気持ちの落ち込みを緑茶を飲んで和らげる

日本茶

コロナによる抑うつ気分に
緑茶のうまみ成分が効く

こころの病は多々ありますが、なかでも「うつ病」は、10人集まればそのうち1人は「うつ病経験者」といわれるほど日本人には珍しくない病気です。

医師からうつ病の診断を受けていなくても、「憂うつな気分になることがよくある」「気持ちが落ち込む日が多い」「よく気が滅入る」等々も加えると、「うつ」や「抑うつ」気分を経験している人はかなりの数にのぼりそうです。

加えて、今や私たちは、いっこうに収束に向かう気配の見えない新型コロナウイルスの感染拡大により、生活の大幅な変更を余儀なくされています。

感染への不安もあって、「コロナうつ」という言葉も生まれるほど、「なんとなくイライラする」「憂うつな気分が続いている」「気が滅入る」など、何がしかのこころの不調を自覚している人が増えています。

そこで今回は、この「気持ちの落ち込み」や「抑うつ気分」の緩和・解消に「緑茶のうまみ成分が効く」という話を紹介しようと思います。

うつ病と緑茶の関係に
研究グループが着目

日本人の多くを悩ませている「うつ」や「うつ病」と日本人が伝統的に愛飲している「緑茶」との間にただならぬ関係があることにいち早く着目したのは、国立精神・神経医療研究センターの功刀(くぬぎ)浩医師*です。

功刀医師は、うつ病などの精神疾患やさまざまな精神症状を食事や栄養学的な側面から治療しようというわが国「精神栄養学」研究の第一人者です。

功刀医師ら研究チームは、東北地方に暮らす70歳以上の男女を対象にした調査を進めるなかで、緑茶を1日に4杯以上飲む習慣のあるグループは、1日に平均して1杯飲むか、あるいは緑茶はまったく飲まないグループに比べ、うつ病になるリスクが半分以下に抑えられていることを突き止めました。

その理由を探っていくなかで目をつけたのが、緑茶に多量に含まれているうまみ成分です。
それは睡眠・休息アミノ酸として知られ、睡眠サプリメントなどにも多用されている「テアニン」と呼ばれるポリフェノールの一種だったのです。

*功刀浩医師は、2020年より帝京大学医学部精神神経科学講座/帝京大学医学部付属病院メンタルヘルス科 教授に移籍されている

緑茶でホッと一息つけるのは
緑茶のうまみ「テアニン」

テアニンとは、グルタミン酸からできるアミノ酸です。
このアミノ酸にリラックス効果があることは古くから知られていました。

緑茶を飲むとホッと一息ついて気持ちが落ち着くのは、このテアニンの効果により脳がリラックスするからです。

少々専門的な話になりますが、思考、判断、記憶、感情といった私たちの人間らしい精神活動を司っているのは、大脳皮質の神経細胞(ニューロン)です。

その数は100憶とも180憶とも言われていますが、ほぼその7割がグルタミン酸を材料にしていると考えられています。

緑茶を飲んでグルタミン酸たっぷりのテアニンを体内に送り込んであげることにより、神経伝達物質の働きがいっそう活性化します。

その結果として、神経細胞間の伝達がよりスムーズに行われるようになることが、緑茶を飲んで得られる「ホッ!」の理由だろうというわけです。

緑茶を飲むなら
テアニンの多い抹茶を

ご存知のように、緑茶はお茶の樹から摘みとった茶葉からつくられます。
テアニンはこのお茶の樹の根っこの部分で生成され、樹が成長し育っていくのに合わせて枝の先端、そして茶葉の部分へと上がっていきます。

ところが、お茶の樹が育っていく過程で強い太陽光線を浴びると、テアニンの一部が分解されてカテキンに変わり、そのぶんテアニンの量が減ってしまいます。
その減ったぶんだけ、お茶のうまみが少なくなってしまうのです。

そこで、テアニンをできるだけ多く残してうま味の多い茶葉を育てようと、「よしず棚」と呼ばれるすだれのような物で茶畑の一部を覆い、強い日差しが当たらないようにして茶葉を育てる方法がとられるようになりました。

このように日光を遮って育てられた茶葉は、甜茶(てんちゃ)と呼ばれます。
この甜茶を石臼(いしうす)などでていねいに挽いて粉末状にしたのが「抹茶」として売られているものです。

手をかけたぶんだけ、抹茶は普段私たちが飲んでいる煎茶に比べ高価になります。
しかし、テアニンはより豊富に含まれています。

煎茶のなかの玉露も、抹茶ほど長い期間ではありませんが、茶葉を摘みとる前の20日前後は日光を遮って育てられます。

したがってそのぶん普通の煎茶よりもテアニンの量は多くなります。
テアニンの含有量から言えば、多い順に抹茶>玉露>煎茶となります。

テアニンを無駄なく飲むには
緑茶をいれるお湯は低温に

さてその飲み方ですが、抹茶も玉露も、また普通の煎茶も、茶葉に含まれるテアニンを無駄なくそのまま飲むには、いったん沸騰させたお湯を50℃前後に冷ましてから茶葉に注ぎ、2分ほど蒸らしていれるのがいいようです。

お湯が高温すぎると、テアニンが分解されてしまい、テアニンよりもカテキンやカフェインのほうが多いお茶になってしまいます。

飲む量は、普通サイズの湯飲みで1日4~5杯を目安にします。
食後に1杯ずつと、お茶の時間に和菓子と一緒に1杯というのはいかがでしょうか。

最近は、抹茶を使ったドリンクやケーキ、チョコレートなども出回っていますから、いろいろ楽しんでやってみれば気分転換とテアニン効果の一挙両得で、こころの不調も和らぐはずです。

なお、葉酸が「こころに効く」ことも、功刀医師ら研究チームが突き止めています。
葉酸は緑茶にも少量含まれていますが、むしろ多いのは緑黄色野菜や果物です。

詳しくはこちらの記事を読んでみてください。
→ 憂うつな気分を野菜や果物の「葉酸」で和らげる