人生会議では「これからの生き方」を話し合う

会議

人生会議の取り組みは
なぜ普及しないのか

「人生会議」という愛称で知られるアドバンス・ケア・プランニング(以下、ACP)の取り組みが全国的にスタートしてから、すでに6年余りが経過しています。

この間に私たちは、新型コロナウイルスとの厳しい闘いを余儀なくされ、自らの健康とか「いのちの終わり」といったことをこれまでになく考えさせられたのではないでしょうか。

そして、こうした状況は、今も変わらず続いています。

このコロナ禍が人生会議の普及に弾みをつけることなるのではないだろうか、といった期待を寄せる専門家たちの声を幾度となく耳にしてきました。

しかし、彼らが期待したほどの影響はなく、人生会議は依然としてあまり普及していないように思うのですが、いかがでしょうか。

人生会議で考え、話し合うべきことは?

そんななか、某大学病院でACP相談員(ACPファシリテーター)*として活動する友人と話す機会がありました。

その席で、「人生会議の取り組みはなぜ期待するほどは拡がらないのだろうか」といったことが話題になりました。

「医療者サイドからの働きかけが足りないのではないかしら」とか「人の死ということをタブー視する傾向が強いからではないか」などなど、話は自然に盛り上がりました。

そして最終的には、人生会議を「もしものとき」とか、「人生の最終段階」における医療やケアの選択について考えることと理解している人が多いからではないかといったところに話は落ち着きました。

そこで今回は、本来人生会議は「もしものとき」に備えることだけが目的ではないはずではないかと、友人と話したことをざっと紹介しておきたいと思います。

*ACP相談員には、人生会議(ACP)において、医療やケアに関する本人の意思を確認して意思決定を支援し、本人と家族や医療ケアスタッフとの話し合いを円滑に進める役割が期待されている。ACP相談員には医師、看護師、ケアマネジャー、ソーシャルワーカー等の医療・福祉専門職で、厚生労働省が実施する研修を修了することが求められている。

人生会議では
これからの生き方を考える

厚生労働省のホームページに「人生会議してみませんか」というコーナーがあるのですが、そこでは「人生会議」を次のように説明しています。

「人生会議」とは、もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことです。

(引用元:厚生労働省ホームページ 「人生会議」してみませんか*¹)

このように、厚生労働省が「もしものとき」に限定して説明しているのがいかにも残念ではあるのですが……。

そこで、友人とは、そもそも人生会議のような取り組みがなぜ必要なのかということを、改めて考えてみようという話になったのです。

「もしものとき」に限定せず
これからの生き方を前向きに

そんな話になってふと頭に浮かんだのは、日本医師会がかかりつけ医を主な対象に、広く医療従事者向けに作成した「終末期医療 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)から考える」というリーフレットです。

そこではACP、つまり人生会議を「将来の変化に備え、将来の医療およびケアについて、患者さんを主体に、そのご家族や近しい人、医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセス」と説明しているのです。

さらに、リーフレットのその先を読み進めていくと、ACP(人生会議)の留意点について書かれた部分に、「ACPは、前向きにこれからの生き方を考える仕組み」であり、「そのなかに、最期の時期の医療およびケアのあり方が含まれる」とあります。

人生会議は、「もしものとき」に自分で自分のことが決められなくなることがあるから、そうなったときに備えて、医師や家族に前もって自分としてはどうしてほしいのか、その意思を伝えておこう、という話だけではないということです。

友人とは、「この点を人生会議について説明する側がきちんと認識したうえで、一般の方に伝えていくことが大事よね」と了解し合ったのでした。

自分の終末期における
医療やケアを考える前に

続いて、それでは人生会議では「これからの生き方の何を話し合えばいいのかしら」という話になったのです。

この点については、すでに多くの解説書、さらには人生会議において活用する事前指示書あるいはエンディングノートが公表されています。

その多くが、「自分が終末期になったときに受けたい医療・ケアについて……」といった話から始まっています。

そして、「延命治療を望むかどうか」「口からものを食べられなくなったら胃瘻(いろう)をつくるか否か」「人工呼吸器を着けたいかどうか」といった話に進みがちです。

延命治療について話し合う前に

しかし日本医師会の先のリーフレットでは、人生会議で話し合うべきは、「将来の変化に備え、患者さんの意思を尊重した医療およびケアを提供し、その人生の締めくくりの時期に寄り添うために必要と考えられること」と説明しています。

具体的な内容としては、まず家族構成や暮らしぶり、健康状態といった「患者さんの状況」について、次に本人の意思を再優先に尊重するために知っておきたい「患者さんが大切にしたいこと(人生観や価値観、希望など)」について考え、話し合うことをすすめています。

「延命治療を望むかどうか」とか「痛みや苦痛の緩和はどうするか」「どこで、どのような最期を迎えたいのか」といった「医療やケアについての希望」を考え、話し合うのはそのうえでの話だということになっているのです。

人生会議でこれからについて
話し合っておきたいこと

なお、本人の人生観や価値観、希望といった「大切にしたいこと」を自ら確認し、家族など人生会議の参加者に伝えていくうえで役立つであろう問いかけとして、リーフレットは以下をあげています。

  • これまでの暮らしで大切にしてきたことは何ですか?
  • 今の暮らしで、気になっていることはありますか?
  • これからどのように生きたいですか?
  • これから経験してみたいことはありますか?
    (会っておきたい人、最期に食べたいもの、葬儀、お墓、財産など)
  • 最期の時間をどこで、誰と、どのように過ごしたいか?
  • 意思決定のプロセスに参加してほしい人は誰ですか?
  • 代わりに意思決定してくれる人はいますか? など。

(引用元:日本医師会編「終末期医療 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)から考える」*²)

上記項目にある「代わりに意思決定してくれる人」、つまり「代理人」を指示しておくことの必要性については、こちらの記事を読んでみてください。

「もしものとき」に自分自身で自分のことを決められない事態に立ち至った場合のための事前指示書には2つの機能がある。希望する治療やケア内容の指示と、自分に代わって意思決定してもらう代理人の指示だ。このうちとかく忘れがちな後者の選定法をまとめた。

また、人生会議は一度やっておけばいいというものではありません。ものの考え方や希望といったことは時とともに変化する可能性がありますから、何度でも繰り返し行うことが重要で、この点については、是非こちらを読んでみてください。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及を願い、厚労省はその愛称を「人生会議」に決めました。1人でも多くの人が納得して最期を迎えるためにも、自らの死について気軽に語り合えるようになればとの思いが、この愛称に込められているとか。

引用・参考資料*¹:厚生労働省ホームページ 「人生会議」してみませんか

引用・参考資料*²:日本医師会編「終末期医療 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)から考える」*²)