「アルコール依存症」と聞いて気になった方へ

二日酔い
厚生労働省は2024年2月19日、飲酒に伴う健康リスクなどをまとめた初のガイドラインを公表している。そこでは、従来のようにアルコール度数や何杯飲んだかで飲酒量を把握するのではなく、飲んだお酒に含まれる「純アルコール量」に着目して節度ある飲酒を心がけることが重要としている。詳しくはこちらを。

アルコールは飲み方次第で
毒にもなれば薬にもなる

ツイッター(現在の「X」)で個人名を挙げ、その方がアルコール依存症であると決めつけた云々で大騒ぎになったことがありました。

仮に名指しされた方がアルコール依存症の診断を受けていたとしても、自分で公表して体験を語るならともかく、他人が公にしてしまうのはいかがなものか、といった意見が多かったように記憶していますが。

まあ、その話はわきに置くとして……。この「アルコール依存症」という言葉(正確には病名ですが……)がメディアで盛んに取り上げられるのを耳にして、「自分のアルコールの飲み方は大丈夫だろうか」と心配になった方も結構いるのではないでしょうか。

「酒は百薬の長」ということわざがあります。適量の酒(アルコール)はどんな良薬にも勝るという意味ですが、良薬と言えども飲み過ぎれば健康にいいことばかりではありません。

アルコールは飲み方次第で薬にもなれば毒にもなるからほどほどに、といった教えとして解釈するのが妥当でしょう。

高齢者は若者世代より
アルコール依存症になりやすい

私たちが飲酒すると、健康体であれば、飲んだアルコール分の90%以上が肝臓などで分解、解毒処理されます。

残りのアルコールは処理されずに体内に残るのですが、いずれそれも吐き出す息や尿と一緒にからだの外に排出されます。飲酒した後の息や尿がアルコール臭くなるのはそのためです。

こうした一連のアルコール代謝処理能力は、歳を重ねれにつれて否応なく低下します。そのため、高齢者は若者世代より少量の飲酒で酩酊しやすく、アルコール依存症を含むさまざまなアルコール問題を起こしやすいことが指摘されています。

身体的には、分解しきれず体内に残ったアルコールが肝臓などの臓器に障害を引き起こし、脳血管障害や転倒による骨折、さらには認知症などのリスクを高め、要介護状態の原因になりやすいという問題があります。

さらに多くの高齢者は、退職により生きがいを失うというストレス体験を余儀なくされます。長年にわたり一緒に暮らしてきた配偶者や若いころからの友人、あるいは会社で同僚だった仲間と死に別れるということもあるでしょう。

そのストレスや寂しさからアルコールが手放せなくなり、それがそのままアルコール依存症につながっていくケースも珍しくないようです。

アルコール依存症が気になったら
セルフチェックを

「アルコールは飲むなら適量を」ということは、おそらく誰もが百も承知のはずです。アルコールの適正飲酒と休肝日についてはこちらを。

新型コロナウイルスの感染第3波の予兆が懸念されるが、感染対策の長期化がメンタルに与えるマイナスの影響は大きく、飲酒量も増えがちで、アルコール依存が気になる。アルコール依存症にならないための、休肝日を含む適正飲酒の方法についてまとめた。

しかし、わかっているつもりでも、いったんアルコールを飲み始めると、ついほどほどを忘れて飲んでしまい、一緒に飲んでいる人や家族に迷惑をかけたり、なかにはすっかり性格も変わってしまったりする人もいます。

あるいは、飲む量自体はそれほど多くはないものの、アルコールを口にしないと生きている張り合いや喜びがない、だから毎日アルコールを飲まずにはいられないという人もいます。

もっと極端な例では、アルコールなしには生きていけないという人さえいます。

新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト

これらのいずれかに思い当たるふしがある方は、こちらの「新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト」で、セルフチェックをしてみてはいかがでしょう。

なお、「久里浜式」とは、アルコール依存症をはじめ各種依存症の専門治療を中心に、心の病気全般を実施している国立の久里浜医療センターで作成されたスクリーニングテストのこと。

なお、こちらは男性版*¹です。女性版はコチラの記事で紹介しています。
→ 気をつけたい女性のアルコール依存症

最近6ヶ月の間に、以下のようなことがありましたか。 はい いいえ
1 食事は1日3回、ほぼ規則的にとっている 0点 1点
2 糖尿病、肝臓病、または心臓病と判断され、その治療を受けたことがある 1点 0点
3 酒を飲まないと寝付けないことが多い 1点 0点
4 二日酔いで仕事を休んだり、大事な約束を守らなかったりしたことがある 1点 0点
5 酒をやめる必要性を感じたことがある 1点 0点
6 酒を飲まなければいい人だとよく言われる 1点 0点
7 家族に隠すようにして酒を飲むことがある 1点 0点
8 酒が切れたときに、汗がでたり、手が震えたり、いらいらや不眠など苦しいことがある 1点 0点
9 朝酒や昼酒の経験が何度かある 1点 0点
10 飲まないほうがよい生活が送れそうだと思う 1点 0点
合計点

判定方法は、
1. 合計点が4点以上はアルコール依存症の疑い群
アルコール依存症の疑いが高い群。専門医療機関の受診をお薦めします。
2. 合計点が1〜3点は要注意群
飲酒量を減らしたり、一定期間禁酒をしたりする必要があります。
医療者と相談してください。
ただし、質問項目1番のみ「いいえ」の場合には、正常群とします。
3. 合計点が0点は正常群

(引用元:新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト:男性版*²

アルコール依存症の疑いが高いなら
専門医療機関で相談を

スクリーニングテストの判定結果で「アルコール依存症の疑いが高い」とわかり、専門医療機関で相談してみたいという方は、こちらで最寄りの病院や行政機関(保健所、精神保健福祉センターなど)を検索してみてください。

なお、アルコール依存症の治療にかかる費用には、公的医療保険(いわゆる「健康保険」)や高額療養費制度が利用できます。

医療機関で検査を受けたり薬局で処方薬を受け取って支払う医療費は、一部の自己負担分だけに抑えられるものの、高額になることも珍しくない。その負担が家計を苦しめないよう「高額療養費制度」が設けられている。この制度の利用方法についてポイントをまとめた。

自立支援医療費制度などの活用も

加えて、精神疾患で通院による精神医療を続ける必要がある場合に、通院のための医療費の自己負担を軽減するための「自立支援医療費制度」、いわゆる「精神通院医療」など、利用できる公費負担制度があります。

詳しくは、病院窓口などで相談してみてください。

参考資料*¹:新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト:男性版

参考資料*²:新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト:女性版