相次ぐ「アニサキス食中毒」冷凍・加熱で予防を

食卓

全国各地で相次ぐ
アニサキスによる食中毒

サバやカツオといった生鮮魚介類に寄生した「アニサキス」と呼ばれる寄生虫による食中毒が、この6月に入り全国各地で相次いでいます。

アニサキスの幼虫は、サバやカツオだけでなく、アジ、サンマ、イワシといった青魚、さらにはサケやイカなどにも寄生するのですが、今のところ、「サバの刺身を食べてあたった」といったケースが目立っているようです。

アニサキスによる食中毒は、かつてはサバやカツオが旬を迎え、刺身や押し寿司を食べる機会が増える秋に多かったのですが、昨今のように冷凍ものが多く出回るようになってからは、シーズンを問わず発生しています。

冷凍や加熱が不十分なサバなどを生で食べると、寄生している長さ2~3㎝のやや太めの白い糸のようなアニサキスの幼虫が、胃の壁に突き刺さり、「急性胃アニサキス症」と呼ばれる食中毒を引き起こすのです。

通常、食後数時間から十数時間で、みぞおちの激しい痛みや吐き気、嘔吐(おうと)を引き起こし、その後幼虫が腸壁に入って「腸アニサキス症」を起こすと、痛みは下腹部を中心にさらに激しくなり、ときにアニサキス幼虫が腸に穴を開けて腹膜炎を起こす怖れもあります。

アニサキスによる食中毒を疑ったらすぐ受診を

アニサキス食中毒に効果的な薬はなく、胃アニサキス症の場合は、内視鏡で胃粘膜に付着、潜伏しているアニサキスの幼虫を鉗子でつまんで取り出すといった治療が一般的です。

アニサキスの幼虫が腸まで入り込むと、治療はさらに厄介で、腹膜炎を起こせば緊急手術が必要となります。

そこまで進行させないためには、サバなどの生鮮魚介類を食べて激しい腹痛に見舞われたときは、アニサキスによる食中毒を疑い、できるだけ早く救急外来などを受診することです。

その際は、魚介類の刺身や寿司を食べたことを医師に伝えることをお忘れなく。

生鮮魚介類の生食は極力避け
冷凍・加熱でアニサキス食中毒を防ぐ

アニサキスによる食中毒の一番の予防策は、生鮮魚介類の生食を避けることですが、刺身や寿司ツーの方はそうもいってはいられないでしょう。

厚生労働省はアニサキスによる食中毒の予防法として、以下の点を徹底することを広く一般に呼びかけています*¹。

  1. 魚を購入する際は、新鮮な魚を選びましょう
  2. 丸ごと一匹を購入した際は、速やかに内臓を取り除いてください
  3. 内臓を生で食べないでください
  4. 魚を調理するときは目視で確認し、アニサキス幼虫があれば除去してください
  5. 冷凍保存する場合は、-20度で24時間以上冷凍する
  6. 加熱調理は、70度以上ならすぐに死滅。60度なら1分以上加熱する
  7. 一般的な料理で使用する食酢での処理、塩漬け、しょうゆやわさびではアニサキス幼虫は死滅しないことを徹底する

テイクアウト食品による
食中毒を防ぐポイント

食中毒の原因は他にも多々あります。

とりわけコロナ禍が長引き、弁当や総菜のテイクアウト(持ち帰り)やデリバリー(宅配)が増えるなかで食中毒を防ぐポイントは、食中毒予防の3原則、つまり食中毒菌を「つけない、増やさない、やっつける」を厳守することです。

この原則を、テイクアウトで自宅に持ち帰った、もしくはデリバリーで自宅に届けられた調理済み食品に当てはめ、食中毒を防ぐポイントをまとめると以下のようになります*²。

  • 購入時に「消費期限」を必ず確認し、その期限内に食べる
    (おいしく食べることができる「賞味期限」と間違わないように)
  • 食中毒菌は時間の経過とともに増殖することを忘れずに、テイクアウトする際は食品を受け取ったら寄り道をしないで、まっすぐ帰宅する
    (その日の気象条件や帰宅時間が長くなる場合、また生鮮食品の鮮度保持に備え、 保冷トートバッグ を携帯していればなお安心)
  • 冷蔵が必要な食品は、持ち帰ったら(届いたら)すぐに冷蔵庫(10℃以下)に保管する
  • 冷凍が必要な食品は、持ち帰ったら(届いたら)すぐに冷凍庫(-15℃以下)に保管する
  • 冷凍されている調理済み食品の解凍は、腐敗しやすい自然解凍を避け、冷蔵庫によるゆっくり解凍や電子レンジによる急速解凍を選択する
    (解凍方法が明記してあればそれを守る)
  • 食べる前に石けんと流水による手洗いを行う
  • 一度開封した弁当や総菜パックなどを、開封したままの状態で室温に長時間放置しない
  • 温め直す必要があるときは指示どおりに十分加熱する
  • 食品の状態や臭気、色味、味などに少しでも異変を感じたら、食べずに破棄する
  • 食後に吐き気や嘔吐、下痢などの症状があれば、食中毒を疑い、直ちにかかりつけ医に電話もしくはオンライン(テレビ電話)で相談し、診察を受ける(このとき市販の下痢止めなどをむやみに服用しない)

「飲食店営業許可」を
取得している飲食店で購入する

食中毒を予防するには、食材を購入し、保存し、洗う、カットするなどの下準備を行い、調理するといったそれぞれの段階で、食中毒菌を「つけない、増やさない、やっつける」の食中毒予防の3原則を厳守して食品を取り扱うことが大切です。

しかし、テイクアウトやデリバリーで入手する調理済みの食品は、この一連の作業における食中毒予防策を、購入先の飲食店に全面的に託すことになります。

私たちが通常利用するレストランや食堂といった飲食店の多くは、管轄する保健所の「飲食店営業許可」を取得して営業しているはずです。

この営業許可がない状態で飲食店を営業していると、保健所が定期的に実施している衛生監視員の立ち入り検査などで許可を取得していないことが発覚し、食品衛生法に基づく行政処分を受けることになります。

また、営業許可書は無期限に有効というわけではありません。
都道府県により多少の違いはありますが、食品衛生法には「5年を下らない有効期間」と定められており、5~8年が一般的なようです。

店舗の店頭で積み上げて
販売するのは衛生上NGです

飲食店営業許可を取得するためには、各都道府県が制定している食品衛生条例で定められた要件を満たしている必要があります。

そのなかには、「食品衛生管理者(調理師や栄養士の有資格者)を1名以上配置すること」といった要件があります。

この要件を満たし、営業許可を得ていれば、通常店内で提供しているものをいつもどおり店内で調理し、それを店頭で客に渡す、いわゆるテイクアウトのかたちで販売したり、デリバリーしたりすることが容認されています。

ただし、街中でよく見かける店頭の台に弁当類を積み上げて販売するスタイルは、「食品衛生法」上は、NGとのこと。テイクアウトする際は、衛生環境の整った店内で保管している弁当類を選ぶことをおすすめします。

また、テイクアウトしたものを食べる前に、購入して持ち帰った客自らが簡単に調理する必要があるものや、調理済みのものを店頭以外の場所で販売する場合には、新たな許可(食品製造営業許可など)が必要になるようです。

「飲食店営業許可証」は「食品衛生責任者の名札」とともに、2013年4月1日からは、店舗内の誰もが一見でわかる場所に掲示することが義務づけられています。

テイクアウトやデリバリーで利用する際はもちろんですが、行きつけの飲食店についても、許可証と名札を一度チェックして、衛生面の安全性を確認しておくことも、食中毒から身を守るためには必要ではないでしょうか。

食中毒と同時に
塩分過多にも気をつけて

なお、テイクアウトやデリバリーの調理済み弁当や総菜類等は、味をよくするために半ば意図的に塩分多めにつくられています。

高血圧で、あるいは血圧高めで減塩を心がけている方は、「カリウム」の多い野菜や果物類を一緒に摂ることをおすすめします。

高血圧の改善に塩分制限は欠かせないが、外食や出来合いの弁当などを多用していると減塩は難しい。そこで、摂りすぎた塩分を追い出してくれるカリウムの多い食品を摂ることをすすめたい。カリウムを多く含む食材の筆頭として、野菜と果物の上手な摂り方を紹介する。

参考資料*¹:厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」

参考資料*²:厚生労働省「家庭での食中毒予防」