入院早々に退院の話をされて困っている

朝食に一杯

救急入院した翌日に、
退院の話を持ち出された……

昨日早朝のことです。
他県に暮らす仕事上の友人から、少し興奮した声でこんな電話が入りました。

仕事中に、実家で母親と暮らしている兄からスマホに電話が入った。
めったにないことなのですぐに出てみると、少しオロオロした声で、母親が食事中に喉を詰まらせて激しく咳き込み、近くの病院に救急入院したという。

83歳という高齢であるうえに、このところ体力も気力も一気に弱ってきているから、万が一のことを考えて、できるだけ早く見舞いに来てくれ、との知らせだった。

上司にその旨話して、急遽入院先の母親の病室に駆けつけた――。
すると、なんともタイミングよく、母の担当だという少し年配の看護師さんが現れ、いきなりこう言われたという。

「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を心配して念のために入院していただきました。幸い大事には至らず、今は落ち着いていて、主治医は3、4日で退院しても大丈夫だろうと言っています。ご自宅に戻られるのがいちばんだと思いますが、また食事を詰まらせたりしないように、どなたかお世話できる方はいらっしゃいますか」……と。

もっとゆっくり入院していたいのに、
追い出されるようで不愉快だ

電話をくれた彼女としては、父親を2年前に亡くしていることや母親の年齢から考えて、そう遠くない日にこんな日が来るだろうと、ある程度の心づもりはしていたそうです。

「でも入院してすぐに退院の話を持ち出されても、どうしていいかわからない。兄夫婦は共働きで昼間は母ひとりになるから誰かがいた方がいいとは思うけど、私だって今の仕事を辞めるつもりはないし……。いくらなんでも、入院してすぐに退院を迫るなんて、ちょっと冷たいと思わない? 今はどこの病院もこんななのかしら」

彼女は少々ご立腹の様子……。
でも残念ながら、これは彼女の母親が入院している病院に限った話ではありません。

急性期病院の一般病棟に入院した方やそのご家族から、極端な例では入院当日、あるいはその翌日に、主治医や看護師から退院の話をされて困っている。もうちょっとゆっくり入院していたいのに、追い出されるようでなんとも不愉快だと言ったという話を、このところちらほら耳にするようになっています。

「入院直後に退院」の背景には、
医療における「2025年問題」が

実はこれには、はっきりした理由があります。

人口の高齢化が世界に類を見ないスピードで進む私たちの国には、「2025年問題」というかなり深刻な問題が差し迫っていることはご存知だろうと思います。

2025年は、第一次ベビーブームが起きた1947(昭和22)年から49年の間に生まれた「団塊世代」と呼ばれる人たちが、75歳以上の、いわゆる後期高齢者の仲間入りをする年です。

厚生労働省はその数を2179万人と推定しています。
全人口に占める割合でいえば18.1%、5~6人に1人以上です。

現状のまま進んでいけば、おそらくそのころには、病院に認知症者を含む高齢者があふれ、医療はほとんどパンク寸前の状態を呈し、悪くすれば完全な機能不全に陥るのではないかと危惧されています。

そこで、まさに国難ともいうべきこの事態を何とか乗り越えようと、いくつかの医療施策が編み出されました。その一つに、医療機関(病院)の機能分化があります。

個々の病院に、それぞれ治療の緊急性や専門性に応じた役割分担を課し、それらが互いに連携することによって、医療を必要としている人のニーズに合った質の高い医療を効率的に提供できるようにしていこうという制度です。

友人の母親が入院しているのは、おそらく一般急性期病院だろうと思われます。
その病院では、重篤な状態から救うための治療はしてくれるものの、治療により容態が安定したら、次の重篤な治療を必要としている患者にベッドをゆずらなくてはなりません。
「だから退院の話が出たのだと思う」と、彼女には話しておきました。

退院支援専門の医療スタッフから、
必要な支援を受けられる

加えて、彼女がそうであったように、突然の入院という事態には誰もが動揺します。
その混乱しているところに、深刻な事態を脱したとはいえ、いきなり退院の話を持ち出されたら、誰もが「えっ、もう追い出されるの?」といった気持ちになるのも頷けます。

このような点を国も考慮し、医療機関の機能分化に併行するかたちで、退院に向けた支援を強化する施策も講じています。

病状や継続している治療などから判断して、退院先や退院後の生活にさらなる支援が必要と判断されるような患者や家族には、必要な支援を行うことで安心して退院してもらえるようにと、そうした支援を専門に行う医療スタッフを病棟ごとに、あるいは病院内にその窓口を置くようにしているのです。

彼女にはこの点についても伝え、こう話してみました。
「担当の看護師さんに、退院について相談したいからと話して、退院支援を専門にしている看護師さんかソーシャルワーカーの方を紹介してもらってはどうかしら」

そして、昨日の深夜、彼女から「病院の相談支援センターへ行き、退院支援担当の看護師さんに母のことを相談してみたところ、実家の近くにある訪問看護ステーションの協力が得られれば、自宅に戻れるのではないかとのこと。明日にでも早速連絡を取ってみてくれるとのことで、ひとまず一安心です」とのメールが届き、私もホッとしているところです。