サプリメントに頼りすぎて食事が疎かでは?

サプリメント
小林製薬が機能性表示食品として販売してきた紅麴(べにこうじ)を配合したサプリメントによる深刻な健康被害の報告が相次いでいます。日本製サプリメントで初めての死者が出たとの報には驚かされます。機能性表示食品や特定保健用食品(トクホ)など、サプリメントを含むいわゆる健康食品を常用している方は、その服用の可否等を改めて見直す必要がありそうです。
この件を受けて消費者庁は機能性表示食品の総点検を実施。当該サプリメントを含む6530製品のうち35製品で計147件の健康被害の報告があったことを発表しています。因果関係については今後、専門家らにより調べていくとのことです。

サプリメント常用者に
医師会が警告メッセージ

健康食品としてのサプリメントの利用者は年々増加傾向にあります。消費者委員会による直近の調査結果を見てみると、50歳以上のほぼ3割の方が、何らかの健康食品・サプリメントを「ほぼ毎日利用している」とのこと。「たまに利用している」を加えると、その数は約6割に及ぶことが明らかになっています

この調査では、利用している健康食品・サプリメントに対する満足度も尋ねています。この質問に対しては、「不満」「やや不満」と回答している人の8割が、「期待していたほどの効果がなかったと感じている」と回答しています。

なかには「体調が悪くなった(悪くなったと感じた)」人も、割合としては極めて少ないものの、確かにいることもわかっています。

こうした事態を深刻に受け止めた日本医師会は、ホームページ上で国民向けに次のようなメッセージを発信しています。

あなたは、「健康食品」やサプリメントをとりすぎてはいませんか?

「健康食品」には、成分を濃縮していたり、医薬品の成分を含んでいるものも、多くあります。効果を期待してとりすぎたりすると、危険性も増します。
また、服用している医薬品との相互作用で、思わぬ健康被害が発生することもありえます。
体に不調を感じたら、すぐに、かかりつけの医師にご相談を!
そして、医師に、「健康食品」やサプリメントをとっていることをきちんと伝えましょう。
また、三度の食事をきちんとバランスよく食べることが、大事です。

(引用元:日本医師会ホームページ

サプリメントは薬に替われない
「食品だから安心」とも言えない

「サプリメント」は、「医薬品」とは異なるカテゴリーの「健康食品」の一つです。その理由は、明らかに薬の替わりになるものではないからでしょう。

健康食品にもサプリメントにも、今のところこれといった法律上の定義はありません。毎日の食事でとっているふつうの食品よりも、「健康によい」「健康の保持増進に役立つ」「病気の予防に効果がある」として市販されているものをすべてひっくるめて、「健康食品」と呼んでいるのが実情です。

そのなかには、肌や毛髪の美容効果やダイエット効果をアピールしている健康食品が少なくないことは、ご承知のとおりです。

ただ、健康食品に表示されている効能については、そのすべてに確たるエビデンスがあるわけではありません。つまり、科学的に効能が実証されているものばかりではないのです。

一般にサプリメントとか健康食品として扱われているものには、「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3種類があります。それぞれの特徴、国による認可の有無、安全性などについてはこちらをご覧ください。

紅麹(べにこうじ)を配合したサプリメントによる健康被害の報告が相次いでいます。日本製のサプリメントで初めて死者…

医薬品成分が含まれるサプリメントも

また、明らかに医薬品ではないのですが、なかには医薬品の成分が含まれている健康食品もあり、食品だからといって安心とは言いきれないのが実情です。

そんな健康食品のなかには、ビタミンやミネラルなど健康の維持増進に役立つとされる特定の栄養成分をぎゅっと濃縮して、通常の食品とは違う形状の錠剤やカプセル、ものによっては粉末状にしたものがあります。これらをまとめて、一般に「サプリメント」と呼んでいます。

そもそもこの手のサプリメントは、必要な栄養素の摂取不足によって身体に変調をきたすことがないように、食事だけではとりきれない栄養素を補う目的で利用するものです。

「サプリメント(Supplement:補充)」という呼び名の由来からしても、主役となるのはあくまで毎日とる食事だということがご納得いただけるのではないでしょうか。

サプリメントは、
処方薬との飲み合わせに注意

サプリメントを含む健康食品の正しい選び方や利用上の注意事項などの詳細は、厚生労働省と国立健康・栄養研究所が共同で編集した『健康食品の正しい利用法』と題する20ページの小冊子にまとめられています。

サプリメント等の健康食品の利用を検討している、あるいはすでに日々利用している方は、この小冊子をダウンロードして、是非目を通しておくことをおすすめします。

サプリメントの前に栄養バランスのよい食事を

大事なことは、サプリメントを購入する前に、栄養バランスのよい食事を毎日きちんととっているかどうかを改めて見直してみることです。

必要な栄養素をバランスよくとるためには、「まごたち食」にするといい、という話を先に紹介しました。

つまり、副菜(おかず)を、「まごたちわやさしい」、つまり「豆類、ごま、卵、乳製品(ちち)、わかめなどの海藻類、野菜、魚類、しいたけなどのきのこ類、いも類」を意識してとると栄養バランスがいいという話です。
⇒ 「ピンピンコロリ」の秘訣「まごたち食」とは?

サプリメントの利用は治療薬の処方医に相談を

また、サプリメントなどの健康食品を利用する際は、服薬中の薬との飲み合わせリスクに細心の注意を払う必要があります。

先の小冊子のP.8~9には、「健康食品に添加されている成分と医薬品の相互作用が想定される主な事例」が紹介されています。

ここで示されているように、サプリメントに含まれる成分によっては、処方薬にもともと期待される薬効が弱まったり、副作用が強く出る、あるいは病状が悪化するといったことも皆無とは言えません。なかには、腎結石や尿路結石のリスクもあれば、腎機能の悪化を招く事例もあります。

医師による処方薬を服用している場合は、サプリメントなどの健康食品を自己判断では利用しないのが理想です。食事が思うようにとれないなどの理由からどうしてもサプリメントを利用したいというときは、薬の処方を受けた主治医やかかりつけ医にその旨相談することをおすすめします。

免疫力アップに必須のビタミンDですが

特に、日本人に不足しがちなビタミンDは免疫力を高めるうえで欠かせないこともあり、サプリメントに頼っている方が多いようです。しかし、こちらを参考に、やはりまずは食事と日光浴でビタミンDの補給を!!

「98%の日本人が骨の健康維持に必須のビタミンDが不足している」とのショッキングな調査結果が報告されている。その原因は、ビタミンDが体内で合成されるには日光が必須という特殊性にある。食事でビタミンDを補うと同時に十分な日光浴が必要だ。

なお、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所はWebサイトで、「健康食品」の安全性・有効性情報のコーナーを設け、その時々の最新情報を提供しています。こちらものぞいてみてはいかがでしょうか。

参考資料*¹:消費者の「健康食品」の利用に関する実態調査(アンケート調査)

参考資料*²:日本医師会「健康食品・サプリメントについて」

参考資料*³:厚生労働省「健康食品の正しい利用法」