ロコモ体操を始める前にロコモチェックを!!

体操

ロコモが進行して
要介護状態にならないために

「ロコモ体操」をご存知でしょうか。

ロコモとは、ロコモティブシンドロームの略称で、「運動器の障害により移動機能が低下した状態」と説明されています。

私たちが体を動かして移動するには、立ち上がったり歩いたりする動きが必要です。

この動きに必要な骨や筋肉、関節、さらには椎間板といった運動器官に何らかの障害が起こると、自力で移動することが難しくなってきます。

この状態がロコモです。

ロコモが進めば、日常生活に介護が必要な「要介護」の状態になるリスクが高まります。

厚生労働省の調査では、ロコモになると、健康で日常生活を送ることのできる期間、いわゆる「健康寿命」が平均寿命より、男性は約9年、女性は約12年短くなるとされています*¹。

そこで、要介護状態にならず、できるだけ自立して生活していくためにロコモ予防の運動を続けようと、自治体や関連学会などの各種団体が、自宅でも手軽に楽しくできる体操やストレッチを独自で作り、ネット上などで紹介しています。

これらのロコモ体操は、自身の運動器官の状態に合わせて行う必要があります。

ところが、ときに自分の能力以上の運動に挑戦して運動器障害を招いたり悪化させたりして、予防どころかロコモを進行させてしまうことも珍しくないようです。

そうした事態を招かないように、ロコモ体操に取り組む前にやっておきたいことを、今回は紹介しておきたいと思います。

加齢による機能低下から
ロコモになることも

ロコモの原因としては、変形性股関節症骨粗鬆症に伴う円背(えんぱい)脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)といった骨や関節の障害があげられます。

このような病気がなくても、加齢とともに筋肉は減り続け、筋力の低下や持久力の低下、さらにはバランス力の低下などが原因でロコモになることもあります。

多少の個人差はあるものの、骨や筋肉は40歳ごろから徐々に衰え始め、50歳を過ぎた頃から急激に低下していくことがわかっています。

ロコモおよびその予備群に相当する人は、全国に4,700万人いると推計されています。

「普通に歩けるし、痛みなどもないから自分には関係ない」と思っている方も、実はその予備軍ということもあるかもしれません。

そこで、ロコモ体操を始める前に、簡単にできるロコモチェック*²をして、ご自分の運動機能を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。

ロコモかどうかがわかる7項目のロコモチェック

ロコモティブシンドロームのセルフチェック表はいくつも公表されています。

たとえば以下は、日本整形外科学会が一般向けにロコモ予防を啓発しているサイトで紹介している「ロコモかどうか」をチェックする7項目です。

いずれも、骨や関節、筋肉など運動器が衰えているサインで、1つでも当てはまるものがあれば、ロコモが疑われます。

  1. 片足立ちで靴下がはけない
  2. 家の中でつまづいたりすべったりする
  3. 階段を上がるのに手すりが必要である
  4. 掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど、家のやや重い仕事が困難である
  5. 2キログラム程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
    (1リットルの牛乳パック2パック程度、お米2キログラムパック)
  6. 15分くらい続けて歩くことができない
  7. 横断歩道を青信号で渡りきれない

ロコモの疑いがあれば
最寄りのロコモドクターに相談を

ロコモチェックをして当てはまる項目が1つでもあった方は、チェック項目が0(ゼロ)になるように、また幸い1項目も当てはまるものがなかったという方も、骨や筋肉、関節といった運動器が衰えないように、ロコモ体操を始めることをおすすめします。

その際、すでに足腰の筋肉や関節に多少でも痛みがあったり、バランス感覚が鈍り、歩いていてふらついたりするといったことがあれば、安心・安全のためにロコモ体操を始める前に整形外科医の診察を受けておくといいでしょう。

その受診先として日本整形外科学会は、ロコモの正しい予防啓発に精通した学会所属の専門医「ロコモアドバイスドクター」、通称「ロコモドクター」に問い合わせるようアドバイスしています。

最寄りのロコモドクターは、当学会のロコモシンドローム予防啓発サイト*²にある「あなたの街のロコモドクター」で、都道府県名から、あるいはドクターの名前から検索することができます。

どこでも簡単にできる
ロコモ体操

ロコモ体操やロコモトレーニングは、ネット上でもさまざま紹介されています。

そのなかから、ちょっとしたスペースと少しの時間があれば簡単にでき、転倒などのリスクも少なく、毎日の生活にすぐに取り入れられる運動として、「片足立ち」と「椅子からの立ち坐り」を紹介しておきましょう。

この2つの運動は、私自身がロコモアドバイスドクターを取材した折に教えてもらい、以来毎日のように取り組んでいるものです。

その効果と言っていいと思うのですが、幸い、現在のところ先のロコモチェックで当てはまる項目はありません。

バランス力(安定力)を高める「片足立ち」

姿勢を正して直立し、片足で立った状態を最低でも20秒間キープします。

このときふらついて転倒したりしないように、かならず椅子やテーブルなどにつかまった状態で行います。

バランス力が低下していると、ふらついて転倒しやすくなります。

最近になり、石ころなどのない平らな道や階段でつまづく回数が増えてきたら、バランス力が低下していると考えてこの運動を習慣にするといいでしょう。

脚の筋力アップになる「椅子からの立ち坐り」

椅子に坐った姿勢から立ち上がり、また椅子に坐るを繰り返します。

急いで行わないで、ゆっくり呼吸しながら行うのがコツです。

まず両脚で、立ち上がって、また坐るという動作を繰り返します。

これができたら、左右どちらかの脚をあげて「立ち上がり・坐る」を続けてやってみます。

脚の筋力とバランス力が落ちていると、立ち上がりが難しくなります。

ロコモ体操の効果を上げるには
食事によるアプローチも

ロコモ体操など、ロコモ予防のトレーニングによって運動器官の機能改善を図るには、栄養面、つまり食事からのアプローチも大切です。

とりわけ筋肉量を増やして筋力をアップするには、肉類や魚、卵、乳製品、大豆製品といった良質なたんぱく質とカルシウムを摂ることが重要です。

早い話が、低栄養を予防して、要介護状態の一歩手前とされる「フレイル」を防ぐことが、ロコモ予防にもつながるというわけです。

そのための毎日の食事については、こちらで詳しく書いていますので、参考にしていただけたら嬉しいです。

要介護状態の一歩手前とされる「フレイル」防止の要は低栄養を防ぐことだ。そのためには、高齢者が自分のこととして自らの栄養状態や口腔機能の状態を知ることから始める必要がある。そのために作成されたパンフレット「おいしく食べて低栄養予防!」を紹介する。

参考資料*¹:厚生労働省2016年国民生活基礎調査&簡易生命表による

参考資料*²:日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト