「超加工食品でがんリスク増加」情報の真偽は?

ピザ

「超加工食品」
はからだによくない?

都内のクリニックに勤める看護師さんからこんな話を聞きました。

健康診断でメタボリックシンドロームや肥満を指摘され、精密検査と食事などの自己管理法を医師から指導を受けている患者から、診察を終えた帰り際などに「超加工食品はからだによくないというのは、本当ですか」と聞かれることが増えていると――。

そう言われてみれば、ある週刊誌が超加工食品の健康リスクを繰り返し取り上げていました。テレビの健康関連番組でも、「超加工食品を食べている人はメタボや肥満に拍車がかかるばかりか、がんのリスクが増すことも避けられない」などと報じているのを耳にしています。

私たちの身の回りには加工食品があふれていて、誰もが大なり小なり加工食品に依存した食生活になっていますから、この手の健康情報が気になるのは無理もないことだとは思います。

しかしこのような健康情報の真偽のほどはどうなのでしょう。ということで、加工食品、とりわけ超加工食品をめぐる健康に直結する情報を整理してみました。

超加工食品の弱点は
添加物の多さだけではない

そもそも「超加工食品」とは、具体的にどのような食品をいうのでしょうか。「超加工」という言葉一つを見るかぎり、糖分や脂肪分、さらには種々さまざまな添加物を過度に含む食品をイメージしてしまいますが……。

食品の安全に関しては、我が国には「食品安全基本法」という法律があります。この法律に基づき、国内に出回っている食品について健康リスクを専門的視点からチェックしている組織が、2003(平成15)年に設立された内閣府食品安全委員会です。

この委員会の委員長を務める佐藤洋(さとうひろし)氏は、超加工食品について、「NOVA分類といって、食品を加工の度合いにより4グループに分けした分類があるのですが、この分類で加工度が最も高いグループ4に位置づけられるのが超加工食品です」と説明しています。

ちなみに身の回りにあり、かつ日常的に私たちが口にしている食品や食材は、NOVA分類では、おおむね次のように分類されています。

  1. グループ1
    素材そのまま(未加工)か、ゆでる、冷凍、冷蔵、乾燥、アルコール発酵など、最低限の加工しかしてない食品
  2. グループ2
    家庭やレストランなどの厨房で、グループ1の素材を使って手づくりの料理を作る際に使われる、塩、植物油、バター、砂糖、酢などの食材
  3. グループ3
    グループ1の食品にグループ2の加工食材を使って作られる食品、たとえば缶詰や瓶詰の野菜・果物類、未包装の焼き立てのパン、燻製肉などの加工食品
  4. グループ4
    5種類かそれ以上の素材を含み、塩や酢以外の、一般家庭の調理では使われないような添加物、たとえば香料、着色料、甘味料、防腐剤、乳化剤などを使用して、産業用に工場などで大量に作られる超加工食品

超加工食品への懸念は
フランスの論文が契機に

この説明から解釈すると、グループ4の身近な超加工食品としては、カップ麺のようなインスタント麺の類がまず頭に浮かびます。それと、つい手が出てしまい、一度食べると癖になりがちな袋入りのスナック菓子や菓子パン、さらにはミートボールやチキンナゲット、ピザなど、調理済みの手軽さが魅力の食品も超加工食品に該当します。

これらの超加工食品の健康リスクが声高に指摘されるようになったのは、フランス国立保健医学研究所の研究チームが2018年2月に発表した論文がきっかけでした。

超加工食品の摂取量とがん発生リスクに因果関係が

この研究では、フランス在住の約10万人を対象に、超加工食品の摂取量と、その後5年間のがん(乳がん、前立腺がん、大腸がんなど)の発生状況を調査しています。その結果、毎日の食事における超加工食品の摂取量が、がん全体の発症リスクの上昇に影響していることが明らかになった、と結論づけているのです。

具体的には、摂取した食物の総量に占める超加工食品量の割合が10%以上の人は、その割合が10%以下であった人に比べ、がん全体の発症リスクが約10%増加したとしています。

また、がんの種類別に見ると、前立腺がんと直腸がんでは明らかな関連がみられなかったものの、乳がんについては、超加工食品の割合が10%増加するごとに発症リスクが11%増加し、特に閉経後の女性においてこの傾向が顕著だった、と報告しているのです。

国内の超加工食品は
隠れ塩分と栄養バランスが課題

超加工食品の摂取によりがん発症リスクが増加した原因として、フランスの研究グループは、超加工食品には糖分や塩分、飽和脂肪酸(コレステロール値を上げる原因になる)が多く含まれているうえに、食物繊維とビタミン類の含有量が少ないことを指摘しています。

さらに、たとえばじゃがいもをポテトチップスに加工する場合のように、炭水化物を多く含む食材を高温で加熱調理すると、発がん性物質のアクリルアミドなどが発生しやすいこと、また食品添加物が多いことなども問題点としてあげています。

このうち、たとえば食品添加物について佐藤委員長は、「わが国で現在使用が認められている食品添加物は、体内に蓄積する心配はなく、また複合的な影響も問題はないと考えられている」とのこと――。

また、食品添加物は、「人体に影響を及ぼさない量しか摂取されないように使用基準が厳しく定められている」ことも説明しています。

超加工食品は単独ではなく生野菜と一緒に

また、「加熱処理により発生するアクリルアミドは、一般家庭の調理でも発生するもので、工場などで大量生産している超加工食品だけの問題ではない」とのこと。

そのうえで、「超加工食品は食べない方がいい」と決めつけるのではなく、以下の点に気をつけながら超加工食品も上手に活用していくのがいいのではないか、と提言しています。

  1. 日本人は食塩(ナトリウム)を摂りすぎる傾向があることを意識して、超加工食品だけでなく他の加工食品についても、利用するときはパッケージにある栄養成分表示に記されている、特に「食塩相当量」を確認する習慣をつけ、隠れ塩分のとりすぎに注意する
  2. 超加工食品を利用するときは栄養バランスを考え、超加工食品だけ食べるのではなく、素材そのままの新鮮な野菜などと組み合わせてとるようにする

特に上記「1」の日本人が食塩(塩分)を摂りすぎている点について日本高血圧学会は、血圧が正常であっても、成人は男女ともに、1日当たりの食塩摂取量を極力6グラム未満にすることを推奨しています。

超加工食品はもちろんですが、コンビニなどの出来合い弁当や総菜類、インスタントやレトルト食品などは味をよくするため、また品質確保のためにも塩分が多くなりがちです。そのようなときはカリウムの多い野菜や果物類を一緒にとるといい、という話をこちらで書いています。お役立てください。

高血圧の改善に塩分制限は欠かせないが、外食や出来合いの弁当などを多用していると減塩は難しい。そこで、摂りすぎた塩分を追い出してくれるカリウムの多い食品を摂ることをすすめたい。カリウムを多く含む食材の筆頭として、野菜と果物の上手な摂り方を紹介する。

また、「2」にある「栄養バランス」については、栄養学的な知識のない方でもすぐに実践できる「まごたち食」がお勧めです。

「ピンピンコロリ」を望んでいても、歳を重ねるにつれて食が細くなり低栄養に陥りがち。低栄養が続けば活動は鈍くなり、「閉じこもり」や「寝たきり」になりがちです。その予防策として、おかずの食べ方の指針となる「まごたち食」を紹介します。