自動排泄処理装置で排泄ケアの介護負担軽減を

リラックス

おむつを嫌う義母の排泄ケアに
自動排泄処理装置を使ってみたい

先日、介護保険でレンタルもしくは購入できる福祉用具についてこちらの記事を書いたところ、友人から問い合わせのメールが届きました。
⇒ 介護保険でレンタル・購入できる福祉用具

介護保険で利用できる福祉用具リストにある「自動排泄処理装置」について、「どのような装置で、どのような人が利用できるのか詳しく知りたい」との内容でした。

友人は自宅で、義母にあたる方の介護を始めたばかりですが、その方の病状などについて詳しいことは何もうかがっていません。

要介護4の義母の排泄ケアが一番の悩み

ただ、介護保険の要介護認定では「要介護4」に認定されたと言いますから、介護が必要な度合いはかなり高い状態であることだけは確かで、介護負担はなかなか大変なようです。なかでも彼女のいちばんの悩みは、排泄ケアに関することだとか。

「義母がおむつを嫌うので、その都度尿器や便器の介助をしているのですが、義母が遠慮してギリギリまで言ってくれないものですから、つい間に合わないこともあったりして、そのぶん介護負担も増えてしまって……」

というわけで、自動排泄処理装置を利用すれば「義母の遠慮も自分の介護負担も軽くできるのではないか」というのです。

「調べてみるわね」と引き受けましたので、今回はこの自動排泄処理装置についてポイントをしぼってまとめておきたいと思います。

自動排泄処理装置でできること
使用によるメリット

自動排泄処理装置とはその名のとおり、寝たままの状態で自動的に排泄物の処理を行うことができる装置です。

尿だけ処理できる装置もありますが、尿と便の両方を処理できるタイプもあります。また、尿や便を吸引した後に排泄部位の陰部(いんぶ)や肛門周辺を温水で洗浄する機能付きのもの、さらには洗浄後に温風で乾燥する機能付きの装置もあります。

自動排泄処理装置を上手に使えば、尿や便を失禁するリスクもなく、排泄部位を常に清潔に保つことができますから、排泄物が付着して起こる皮膚トラブルを防ぐことができるうえに、なにより衛生的なのが利点です。

介護者への遠慮や気遣い、介護負担も軽減

自動排泄処理装置は、基本的には、尿や便を受けて吸引する「レシーバー」と呼ばれる部分と、レシーバーにつながっている本体とでできています。

レシーバーには男性用と女性用があり、当然ながら、形状が異なります。本体にはレシーバーで受けた排泄物を吸引し、流し溜めるためのポンプとタンクがついています。タンクに溜めた排泄物はそのままトイレに流します。

排泄物を流し終えて洗浄した本体は、利用する方のベッドサイドに常時設置しておきます。同時に、レシーバーを本人の手が届く場所に置いておき、尿意や便意を感じたらレシーバーを陰部もしくは肛門部に直接当てさえすれば、排泄物が自動的に吸引されるというわけです。

介護者がその場にいなくても排泄が可能になりますから、介護者への遠慮や気遣いというストレスが軽減し、結果的に介護者の負担も軽減されることになります。

自動排泄処理装置は
条件が合えば介護保険適用に

自動排泄処理装置は、主に以下のような状態の方なら誰でも利用できます。

  1. 寝たきりの状態でトイレまでの移動が難しい方
  2. 自力で排尿・排便するのが困難な方
  3. トイレに行くまで時間がかかり間に合わないことがよくある方

利用する場合、処理装置の本体のみは介護保険の福祉用具貸与の対象になっていますから、使用する方の条件が合えば、介護保険を利用してレンタルする(借りる)ことができます。

このレンタルに介護保険を利用すれば、レンタル料の1割を負担するだけですみます。ただ65歳以上で現役並みの所得がある方がレンタルする場合は、所得額に応じて2割、あるいは3割を自己負担することになります。

レシーバーなど交換可能な部品は介護保険給付の対象に

一方、自動排泄処理装置の交換可能な部品であるレシーバーやチューブ、タンクなど、使用する方の肌が直接触れる部品や排泄物の経路になるものについては、衛生的な理由などからレンタルの対象から外れます。

そのため購入することになるわけですが、この購入費は介護保険の特定福祉用具販売の対象となりますから、条件さえ合えば介護保険給付を利用して購入することができます。

レンタル同様に代金の1割を負担するだけで購入できるのですが、一定以上の所得がある方の場合は、所得額に応じて2割負担、3割負担となります。

この場合の介護保険給付は、「償還払い」となります。つまり、購入時に利用者側がいったん全額(10割)を支払っておき、後日申請すれば1割負担の方なら9割、2割負担なら8割、3割負担なら7割が本人に払い戻されることになります。

自動排泄処理装置に
介護保険が適用される条件

そこで気になるのは、自動排泄処理装置本体のレンタルや交換可能な部分の購入に介護保険を利用できる条件ですが、65歳以上もしくは40歳以上65未満で特定疾患*などがある方で、要介護認定で「要介護4」か「要介護5」の認定を受けた方となっています。

要介護認定の申請についてはこちらをチェックしてみてください。
⇒ 介護が必要になったら介護保険を利用する

要介護認定による評価が要支援1・2、要介護1・2・3の方は、この自動排泄処理装置については原則的に介護保険の適用から外れます。

ただし、主治医から得た情報で、使用者本人が「排便に全介助が必要な状態にある」、あるいは「トイレへの移動に全介助が必要な状態にある」と判断された場合などは、介護保険利用の対象となることがあります。

友人の義母は「要介護4」とのことですから、自動排泄処理装置の本体レンタルと交換可能な部品の購入に介護保険を利用することができることになります。

*40歳以上65歳未満で介護保険の対象となる特定疾患には、がんの末期、関節リウマチ、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患などが含まれる。詳しくは、厚生労働省のホームページ「特定疾患の選定基準の考え方」を参照してください。

自動排泄処理装置使用の可否は
担当のケアマネジャーに相談を

自動排泄処理装置に限りませんが、介護保険を利用して特定福祉用具を購入する場合は、都道府県の指定を受けている介護保険指定事業者から購入する必要があります。

指定を受けていない事業者から購入した場合は介護保険給付の対象とはならないため、購入費の全額が自己負担となりますのでご注意ください。

また、特定福祉用具を購入して受けられる給付額には、限度額があります。その額は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で合計10万円までとなっており、10万円を超えた額については全額が自己負担となります。

いずれにしても、介護保険を利用して自動排泄処理装置をレンタル・購入するには、決められた手続きをとる必要がありますから、まずは担当のケアマネジャー、あるいは最寄りの地域包括支援センター*に相談することをおすすめします。この場合の相談は公的サービスですから、相談料は無料です。

*最寄りの地域包括支援センターは、厚生労働省のホームページにある「全国の地域包括支援センターの一覧」から検索できます。

トイレでの排尿自立を助ける機器も

なお、排泄ケアに関連する福祉用具としては、トイレのタイミングを事前に知らせて排尿の自立、つまりおむつからの解放を目指す「排泄予測支援機器」が、2022年4月1日から介護保険の特定福祉用具販売の対象に加わっています。詳しくはこちらをご覧ください。

デジタル技術により膀胱内の尿量を推定して排尿のタイミングを予測し、通知してくれるセンサー「排泄予測支援機器」が特定福祉用具販売の対象に加わった。購入費用が介護保険給付の適用となるのだ。膀胱が正常に機能している人はこの機器を活用してトイレでの排尿自立を。

参考資料*¹:厚生労働省「特定疾患の選定基準の考え方

参考資料*²:厚生労働省「全国の地域包括支援センターの一覧