水を飲んでもすぐに口が渇く「ドライマウス」

お茶

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高齢者がかかりやすい
ドライマウス(口腔乾燥症)

空気が乾燥するシーズンに入り、「このところやけに口が渇く(乾く)」といった方が増えているのではないでしょうか。

水を飲めばすぐに治まる一時的な口の渇きなら、まずは心配ないでしょう。しかし、お茶を飲んで潤してもすぐにまた口が渇くといった状態が、3カ月ほど毎日のように続くようなら、「ドライマウス」が疑われます。

長く歳を重ねれば、誰でも体のあちこちに何がしかの不調が現れてくるものです。自ずと複数の診療科を受診することになり、その都度何らかの薬の処方を受けていると、飲む薬の種類も多くなります。それらの薬のなかには、副作用としてドライマウスを引き起こすものが少なからずあります。

あるいは、加齢に伴う咀嚼(噛み砕く)や嚥下(飲み込む)の機能が低下するのに伴い、毎日の食事はとかく軟らかい物中心になりがちです。その結果、噛む回数が減るのに併せて唾液の分泌量が減りますから、口の中が乾燥してドライマウスに悩まされることもあるでしょう。

そこで今回は、このドライマウスについて、考えられる原因と、日常生活でできる予防と対処法について簡単にまとめておきたいと思います。なお、暑い日が続くときは熱中症の前兆としてドライマウスの症状を自覚することがあります。その場合は、直ちに水分補給を!!

薬の副作用が原因の
ドライマウスが最も多い

ご承知のように、ドライマウスとは「口腔乾燥症」のことです。唾液の分泌量が減少することによって唾液の性状が変化して粘性(ねばりけ)が強まり、口の中が乾燥とネバネバによってさまざまな不快症状を引き起こす病気です。

高齢者の場合は、口の周りの筋肉が衰えて唾液が出にくくなることも誘因となりますが、ドライマウスの原因で最も多いのは、薬の副作用です。

ドライマウスを引き起こす薬はさまざまあります。なかでも一番影響するのは、感情の落ち込みや昂ぶり(たかぶり)によく使われる抗うつ薬や精神安定薬です。

また、高血圧の治療に使われる降圧薬(特に降圧利尿薬)や痛みを抑える鎮痛薬、循環器疾患の治療薬である抗狭心症薬や低血圧治療薬、血管拡張作用薬などの副作用としてドライマウスが生じることもあるようです。

副作用に「口渇」とあれば「ドライマウス」の可能性が

ご自分が服用している薬の添付文書をチェックし(添付文書はこちらで薬品名でネット検索できます)、「副作用」として記載されている項目のなかに「口渇(こうかつ)」とあれば、ドライマウスのことです。

ご自分でチェックできないときは、遠慮せずに薬を処方した医師や、その処方薬を受け取った薬局の薬剤師などに確認し、結果によっては副作用(口渇)の少ない薬への変更や減量を検討してもらうといいでしょう。

ドライマウスが深刻な病気のサインの場合も

また、「糖尿病」や1日の尿量が3リットルほどに増えてしまう「尿崩症(にょうほうしょう)」のような全身性の代謝疾患、あるいは「シェーグレン症候群」といって、免疫異常により唾液腺や涙腺など全身の外分泌腺に慢性的な炎症が起こる難病の症状としてドライマウスが現れることもあります。

いずれの場合も、ドライマウスを深刻な病気のサインとして受け止め、症状に気づいたら早めに医師の診察を受けることをおすすめします。

ドライマウスかどうかを
セルフチェックしてみる

ドライマウスのセルフチェック表はいくつも公表されています。たとえば大阪歯科大学附属病院の「ドライマウス外来」では、以下のような症状があればドライマウスの可能性があるとして、歯科診療所やドライマウス外来のある専門医療機関を受診するようすすめています。

最寄りのドライマウス外来は、「ドライマウス外来 〇〇(お住まいの都道府県名もしくは市区町村名)」でネット検索してみてはいかがでしょうか。

ドライマウスの簡易自己診断

  • 水をよく飲む
  • 夜中に(口の)渇きで目が覚める
  • 乾いた食物が咬みにくい
  • 食べ物が飲み込みにくい
  • 今までと味が違う
  • 口の中がネバネバする
  • 入れ歯で歯ぐきが傷つく

(引用元:大阪歯科大学附属病院Webサイトより)

ドライマウスは、軽度のうちの自覚症状は「口がよく渇く」「口の中がネバネバする」「口臭が少し気になる」「唇が乾燥する」といった程度ですから、「口の中が乾燥しているだけだろう」と軽く考えて、とかく放置してしまいがちです。

しかし、重症化して唾液の分泌量がさらに少なくなってくると、口腔内の乾燥が進行して、舌の表面がひび割れるなどして、痛みにより食事を摂ることさえ難しくなってきます。

あるいは、口腔内の乾燥や痛みによって舌の動きがぎこちなくなり、嚥下に支障をきたして誤嚥(ごえん)したり、会話がしづらくなったりもします。

原因不明のドライマウスは歯科心身症としての治療を

なお、口腔内の乾燥が長く続くために病院を受診したものの原因がわからないようなら、「歯科心身症」が疑われます。

この場合は、ストレスで胃潰瘍になるといった心身症同様に、心身両面からの治療を受ける必要があります。詳しいことを知りたい方は「歯や口のこんな症状は歯科心身症の治療を」をご覧ください。

自分ですぐできる
ドライマウス予防・症状緩和法

ドライマウスの自分でできる予防・対応策としては、以下があげられます。

  1. 乾燥しやすい季節には、室内の温度や湿度をこまめにチェックし、換気や加湿器*を使用するなどして環境を整える(湿度は40~60%が快適ゾーンとされている)
  2. 外出時はペットボトルを携帯するなど、十分な水分摂取を心がけ、口腔内を常時潤す
    (ただの水よりもレモン水のような酸味のあるものにすると、唾液の分泌を促す)
  3. 口の中のネバネバ感が強いときは、マウスウォッシュなどにより口腔洗浄を頻回に行う。
    マウスウオッシュの代わりに、500㎖の水に小さじ1杯の重曹(食用)とレモン水(ポッカレモンなど10滴を加えた水)を使うのもいい
  4. プラスハート 口腔用保湿スプレー マウスミスト のような保湿剤入りミストやリップクリームなどを使い、水分の蒸発や乾燥による口唇のひび割れなどを防ぐ
  5. 放射線障害による唾液分泌障害やシェーグレン症候群によるドライマウスの場合は、人工唾液の「サリベートスプレー」を健康保険で処方してもらうこともできる
  6. ドライマウスは口呼吸が原因のこともある。いつも口が開いていて口呼吸になりがちなら、歯科医師が考案した簡単ですぐにできる「あいうべ体操」により鼻呼吸に改善する。その方法は、日本訪問歯科協会が「口腔ケアチャンネル」*²で紹介している
  7. 口の周りの筋力を鍛えたり、唾液腺のマッサージ*³を行う
*加湿器にはいくつかタイプがありますが、加熱しない常温の水を使ってエアロゾルを噴霧させるタイプの加湿器は、レジオネラ感染に注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。

引用・参考資料*¹:大阪歯科大学附属病院Webサイト「ドライマウス外来」

参考資料*²:日本訪問歯科協会口腔ケアチャンネル「あいうべ体操」

参考資料*³:日本通所ケア研究会「乾燥から保湿へ 唾液腺マッサージ」