を介して感染を受けるリスクは残ります。

ですから、感染者と濃厚接触*しているときはマスクを着用する必要がありますが、濃厚接触状況以外の場合の確かな予防策は手指衛生、つまり「こまめな手洗いや消毒」により手首を含む手指全体を常に清潔にしておくことなのです。

*濃厚接触藻者の定義が4月21日変更されている。 COVID-19の確定患者が発症した2日前から接触した者のうち、①その患者と同居、あるいは15分以上の接触(車内、航空機等内を含む)があった者、⓶適切な感染防護なしに患者を診察、看護もしくは介護した者、③患者の気道分泌物もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者、④手で触れる、または対面で会話することが可能な距離(目安として1m以内)で、必要な感染予防策なしで患者と15分以上の接触があった者、のことをいう。

速乾性擦式アルコール消毒薬で
手指全体から手首までを消毒

手指を衛生的に保つ方法には、流水と石けんを用いる手洗いによる方法と、アルコール手指消毒薬を用いる方法の、概ね二つの方法があります。

手洗いに使う石けんは、あえて抗菌石けんを使わなくても、普通の石けんで、手についているかもしれないウイルスを「よく洗い流す」ことが大切です。

新型コロナウイルスの感染拡大により、街のあらゆるところにポンプタイプで速乾性の擦式(さっしき)アルコール手指消毒薬が設置されていますから、手近に水道がないなど手洗いができないときは、この消毒薬を使うといいでしょう。

その方法ですが、ポンプを軽く1回押してジェル状の速乾性擦式アルコール手指消毒薬を適量手のひらにとり、両方の手のひらと手の甲、指先、爪の間、指の間、指の背の部分、さらには両手首まで、ジェルが完全に乾くまで皮膚にしっかり擦り込みます

皮膚はアルコール消毒薬
物の表面は次亜塩素酸ナトリウム液

消毒薬で手指消毒をしている人の映像がテレビで流れているのを見ると、手にとった消毒薬を両手のひらで軽く1、2回擦り合わせるだけで終わり、という人が多いように思います。

これでは指先や指の間、爪の間、手の甲、手首に、ウイルスが残ってしまう危険性があります。
このウイルスで汚染された手指で、無意識に口や鼻、さらには目に触れたりすると、その部分の粘膜から感染を受ける可能性があります。

流水と石けんで手洗いする場合もそうですが、手指全体を清潔にすることをお忘れなく。
また、人混みはできるだけ避けた方がいいのですが、やむを得ず人混みに紛れ込んだりしたときは、手指だけでなく顔も洗った方がいいようです。

なお、手指の消毒にはキレイキレイ のようなアルコール(エタノール)消毒薬が適しています。手が荒れがちな方は、保湿剤が含まれているピュレル ゴージョー がおすすめです。

また、頻回な手洗いにより手荒れが起こりがちですが、その予防には、皮膚保護クリーム クリア-G がおすすめです。

ウイルスが付着しやすいドアノブや手すり、エレベータの押しボタンなど、多くの人が触る物の表面の消毒には、除菌・消臭スプレー【エコノアクア】のような次亜塩素酸ナトリウム液が向いているようです。

それと、この時期にレストランなどで食事をするときは、テーブルに置かれている調味料の類に直に触らないように。

触るときのために、白十字 ショットメン  [指定医薬部外品]や除菌タイプのウエットティッシュなどを携帯していれば安心でしょう。

参考資料*¹:厚生労働省「新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09099.html