電子レンジ火災の増加にも
新型コロナが影響?
「電子レンジで食品を温めていたら、レンジから煙が出ているのに気づき、慌ててコードを抜いて電源を切った」といった経験はないでしょうか。
電源を切ったのは正解です。
仮に庫内の様子を見ようと電子レンジの扉を開けていたら、火事になるところでした。
実際、「使用中の電子レンジから出火した」といった電子レンジ火災は珍しくありません。
むしろこのところ増加していて、東京消防庁は、都内だけでも2012年は22件だったのが今年(2022年)は12月5日の時点で74件発生していて、過去最多だった昨年1年分の65件をすでに上回っていると報告しています。
この増加の背景には、新型コロナ感染拡大の影響で在宅勤務者が増え、普段使ったことのない方が電子レンジを使う機会が多くなっていることも影響しているようです。
今や電子レンジは「一家に必ず一台」といえるほど普及し、私たちの食生活に欠かせない生活必需品として定着しています。
火を直接使わないのが魅力の電子レンジですが、ときに発煙、発火、爆発、そして火災が発生するといったことはどのような状況で起きるのでしょうか。
また、そうした事故を防ぐには、どのような点に注意して電子レンジを使えばいいのでしょうか。要点を絞ってまとめておきたいと思います。
電子レンジ火災の半数は
食品の加熱しすぎが原因
東京消防庁のホームページに、「火災に注意! 電子レンジを安全に使用しましょう」というコーナーがあります。
そこには、このところ増加傾向にある電子レンジ火災は、誤って使用したことによって発生しているとして、次の2点を原因としてあげています。
- 食品の加熱しすぎ(必要以上に長い時間温める)
- 電子レンジで使用できない包装などを加熱した
このうち、まず「1」は、冷凍食品などの包装には、ご家庭の電子レンジのW数別に「調理時間の目安」が表示してあるのですが、この調理時間を超えて加熱しすぎることによって火災が発生するというものです。
この「加熱しすぎ」による電子レンジ火災は、電子レンジ庫内で発生した火災の約5割を占めているそうです。
食品の包装によっては
電子レンジ加熱で出火するものも
また、冷凍食品などの包装袋には出火するものがあり、「ご注意!!」と銘打って、「袋ごとレンジ不可」とか「外袋ごと電子レンジで加熱しないでください。破裂する恐れがあります」と表示してあります。
この注意事項を見落とすか、あるいは読み間違えるなどして、「2」にあるように、電子レンジで使用できない包装を取り外さずに加熱すると、レンジの庫内で火花が飛び、火災になるといった事例も少なからず起きているようです。
同様に、アルミなどの金属が使われている容器やレトルト食品の外袋、内側にアルミなどの金属が貼られた冷凍食品の外袋は、いずれも電子レンジで使われる電磁波*によりスパーク(電気が流れること、放電)が発生して火災につながる危険性があります。
さつま芋や中華まんは
加熱が長すぎると燃え出す
もう一点、電子レンジ火災の意外な原因として、「さつま芋」や「中華まん」があります。
東京消防庁の消防技術安全所が2016(平成28)年に実施した電子レンジ火災の再現実験で、さつま芋や中華まんなどを電子レンジで5分から12分間加熱すると、爆発的に燃焼することを確認したというのです。
さつま芋や中華まんのような水分の少ない食品を電子レンジで長時間加熱すると、食品中の水分が爆発して食品そのものが一気に炭化、つまり真っ黒に焦げて炭のようになってしまう危険性があります。
同様の現象は、フライ物やコロッケ、てんぷらといった油分の多い食品やレトルト食品、コンビニのレトルト容器入り総菜などでも起こり得ます。
レトルト容器入りの食品には、パッケージのフイルムの左下部分に斜めに点線が表示してあり、その部分を剥がしてから電子レンジで加熱するよう明記してあります。
ところが剥がすことを忘れて電子レンジで加熱すると、食品の炭化が一気に進み、煙や火が発生して火災になる危険性があります。
電子レンジ火災を防ぐ
普段の心得4項目
以上の点を踏まえた「電子レンジ火災を防ぐ普段の心得」として、東京消防庁は以下の4項目をあげて注意を促しています。
- さつま芋や中華まんのような水分の少ない食品は、加熱しすぎると爆発的に燃焼する危険性がある。電子レンジの取り扱い説明書等で確認して、加熱時間を短めに設定する
- 電子レンジで加熱中はその場を離れず、庫内の様子を見ながら加熱する
- 電子レンジの周囲に可燃物を置かない
- 冷凍食品などは、包装の表示を確認*してから、指示に従って加熱する
電子レンジ庫内や扉の清掃を
このほか、電子レンジの庫内に調理済み食品の汚れやこげつきがこびりついていると、正しい使い方をしていても、加熱により汚れが炭化して帯電し、スパークを起こして発火する危険性があります。
電子レンジの庫内や扉の内側は常に掃除しておくことも電子レンジ火災の防止には必須です。
汚れがこびりついているようなら、水をたっぷり含ませた布巾(ふきん)を入れて2~3分(500Wの場合)加熱し、庫内を蒸気で温めてから30分ほどそのまま放置したうえで掃除すると、こびりついた汚れも楽に拭き取ることができます。
汚れがあまりにひどいときは、重曹水を含ませた布で拭くといいようですが、むしろそこまで汚れないうちに庫内の掃除を定期的に行うことをおすすめします。
電子レンジから出火したら
扉を開けずに電源を切る
電子レンジ使用中に煙が出たり出火したらどうしたらよいのでしょうか――。
東京消防庁は、焦らずに以下の対応をとるよう呼びかけています。
- 電子レンジの扉を開けずに電源コードを抜いて電源を遮断する
- 扉を閉めたままの状態で庫内の様子を見る
- 庫内の火が消えていないようなら、扉を閉めたまま、消火器などの消火器具を準備する
- 火災が発生したときは、119番通報する
このときの対応で一番やってはいけないことは、扉を開けてしまうことです。
電子レンジは金属製ですから、庫内で出火しても扉を開けない限り外に燃え広がる可能性は低いと言えます。
ところが、焦っていきなり扉を開けてしまうと、レンジの庫内に酸素が入り込み、炎が勢いよく外に噴き出すおそれがあります。
電子レンジによる健康被害を心配ですか?
なお、電子レンジは、上手に使えば時短料理になり、とても便利な調理機器ですが、「電子レンジは体に悪いから」と嫌う方が少なからずいるようです。
その理由として電磁波を放射性物質と混同している方もいるようですが、正しい使い方さえしていれば健康にマイナスの影響を与える心配はないという話をこちらで書いています。是非読んでみてください。