薬の飲み合わせリスクに気をつけて!!

処方薬

薬の飲み合わせリスクを
実感させられたニュースから

60年、70年と歳を長く重ねれば、誰でも身体のあちこちに何がしかの不調が現れてくることが避けられません。

そこで、複数の診療科を受診してその都度薬の処方を受け、何種類もの薬を同時に服用するといったことになりがちです。

「そういえば自分も……」という方が少なくないのではないでょうか。

そんなときに起こりがちな薬の飲み合わせによる弊害の怖さを、改めて思い知らされるニュース報道が、1年ほど前にあったことを覚えておられるでしょうか。

あるお笑い芸人が3種類の処方薬を服用した直後にクルマを運転し、危うく死亡事故を起こすところだったという話です。

抗アレルギー薬と睡眠薬の同時処方を受け

アレルギー症状に悩まされていたその芸人さんは、受診した際に「からだが痒くて眠れない」と訴え、抗アレルギー薬に併せて睡眠薬の処方も受けています。

その際処方医からは、当然ながら、「クルマを運転する前にこの薬を服用するのは控えるように」と注意を受けています。

にもかかわらず彼は、処方を受けたその日の深夜、出先で処方薬を服用した後、そのまま自分でクルマを運転して自宅に向かっています。

そして、午前2時ごろ、都内の路上で、路肩に乗り上げたまま停車中の車の運転席に、意識もうろう状態でっているところを発見されて救急搬送――。

その後、搬送先の病院で受けた尿検査で睡眠薬が検出され、警察の事情聴取を受ける事態となった、といった内容の記事でした。

睡眠薬と抗アレルギー薬の
飲み合わせが悪く

睡眠薬や眠気を催すような副作用のある薬を服用したらクルマの運転をしないというのは、おそらく常識レベルの話でしょう。

事情聴取の後に開いた記者会見の席で、記者からその点を厳しく問いただされた彼は、「インターネットで睡眠薬について調べたら、薬が効くまで少し時間があると書いてあった。出先から家までクルマで10分もかからないから大丈夫だと思った」と答えていました。

この会見の翌日、記者らの要請に応えるかたちで、彼の所属事務所が服用した3種類の処方薬の内訳を公表しています。

それを見て私は、複数の薬の飲み合わせには意外な落とし穴があることを、改めて思い知らされたかたちです。

まず睡眠薬については、薬の種類や服用するタイミング、そのときの体調などによって異なりますが、服用してから血液中の薬の濃度(血中濃度)が、効き目を発揮するのに必要な濃度に達するまでに「30分から1時間を要する」と、どの説明書にも記載されています。

件の彼は、おそらくこの説明を読んで、「クルマで10分もかからないから大丈夫」と判断してしまったのでしょう。

ところが、彼に処方された薬は2種類の睡眠薬と抗アレルギー薬でした。

抗アレルギー薬が眠気を催すことはよく知られています。

彼に処方されていたのは、数ある抗アレルギー薬のなかでも比較的眠くなりにくいタイプのものでした。

それでも、改めてその添付文書を見てみると、眠気を催すことがあること、そのため服用後は自動車等の運転を避けるように、との注意が明記されています。

どうも彼は、睡眠薬と抗アレルギー薬の飲み合わせによって起こるであろうマイナスの影響、つまり「相互作用」にまでは思いが至らず、ために報道にあるような結果を招いてしまったようです。

飲み合わせリスク対策に
「お薬手帳」「電子お薬手帳」を

複数の薬を同時に服用した場合に起こる相互作用には、薬の作用が強くなりすぎる場合もあれば、逆にお互いの作用を消し合って、せっかく服用しても薬本来の効果を期待できなくなってしまう場合とがあります。

いずれの弊害も、処方医が患者に処方箋(せん)を手渡して薬の説明をする際に、注意喚起を徹底して行い、その言われたことを患者さんがきちんと理解して守るようにすれば、ある程度は防ぐことができます。

さらに、最近増えている外来診療における「院外処方」の場合には、院外処方箋を取り扱う保険薬局が無料で配布している「お薬手帳」をきちんと活用すれば、薬の飲み合わせによる相互作用の弊害は容易に防ぐことができるはずです。

お薬手帳のメリット

そもそも「お薬手帳」は、さまざまな病院や診療所で処方された薬を一括して管理することを目的に作られたものです。

薬を一括管理して得られる主なメリットとしては、以下の3点があります。

  • 薬の重複をチェックして、飲み合わせのリスクを軽減できる
  • 過去に経験した副作用やアレルギーに関する情報を医師に提供できる
  • 旅行先や災害時などに、かかりつけ医以外の医師に自分の病歴、薬の服用歴などの情報を正しく伝えることができる

「お薬手帳」には公式に定められた規格があるわけではありません。

自分でノートを用意して書き込んでいってもいいわけですが、2016(平成28)年4月からは、紙タイプの「お薬手帳」と同様の「電子お薬手帳」でも、自分で服用している薬を一括管理できるようになっています。

健康管理にも「電子お薬手帳」アプリを

シニア層のスマートフォン利用者が右肩上がりで増えているのを受け、「電子お薬手帳」の無料アプリが各種開発されています。

例えば、全国調剤薬局チェーンの「日本調剤」は「お薬手帳プラス」*¹を発行しています。

この手帳には、薬に関する基本的な情報に加え、健康管理にも使える機能、さらには処方された薬の情報を事前にかかりつけの薬局に送信しておけば、待ち時間なしで薬を受け取ることのできる「処方せん送信機能」や、薬の服用時間を知らせてくれる「飲み忘れ防止アラーム機能」など、便利な機能がついています。

薬剤師の職能団体である「日本薬剤師会」が提供している「eお薬手帳」*²にも、基本的な薬や健康に関する情報管理に加えて、飲み忘れを防ぐ機能、さらには急な体調変化などで最寄りの医療機関にかかりたいといったときに便利な検索機能もついています。

この他にもさまざまなアプリがありますから、一度チェックしてみて使い勝手のいいものを選び、薬の飲み合わせリスクの防止に活用されてはいかがでしょうか。

クスリと食事の相性にも注意が必要

なお、薬の飲み合わせリスク同様に薬と食事の食べ合わせにもリスクがあります。この点についてはコチラの記事を参考にしていただけたら嬉しいです。

薬の飲み合わせにリスクがあるように、薬と食事の食べ合わせにもリスクがあります。その代表が、高齢者の循環器疾患治療に使われることの多い抗凝固阻止剤と納豆です。薬の処方を受けたら食事や飲み物の影響の有無を確認する習慣をつけたいものです。

かかりつけ薬剤師の活用も

なお、何種類もの薬を服用していて薬の管理に手こずるようなら、「かかりつけ薬剤師」を決めておくことで、いっさいの服薬管理を託すことができ薬のトラブル防止になります。

このかかりつけ薬剤師について詳しく知りたい方はこちらを参考にしてみてください。

高齢になりかかる診療科が増えると飲む薬の種類も多くなり、飲み忘れや薬の取り違えといったトラブルが起きがちだ。同時に、複数の薬の飲み合わせリスクの問題もある。こうした問題は、かかりつけ薬局・薬剤師に服薬管理を託すことでクリアできるという話をまとめた。

参考資料*¹:日本調剤の「お薬手帳プラス

参考資料*²:日本薬剤師会の「eお薬手帳

2022年4月から、症状が安定していると医師が判断した患者さんを対象に、薬局で反復して使用できる処方箋、「リフィル処方箋」が利用できるようになっています。詳細はこちらを。
高血圧などで医師の処方薬を継続して服用していると、毎月のように薬の処方を受けるだけの通院を負担に感じることはないだろうか。この4月から導入された「リフィル処方箋」なら、その負担が軽減される。このリフィル処方箋を受けられる条件と使用法をまとめた。