家族の認知症による「徘徊」で悩んでいる方に

行方知れず

徘徊による行方不明者が
7年連続で過去最多を更新

警視庁が毎年、全国の行方不明者に関する統計をまとめているのをご存知でしょうか。
今年も7月2日に「令和元年における行方不明者の状況」が公開されています。

それによると、昨年(2019年)1年間に、家族などから警察に行方不明者届が提出されたのは、全国で延べ8万6933人で、その約2割(20.1%)を認知症やその疑いがあり、徘徊(はいかい)などによって行方不明になったケースが占めていました。

数にすると、延べ1万7479人です。
この数は前の年より552人多く、7年連続で過去最多を更新しているとのこと。
統計を取り始めた2012年と比べると、1.8倍に増えているそうです。

行方不明になった認知症高齢者の多くは、警察や家族等による懸命の捜索により、届出のあったその日のうちに所在確認されているとのこと。

所在不明のまま日をまだぐことがあっても、9割以上の人は1週間以内に無事でいることが確認されて、自宅等に戻っているようです。

ただ、昨年の例で言えば、245人については未だに行方がわからず、関係者による捜索活動が続けられているそうです。

また、路上で倒れているのが発見されるなど、遺体で見つかった人は、昨年1年間で460人に上り、そのなかには徘徊しているうちに交通事故に遭って命をなくした例もあったようです。

いつもと違う気配を感じとり
不安や焦りから徘徊を始める

認知症による徘徊については、認知症者への対応のスペシャリストである認知症看護認定看護師の知人から、「なるほど」と合点のいく話をうかがったことがあります。

彼らが徘徊する、つまりあてもなくうろうろと歩きまわるのは、認知症によりまわりの状況を読みとることが難しくなっているために、何かいつもと違う異様な気配を感じとると、訳もなく不安に陥ってしまうからだというのです。

その漠然とした不安や居心地の悪さから、
「ここにいては危険だから、一刻も早く安心できる場所に移らなければ」
「とにもかくにもここから逃げ出したい」
などと思いつめ、そのまま行先も定めず歩き出してしまうのだと――。

できるだけ笑顔で接する心がけを

「その強い不安や焦る気持ちを和らげるようにかかわって、自分はここにいていいのだ、ここにいても安全なのだと思ってもらえると、自然と落ち着くことが多い」

その際に彼女は、徘徊に振り回されているとつい硬い表情になりがちなのを意識し、できる限り笑顔で接することを心がけているそうです。

「認知症が進行して相手の顔を認識できなくなっていても、表情や視線から相手の感情や気持ちを読みとる脳の機能は比較的よく保たれていることが研究で実証されています。笑顔でいることはこちらの意思を伝えるうえで重要な役割をしてくれていると思っています」
→ 認知症の方には努めて穏やかな態度と笑顔を

警察と自治体が連携して
見守りネットワークを構築

では、徘徊によりそのまま行方不明になった場合の話に戻ります。

認知症やその疑いのある高齢者が、徘徊により外出したまま帰宅困難になるようなケースについては、全国の警察が各市区町村にある地域包括支援センターや民間企業と連携して、その予防と早期発見に向けた「見守りネットワーク」等の取組みを積極的に進めています。

その際には、地域差もあるようですが、「認知症サポーター」と呼ばれる地域のボランティアが協力してくれることもあるようです。

地域包括支援センターや認知症サポーターについては、こちらの記事で詳しく書いていますので是非読んでみてください。
→ 認知症者の在宅介護で疲れ果てないために

GPPSによる位置情報を活用

とりわけ認知症の徘徊などによる行方不明者を早期発見するための対策としては、事前に本人の直近の顔写真や好みの服装の特徴、愛称、よく口にする言葉等の情報を、家族の同意と協力を得てデータ化し、その情報ネットワークを構築することにより、いざとなったときにこれを活用しようという取組みが警察レベルで積極的に進められています。

また、地域によっては、行方不明になることが予測される認知症高齢者に対し、自治体がGPS*の端末(発信機)を貸し出し、行方不明になった際には、警察の捜索に、そのGPSによる位置情報活用の協定を結んでいるところもあります。

家族や知人に徘徊の兆候が見られるようなら、早めに地元の地域包括支援センターや警察にその旨を伝えて、事前に手を打っておくことをおすすめします。

*GPS(Gloval Positioning System)とは
人工衛星からの電波で、地球上のその人の現在位置を測定し、把握する装置。
最近では、ほぼすべての携帯電話やスマートフォンに搭載されている。

警察関係者も
認知症を理解している

認知症による徘徊といった問題を抱えている家族のなかには、警察や自治体などに相談することを躊躇し、なんとか家族だけで、場合によっては自分一人で対処しようと頑張っているケースも少なくないと聞きます。

そんな方に話をうかがうと、「警察に相談するのはどうも抵抗がある」とおっしゃる方が少なからずおられます。しかし、これは誤解です。

たとえば警視庁(東京都)では、道に迷ったり自宅がわからなくなった認知症高齢者に素早く適切な対応ができるようにと、認知症者にどう対応するかをまとめた「認知症の対応ハンドブック」を作成し、すべての警察官と職員に配布しています。

さらに2015年からは、全警察官と職員に「認知症サポーター講座」の受講を義務づけています。
これにより、認知症者の行動の特徴などを正しく理解したうえで、地域の認知症高齢者を見守り、必要な手助けをする心構えが行きわたっていますから、不愉快な思いをすることなく相談に乗ってもらえるはずです。

こうした警察レベルでの取組みは、東京都のみならず山形県などいくつかの県でも行われるようになっているようです。

GPS装置を利用するときは
本人が負担に感じないものを

なお、徘徊により行方不明になったときに位置情報を知らせてくれるGPS端末は、自治体に頼らなくても個人レベルでも簡単に利用できます。

首からぶら下げたり、ポケットに入れたり、携帯するのを嫌う方には、魔法の靴のように靴そのものにGPS装置がセットされていて、履いていれば、また脱いでしまった場合でも脱いだ場所がわかるタイプもあります。

いずれにしても、本人が負担に感じないものを選んでみてはいかがでしょうか。
もちろん携帯電話やスマートフォンのGPS機能を活用するのもいいと思います。

さらには、親が遠方でひとり暮らしをしているとか、日中仕事で留守にして一人にするので心配……といった方は、セコムやASLOKのような警備会社やNTTコミュニケーションズ、あるいはソフトバンクなどの安否確認システムを契約しておけばなお安心です。