認知症者の在宅介護で疲れ果てないために

疲れ切って

認知症の夫の介護で
自分を追い詰めないで

アルツハイマー型認知症だという診断を受けた夫を、この数カ月の間、自宅で介護している知人の話を先に紹介しました。

認知症を発症する前のご主人は、「面倒をかけることになるだろうが、できれば最期はこの家で、君に看取ってもらいたい」と折りに触れ話していたとのこと――。

その希望をかなえてあげたいと、文字どおり孤軍奮闘する彼女です。

先の記事では、そんな彼女に少しでもお役に立てればと思い、認知症の高齢者と意思の疎通をはかるうえで役に立つと評判の「ユマニチュード」について、家族介護向けに書かれた入門書を紹介したところまで書いています。

夫がアルツハイマー型認知症の診断を受けたが、本人がかねてから望んでいた在宅死をかなえてあげたい。ついては、残りの日々をこころを通わせながら過ごすにはどう付き合っていけばいいか――。こう語る友人に、ユマニチュードを紹介した話です。

介護疲れから「うつ」になるリスクが

この記事を読んでくれた訪問看護師の友人から、一昨日、少々お叱りともとれる、しかしごもっともな内容のメールを受け取りました。

「ご主人の認知症が今現在どの程度進行しているのかわからないけど、いずれにしても認知症の方の在宅介護を奥さんひとりに頑張らせるのは、ちょっと冷たいんじゃないかしら」

これには、痛いところを突かれた、と思いました。

認知症の身内の在宅介護を一手に引き受けている家族の優しさや思いやりに頼りすぎていると、介護している方が自分を押し殺して我慢し続けたり、うまくいかないことで自分を責めたりすることがよくあります。

そんなことが積み重なっていき、やがてその精神的重圧により、心身ともに疲れ切ってしまうことになりがちだということは、私もよく承知しています。

いわゆる「介護疲れ」です。

この状態が続いていくと、場合によっては「介護うつ」と呼ばれる状態に陥り、介護を続けることができなくなり、結局は認知症のご本人にとっても不幸なことになってしまう――。

そういった話は、これまでの取材で幾度となく耳にしてきたことでした。

認知症介護はひとりで頑張らず
第三者やプロにSOSを

「介護疲れになる前に、身近な第三者に、あるいは看護や介護のプロに遠慮なくSOSを出すように話してあげてほしい。今の時代、家族に認知症の方がいるのは珍しいことではないし、恥ずかしいことでもないのだから」

訪問看護師の友人のメールには、そう記してありました。

ご指摘のとおりです。
というわけで、早速昨日、かいつまんでこんな話を知人に伝えたところです。

病院に通院していれば、最近増えている「認知症看護外来」あるいは「もの忘れ看護外来」で介護していて疑問に感じていることや悩みを相談することができます。

この種の看護外来には、認知症者のケアや介護に精通した「認知症看護認定看護師」と呼ばれるプロがいて、時間をかけてじっくり話を聞き、最善の助言をしてくれるはずです。

このような看護外来がない病院でも、院内の「総合相談窓口」に行けば、常駐している保健師や看護師、医療ソーシャルワーカー、あるいはケアマネジャーといった専門職が、気軽に相談に乗ってくれるでしょう。

もちろん、認知症の診断を受けた医師やそこに同席していた看護師に、「介護の具体的なことで相談にのってくれる方を紹介していただけませんか」などと聞いてみてもいいでしょう。
すぐにそれなりのプロにつないでくれるはずです。

地域包括支援センターを活用する

在宅療養を続けている方のためには、「地域包括支援センター」が地域に暮らす高齢者のあらゆる医療・介護・福祉関係の相談窓口となっています。

公的サービスですから、もちろん相談は無料です。

地域包括支援センターは、原則として市区町村に最低1つは設置されています。

自分が暮らす地域を管轄するセンターの場所や連絡先は、市区町村のホームページで探すか、市区町村の介護保険担当窓口に問い合わせるといいでしょう。

あるいは、たとえば東京都杉並区にお住まいの方なら「地域包括支援センター 杉並区」と、お住まいの地区町村名でネット検索すれば、所在地や連絡先がすぐにわかります。

また、かかりつけ医に尋ねてもいいでしょう。

看護や介護の訪問サービスを受けているようなら、担当者に「介護の詳しいことを知りたい」と相談してみるのもいいかもしれません。

認知症サポーターによる
「見守り」と「手助け」に頼る

認知症者とその家族にとって「認知症サポーター」も、大変頼りがいのある存在です。

私たちの国には2021(令和3)年6月30日の時点で、驚くことに1300万人を超える「認知症サポーター」と呼ばれる地域ボランティアがいるそうです(参考資料:認知症サポーターキャラバン・ホームページ)。

彼らは、全国各地で国が実施している養成講座を受講していて、認知症に対する正しい知識のもとに理解を深めています。

そのうえで、それぞれが暮らす地域において認知症の高齢者やその家族に、自分なりにできる範囲でさまざまな「手助け」を行っているのです。

そのサポートの多くは、「温かい目で見守る」ことや「認知症に対する偏見をなくす啓蒙」などです。

最近は、認知症サポーターらが中心となって開いている「認知症カフェ」が、連日の介護で緊張が続く介護家族の癒しの場ともなっているようです。
同時にそこで認知症介護のノウハウを学ぶこともできるそうです。

こうした活動には地域差がありますから、詳細は最寄りの地域包括支援センターか先述の看護外来や相談窓口に尋ねるのがいちばんです。

いずれの方法を選ぶにしても、まずはひとりだけで頑張らずに、誰かに話してみることをすすめたいと思います。

あるいは介護保険のデーサービスなどを利用するのもいいと思います。

在宅で認知症の夫や妻を介護していると、24時間、365日一緒に暮らしていることにより心身ともに疲労困憊の状態に陥りがち。時には介護から解放される時間を持つことがすすめられる。その一つの方法として、認知症デイサービスの利用を提案したい。