「人生会議」の短編ドラマ2作品が好評です

ノート

「人生会議」の短編ドラマを
横浜市が制作、公開

自分の人生の終わりに向け、自分なりに納得して人生を締めくくることができるように、備えとして行うもろもろの活動、いわゆる「終活(しゅうかつ)」が、このところ徐々に広がりをみせています。

ところが、この「終活」という言葉で語られているのは、依然として、死んだ後の自らの葬儀やお墓のことだったり、遺産相続など、生前の身辺整理のような話がほとんどです。

「終活にいちばん大切で、かつ最優先して考えておくべきことが抜けている」との思いを新たにしていたところ、友人からこんなメールが届きました。

彼女が暮らす横浜市が、人生の最終段階をどう過ごしたいかを元気なうちから考え、希望する医療・ケアについて家族らと話し合っておくことの大切さを伝える短編ドラマ「人生会議」を制作し、1月26日(2022年)からYouTubeで公開しているというのです。

早速視聴してみましたので、簡単に紹介しておきたいと思います。

人生の終わりに望む
医療・ケアについて話し合う

「人生会議」とは、人生の終わりに向けたこれからの生き方、とりわけ希望する医療やケアについて、本人が元気なうちから家族や大切な人、および医師ら医療スタッフや介護スタッフらと話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の愛称です。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及を願い、厚労省はその愛称を「人生会議」に決めました。1人でも多くの人が納得して最期を迎えるためにも、自らの死について気軽に語り合えるようになればとの思いが、この愛称に込められているとか。

上映時間各12分という短編ドラマ「人生会議」は、このアドバンス・ケア・プランニングをドラマ仕立てでわかりやすくすることで、広く一般市民に理解を深めてもらおうと、横浜市の「医療局 がん・疾病対策課」が、制作したものです。

同時にドラマでは、もしものときに備えて自分の意思を書き込んでおけるようにと、市が制作し、希望する市民に無料配布している「もしも手帳」が、人生会議として家族や医療スタッフらと話し合うきっかけづくりに役立つことをアピールしています。

元気なうちから家族らと
人生会議をしておこう

短編ドラマ「人生会議」は、世代別に「高齢期編」と「壮年期編」の2作品があり、いずれも首都圏の新都心として知られる横浜港に面するみなとみらい地区が舞台です。

「稔(みの)りの世代(高齢期)編 ~みなとの見える街で~」(主演:竹中直人さん)*¹では、定年退職後に倉庫管理の仕事についている一人暮らしの男性(66歳)が主人公です。

もしものときは「延命より苦しまないケアを望む」と話していた同僚が、突然、寝たきりになってしまったのを目の当たりにし、元気なうちから家族や大切な人と「人生会議」をしておくことの大切さに気づく、といったストーリーです。

一方の「働き世代(壮年期)編 ~みどりの見える街で~」(主演:高島礼子さん)*²は、食欲不振に陥った50歳の夫の体調を心配する専業主婦の妻(高島礼子さん)と大学で看護を学ぶ娘の3人家族の話です。

「若くても急に交通事故に遭って生死をさまようこともある。誰だって、何があるかわからないから、ひとごとではない」――。

こんな心配から、「もしも手帳」をもとに、家族一人ひとりが、人生の最終段階はどこで過ごしたいか、どんな治療やケアを望むかを本気で考え、話し合うというストーリーです。

人生会議は何をきっかけに
どのようなことを話し合うのか

このところの新型コロナウイルスの「感染第7波」は、連日のように各地から過去最高の新規感染者数が報告されており、拡大の勢いは、文字どおり驚異的なものです。

私の周りには、「もしも自分が感染して重症化し、人工呼吸器が必要な状態になったら……」と、自らの人生の終わりを意識し、「人生をどう締めくくるかということを考えてしまう」と話す人が増えています。

その流れで、家族や大切な人と人生会議というのをやってみようと思うものの、「どんなことをきっかけに、何を話せばいいのか迷う」との声が少なくありません。

横浜市が用意している「もしも手帳」は、そのきっかけづくりに大変役立っていることを、ドラマでは伝えています。

横浜市以外でも、たとえば兵庫県の太子町が「私のみらいノート(エンディングノート)」を、東京都が「私の思い手帳」を、といった具合に多くの自治体が、さまざまなツールを用意して人生会議の啓蒙に力を入れています。

おそらくあなたがお住まいの市区町村でも、何らかのツールを用意しているでしょうから、役所の健康福祉課などにお尋ねになってみてはいかがでしょうか。

人生会議で話し合うのは
この先の治療・ケアをどうしたいか

それらのツールを活用するのもいいでしょうが、私が友人などにすすめているのは、厚生労働省の委託を受け、神戸大学医学部の木澤義之教授らの研究斑が作成した「これからの治療・ケアに関する話し合い――アドバンス・ケア・プランニング」と題する小冊子*³です。

この小冊子では、「人生会議」の進め方が具体的に紹介されています。

まずは、日々の生活で自分が大切にしていることを改めて確認することから始め、いざというときに自分の意思を託せる人は誰かを考え、自分の今の病状や予測されるこの先の経緯などを主治医に確認します。

そのうえで、家族や大切な人、および主治医をはじめとする医療や介護チームの担当者にこの先の過ごし方について自分の意思を伝える話し合い、つまり人生会議を、必要に応じて何度でも繰り返すこと、その都度、そのプロセスを記録に残すことをすすめています。

久しぶりに両親が暮らす実家に帰省する友人から、人生会議をしてみようと思うが「何を話せばいいのか」と相談を受けた。決められた議題はないが、この時期最大の関心事であろう新型コロナの話や世間話をきっかけにしてもいいと伝え、きっかけづくりのツールを紹介した話を。

人生会議で親子間の関係がこじれる前に

なお、人生会議では、残された時間の過ごし方について、親子間、つまり看取る側と看取られる側の考え方にズレが生じることは往々にしてあるものです。

そんなときは、気まずい関係に陥って話し合いが進まなくなりがちですが、関係がこじれる前に、病院の「患者アドボカシー相談室」などにいる、対話を仲介してくれる医療メディエーターと呼ばれるプロに相談してみるといいでしょう。

「患者アドボカシー相談室」を設置する病院が増えている。従来の、苦情受付のような相談室とは違い、そこにいる医療メディエーターが、中立第三者の立場で患者と医療者間、ときに患者と家族間の対話を仲介して関係の修復を図り問題解決の手助けをしてくれるという。

参考資料*¹:横浜市「稔(みの)りの世代(高齢期)編 ~みなとの見える街で~

参考資料*²:横浜市「働き世代(壮年期)編 ~みどりの見える街で~

参考資料*³:厚生労働省「これからの治療・ケアに関する話し合い――アドバンス・ケア・プランニング」