「かかりつけ医」を持てば医療費の節約にも

医師

かかりつけ医を持つメリット
紹介状で大病院の受診が円滑に

「ホームドクター」と呼ばれることも多い「かかりつけ医」が、「主治医」や「担当医」と必ずしもイコールではないことはすでにご承知のことと思います。

「かかりつけ医」に確たる定義はないのですが、たとえば日本医師会は、おおむねこのように説明しています。

「健康に関することをなんでも相談でき、必要なときは専門医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のこと」

かかりつけ医は、健康に関することなら病気の予防も含め、診療科の別なくなんでも気軽に相談できるという点で、主治医や担当医とは一線を画すものです。

とりわけ大きなメリットは、万が一専門的な検査や治療が必要となったとき、あなたのそのときの病状に見合った専門医療機関や専門医を紹介してもらえることです。

専門医療機関と呼ばれるような大病院は、自分でやみくもに受診すると手続きなどが複雑で、どうしても待ち時間が長くなりがちです。

しかし、かかりつけ医の紹介状があれば、専門医療機関もスムーズに受診することができ、しかも医療費の節約にもなるのです。

ということで、今回はそのあたりの話を書いてみたいと思います。

かかりつけ医は
専門医療機関と連携している

かかりつけ医をもつ主なメリットとしては、「近くにいていつでも気軽に相談できる」「どんな病気でも診てもらえる」「わかりやすい説明を受けられる」ことなどがあげられます。

加えて、かかりつけ医は、高度な診療機能をもつ病院や専門医と密に連携していますから、必要に応じてふさわしい医療機関、いわゆる大病院や医師を紹介してくれます。

このことは、患者にとって大きな安心材料ではないでしょうか。

わが国では、限られた医療資源の有効活用や大病院への患者集中を防止することによって医機能の強化を図ろうと、病院の規模や機能に応じた「役割分担制度」が設けられています。

具体的には、日常的な病気やケガなどの初期の検査や治療は地域のクリニックなどでかかりつけ医等が行い、高度で専門的な医療は大病院*で行うことになっているのです。

かかりつけ医の紹介状がないと「選定療養費」が発生

制度としてはそうなっているのですが、とかく患者は、著明な医師のいる病院や専門的かつ高度な医療設備が整っている大病院を受診先として選びがちです。

その際、かかりつけ医の紹介状を持たずに受診すると、健康保険を使える通常の診療費とは別に、特別料金として「選定療養費」(全額自己負担)が追加請求されます。

ところが、かかりつけ医の紹介状があれば、この費用は負担する必要がなくなるのです。

*選定療養費を患者に請求できる「大病院」とは、「特定機能病院(厚生労働省認定)」および200床以上の一般病床を有する「地域医療支援病院」と「紹介受診重点医療機関」。
◆「特定機能病院」とは、高度医療の提供や高度医療技術の開発、高度医療技術に関する医療スタッフの研修を実施する能力を備えた病院で、全国の大学病院やがんセンターなど87の病院が該当する。
◆「地域医療支援病院」とは、地域医療の中核となる200床以上ある約640の病院で、専門外来や入院医療、救急医療等を引き受け、かかりつけ医(歯科医)を支援している。
◆「紹介受診重点医療機関」とは、抗がん剤治療、放射線療法、短期滞在手術など「医療資源を重点的に活用する外来」を有する200床以上の医療機関をいう。

紹介状がなくても
選定療養費が免除される場合

かかりつけ医の紹介状を持参しないで大病院を受診する場合の選定療養費は、初診時だけでなく再診時も、受診するたびに請求されます。

ただし、次の場合は、かかりつけ医の紹介状を持たずに大病院を受診しても、選定療養費は免除されることになっています。

  • 救急車で搬送された場合(平日、休日、夜間を問わず)
  • 休日夜間を除き、外来受診から継続して入院となった場合
  • 各種公費負担医療制度の受給者である場合*
  • 今回受診する診療科は初めてだが、すでに当該医療機関に通院中の場合
    (ただし医師の指示なく最終受診日から1年以上通院していないときは選定療養費が請求される)
  • 特定健診、がん検診等、公的な制度に基づく健康診断の結果により精密検査の指示があった場合(個人的に受けた人間ドッグの場合は選定療養費の対象となる)
  • 災害により被害を受けて受診した場合
*公費負担医療制度の受給者とは、難病法や障害者自立支援法、母子保健法、生活保護法といった国の法律に基づく公費負担医療制度の対象者、および都道府県レベルの特定疾患や障害者医療も含まれる。
障害者医療の受診に必要な障害者手帳については、こちらを!!
国や自治体の福祉サービスの利用には身体障害者手帳の取得が条件になっているものが少なくない。ところで、この手帳を取得できるのはどのような障害を抱えている人なのか、この手帳を所持しているとどんなサービスを受けることができるのか、まとめてみた。

かかりつけ医の紹介状が
ない場合の選定療養費は?

ここで気になるのは、紹介状を持参せずに受診する場合の「選定療養費」の金額です。

2023年10月時点でその額は、次のようになっています*。

  • 初診料として7,000円以上(歯科は5,000円以上)
  • 再診料として3,000円以上(歯科は1,900円以上)

この額が、通常の初診料や再診料、および治療費等に追加して請求されます。

前記のように選定療養費は健康保険の対象から外れていますから、全額が自己負担、つまり自費(+消費税)ということになります。

なお、上記の金額は国が定める最低金額で、病院の規模や患者に提供できる特定機能診療に応じて料金が上乗せされることがあります。

受診する病院の選定療養費については、病院のWebサイトで公表しているはずですから、確認しておくことをおすすめします。

かかりつけ医の紹介状
発行にかかる費用は?

なお、かかりつけ医による紹介状は、正式には「診療情報提供書」といい、紹介する患者の病状や既往歴、実施した検査の結果、紹介する目的(必要と思われる検査、入院、治療など)が記載されたものです。

紹介状があれば、かかりつけ医から紹介先の医師に医療情報が引き継がれますから、余分な検査を省くことができ、診療もスムーズに進むことになります。

かかりつけ医に紹介状を発行してもらうには、「診療情報提供料」として2,500円かかりますが、これには健康保険が使えますから3割負担なら750円となります。

紹介状がないと最低でも5,000円の選定療養費がかかることを考えると、大病院を受診する際は、かかりつけ医の紹介状を持参すればかなりの医療費節約になることがお判りいただけると思います。

なお、かかりつけ医に関しては、選ぶポイントなどがこちらの記事にまとめてあります。
是非参考にしてください。

最期のときに備えて事前指示書をまとめていくうえで、身近にいて、健康に関することはなんでも気軽に相談できる「かかりつけ医」は何より心強い存在です。できれば看取りまで託せるような信頼の置ける「かかりつけ医」を選ぶヒントをまとめてみました。
かかりつけ医については「専門医より下」と受け止める傾向があるようですが、これは誤解です。医療の専門分化が進めば進むほど患者を総合的に診ることのできるかかりつけ医の役割は大きく、期待も高まっています。その主なメリットをまとめてみました。

参考資料*¹:日本医師会「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」