「いのちの終活」という言葉に込めた思い

コーヒータイム

人生の終わりに向けた「終活」で、
最優先で取り組みたいこと

このブログのタイトルで私は「いのちの終活」という表現を使っています。
このなかの「終活(しゅうかつ)」という言葉は、たとえば就職に向けた活動を「就活(しゅうかつ)」、結婚に向けた活動を「婚活(こんかつ)」と呼ぶような流れに乗って出てきた造語だと言われています。
結婚後に妊娠・出産を望むカップルの間では、「妊活(にんかつ)」という言葉もよく使われているようです。

自分の人生の終わりに向けて、自分なりに納得して締めくくることができるように、備えとして行うもろもろの活動をひとくくりにして「終活」と呼んでいるわけです。

葬儀やお墓、遺産相続の話だけですか

ところが、この終活という言葉で当初から語られてきたのは、死んだ後の自分自身の葬儀やお墓のこと、遺産相続などなど、生前の身辺整理のような話に集中するのが通例でした。
この傾向は今も変わらず続いているのではないでしょうか。

このことに、医療現場で取材を続け、人生の最期のときを過ごしている多くの高齢者や彼らを懸命に治療・ケアしている医療スタッフに幾度となく接してきた私としては、「終活にいちばん大切で、かつ最優先で取り組むべきことが抜けているのでは」との思いが強く、長らく不満を感じていました。

自分の逝き方は人任せにしないで、
自分で決めたい

人生の締めくくり方、つまりいのちの終わり方をめぐっては、巷間、「尊厳ある穏やかな最期」とか「自分らしい死に方」の大切さといったことがずっと言われ続けてきました。

こうした流れが広がるなかで、ごく最近まで当たり前のように行われてきた延命目的の医療やケアを、自分の意思に基づいて選択、あるいは拒否する人が日増しに増えてきています。

つまり、医師ら医療関係者に自分の逝き方を任せっきりにしてしまうのではなく、自ら選択したオーダーメイドの逝き方をしようとする動きが出てきたということです。

まずは事前指示書やリビングウイルの作成を

ただ、自ら選択すると言っても、最期を迎えたときに自分自身が意思を伝えることが難しい状況に陥っていることもあるでしょう。

そうなった場合でも、自らが受ける医療やケアについて自分の意思が反映されるように、リビングウイルや事前指示書のような書面をあらかじめ作成しておけばいいのですが……。

厚生労働省が2018(平成30)年3月に公表した意識調査の報告書(コチラ)では、調査に回答した一般人973人の66.0%がこの書面の作成に賛成の意向を示しながら、実際に「作成している」と回答したのはその8.1%と、1割にも届いていません。

そこで、いのちの終活の第一歩として、たとえば60歳の誕生日を迎えたら、事前指示書やリビングウイルに自分の意思を書き留めることをおすすめしたいのですがいかがでしょうか。
その際はこちらの記事がお役に立てるはずです。
「リビングウイル」で準備は万全だろうか
事前指示書に「希望する医療」を明示しておく

事前指示に医療のプロの助言が入る
アドバンス・ケア・プランニング

私の周りには、すでに事前指示書の作成に挑戦した人が何人もいます。最近は、彼らと会うとその内容に話が及ぶことが多いのですが、彼らは一様にこんなことを言います。

「自分がいよいよとなったときにどんな医療やケアを受けられるのか、その治療やケアを受けると、その先はどうなるのかといったことがわからないままに事前指示として書いてはいるけど、本当は自分のことを理解してくれている医療やケアのプロの助言がほしいよね」

この言葉を受けて私は、待っていましたとばかりに、こう伝えています。
「それがアドバンス・ケア・プランニング、いわゆるACPなのよ」

最期のときまで望みどおりに過ごす

事前指示書やリビングウイルは、自ら書面を作って終わりです。
一方のACPでは、その書面の内容について家族や医療・ケアの担当スタッフと一緒に話し合うプロセスが加わります。

予期せぬ事態に陥ったときや自分で判断できなくなった場合であっても、この話し合いを通して自分の意思が家族や医療・ケアスタッフにきちんと伝わっていれば、人生の最期のときまで自分の望みどおりに過ごすことができるというわけです。

自分らしい尊厳あるいのちの終わり方を実現するためには、このACPのプロセスが欠かせないといっていいでしょう。
「事前指示書」が最期のときに生かされるために

一般人の7割余りがACPを知らない

先の厚生労働省の調査では、ACPを「よく知っている」と答えた人は、回答した一般人973人の3.3%と極めて少なく、75.5%がACPについて「知らない」と回答しています。

この認知度の低さにがっかりしている折も折、女優の樹木希林さんの最高に羨ましい逝き方に触発されたこともあり、なんとかしてこの認知度をもっと上げたいとの思いから、「いのちの終活」としてこのブログを書き始めたところです。

スタートしてまだ3カ月――。少しずつながらいろいろな声も頂戴するようになっており、頑張って書き続けていく覚悟です。
少しでも参考にしていただけたら嬉しいです。
「これにて、おいとまします」と逝った希林さん