代替肉のキー成分を発見したのは日本人だった!!

ハンバーガー

植物由来の代替肉を使った
ハンバーガーが大人気とか

ここ数日、「代替肉*」を使ったハンバーガーの話題がメディアで報じられています。

始まりは、アメリカの大手ハンバーガーチェーンとのこと。
植物ベースの代替肉を使ったハンバーガーが、大変な人気だというのです。

アメリカではこのところ従来にも増して健康志向が高まっているようです。

こうした動きを受け、今さまざまに加工された植物由来の代替肉が急速に普及し、紛れもないビッグビジネスになっているというのです。

日本でも外国人観光客や格別健康志向の強い人、あるいは菜食主義者をメインターゲットに、すでに売り出され、すでに市民権を得つつあると伝えています。

*代替肉とは、大豆ミートのように、従来の動物性食肉と同じような味や食感を目指した加工食品の総称。たんぱく質を多く含む一方、従来の食肉に比べて低カロリーである点が注目されている。

国内でも大豆由来の代替肉が

植物由来の代替肉自体は、すでに日本でも数種類が市販されています。

大豆ミートなど、大豆製品をべースにした製品が多く、私もその一つをネットで購入して試食してみたことがあります。

パッケージにある栄養成分表にある、特にたんぱく質についてはもちろん満足できる値です。

加えて、味の上でも、原料の豆っぽさはほとんど感じられず、動物由来の通常の肉類と比べても遜色ないように感じました。

ただ、スーパーなどでも手に入る豆類に多く含まれる植物性たんぱく質をベースにした代替肉には、見た目的にやはり一抹の物足りなさを感じます。

いかにも肉っぽさを実感させる、あの「赤み」が足りないのです。

大豆由来の代替肉に
赤みを出す成分があった

一方、テレビ映像で見た限りですが、アメリカで売られている代替肉を使ったというハンバーガーのパティ(パテ)と呼ばれる肉の部分は、牛肉特有の赤っぽい色をしています。

赤みを出す着色料でも入っているのではないかと、心配になりますが……。

この色を醸し出しているのは「レグヘモグロビン」と呼ばれる成分とのこと。

このレグヘモグロビンが、代替肉に牛肉特有の色や香りをもたらしているのだと、開発者の一人だというベンチャー企業の若手科学者が解説しています。

代替肉の赤みはレグヘモグロビン

「これがレグヘモグロビンだ」という真っ赤な液体を差し出され、おそるおそる味見した女性見学者が、「しょっぱいですね。鉄の味がします」と感想を語っていましたが、とりわけ「鉄」という言葉を使ったのが印象的でした。

レグヘモグロビンとは、レグ、つまり「マメ科」のヘモグロビンのことです。

ヘモグロビンは、私たちのからだを流れる血液成分の一つ、赤血球のなかにある特殊なたんぱく質です。

ヘムという色素とグロビンというタンパク質からできているのですが、ヘム色素に含まれる鉄が、呼吸により肺に入ってきた酸素とくっつくことでからだのいろいろな部分に酸素を運搬するという重要な働きをしています。

ハンバーガーに使われている代替肉のキー成分ともいえる、このレグヘモグロビンは、5年に及ぶ全社挙げての研究の末に、大豆に存在する遺伝子と酵素を混ぜ合わせて作り出すことに成功したのだそうです。

代替肉の赤みを目にし、何らかの着色料を使っているのではと、一瞬疑い危惧した私としても、ほっと安堵したところです。

代替肉の赤みの発見者は
日本人の科学者だった

ところで、レグヘモグロビンについて調べるなかで、驚くべき情報にたどり着きました。

たとえば畑で育っている大豆やえんどう豆などマメ科の茎を引き抜いて根っこを見てみると、直径数ミリ程度の小さな瘤(こぶ)のようなものがいっぱいくっついています。

この瘤状のものは根瘤(こんりゅう)と呼ばれます。

この根瘤の中に赤色をした色素があります。

この色素がヘモグロビンであることを久保秀雄という日本人科学者が発見し、それがレグヘモグロビンの始まりだったというのです。

久保秀雄博士が、レグヘモグロビンは、根瘤の中に住んでいる根瘤菌と呼ばれるバクテリアに酸素を送り届けて植物の生育を助けていることを論文として発表したのは、今から80年も前の1939(昭和14)年のことだったそうです*¹。

現在、世界的に注目を集める代替肉のキー成分であるレグヘモグロビンのルーツがこんなところにあったとすれば、久保秀雄博士の発見は世界に誇り得る科学史上の大発見であったといっていいでしょう。

フレイル予防に代替肉も活用したい

その業績に感動するとともに、高齢になり、脂分の多い動物性たんぱく質が苦手でたんぱく質を十分摂るにはどうしたらいいものか悩んでおられる方には、大豆や枝豆、黒豆、そら豆、落花生などたんぱく質の多い豆類を積極的に摂ることをおすすめしたいと思います。

同時に、要介護状態に陥りやすいフレイルを予防するためにも、ハンバーガーに使われているような植物由来の代替肉が、高齢になってもより手軽に摂ることができる食品として市場に出回るようになることを期待したいものです。

ただ、代替肉はその製造工程上、塩分が多くなりがちと聞きます。

高血圧などで減塩中の方は、商品パッケージの裏側にある栄養成分表示表の「食塩相当量」を忘れずにチェックするようにしてください。

2021年10月時点で、一般家庭向けに代替肉を売り出しているメーカーとしては、ニチレイフーズの冷凍食品「大豆ミートのハンバーグ」やマルコメ ダイズラボ 大豆のお肉レトルト などがある。
また、イオンやコンビニのセブン&アイ・ホールディングスやファミリーマートなども大豆由来の代替肉を使ったハンバーガーなどを売り出している。
国内では、大豆以外にも、コオロギや蚕(かいこ)のパウダーを使った代替肉も開発が進んでいると聞く。

なお、フレイル予防としてのたんぱく質摂取に関してはこちらの記事↓↓を参考にしてみてください。

来年に向け改定作業が進行中の「日本人の食事摂取基準」では、高齢者のフレイル予防の観点から、たんぱく質の1日摂取目標量が引き上げられる予定だ。たんぱく源は多彩だが、筋力アップには必須アミノ酸の多い良質なたんぱく質が欠かせない、という話を。

参考資料*¹:熊沢喜久雄:レグヘモグロビンの発見と久保秀雄,肥料科学,第7号,p.1-32,1984)