風疹の流行が深刻です 40~57歳の男性は抗体検査とワクチン接種を

ワクチン接種

国立感染症研究所が
風疹急増に関する緊急情報

昨年(2018年)の夏に始まった風疹(ふうしん)の流行が今年に入り更に深刻化しています。
風疹は、一般には「三日はしか」あるいは「三日ばしか」としても知られる感染症で、昔は子どものかかる病気でした。
ところが最近は成人、それも男性が罹患する例が多く、気の抜けない状況となっています。

国立感染症研究所 感染症疫学センターは7月31日(2019年)、今年に入り報告された全国の風疹患者数が2039人となり、1週間で35人増加したと発表しています。
昨年夏の流行以来、首都圏を中心に減る気配がなく、このままのペースで増え続けると、今年の患者数が昨年の2917人を大幅に上回るとして、注意を呼び掛けています。

風疹に伴う最大の問題は、妊娠初期(20週頃まで)の女性が感染すると、胎児に感染が及ぶ危険があり、出生後に約50%の確率で低体重や難聴、さらには心臓の発達に障害が生じる「先天性風疹症候群」を発症するリスクがあることです。

このリスクには、このところの風疹患者が成人男性に突出して多いことも影響してくることから、昨今の異常とも言える風疹の拡大を防止するには、風疹ウイルスに感受性の高い成人男性をいかに減らせるかがポイントになるとのこと。
今回はその辺の話を中心に書いてみたいと思います。

風疹含有ワクチンの接種歴が
「ない」成人男性が多い

国立感染症研究所によると、7月22日~28日の1週間に30人の風疹患者が新たに報告されています。これにより、都道府県別の累計患者数は東京都が1週間に20人増えて756人と最も多く、神奈川県249人、千葉県178人、埼玉県175人、大阪府122人と続き、首都圏や大都市圏で目立って多くなっています。

このデータの内訳で気になるのは、全風疹患者の約8割を男性が占めていることです。
とりわけ成人男性患者の多くが風疹を含むワクチンの接種歴について、「不明」や「なし」、あるいは接種していても「1回だけ」と答えている点が、現在の風疹の流行を深刻化させている要因として注視されています。

このような事態を招いている理由は、予防接種の制度にあります。
風疹の予防には、法律に基づいて自治体が主体となり、風疹含有ワクチン(2006年度からは「麻疹風疹混合(MR)ワクチン」)の接種が実施されてきました。

予防接種制度はあっても受けていない男性が

わが国ではこのワクチンの接種が、女児は昭和37(1962)年度生まれから、男児は昭和54(1979)年度生まれからと、時間差で始まっています。
そのうえ男女とも接種することになった昭和54(1979)年度からは、学校での集団接種ではなく、任意での個別接種と、制度が変更になっています。

つまり保護者同伴で医療機関を受診して予防接種を受ける制度に変わったわけですが、この制度変更に伴い、一時期接種率が男女とも大幅に低下しています。
予防接種制度はあるものの、受けていない可能性のある人が出ているのです。

これに慌てた国が、現行の定期予防接種に切り替えたものの、この制度変更の影響を大きく受けた特に40~50代の成人男性において、ワクチンの接種歴が「わからない」「ない」あるいは「1回だけ」という人が多くなっているのです。

ワクチン接種歴に疑いがあれば
妊娠2か月前までにワクチンを

国立感染症研究所のサイトによれば、風疹は、患者の上気道粘膜から排泄される風疹ウイルスが飛沫感染により咳やくしゃみなどから容易に感染します。感染すると発疹、発熱、目の充血、リンパ節の腫脹、関節痛などを自覚するようになります。

ごくまれながら、脳炎や血小板減少性紫斑病のような重篤な合併症を併発することもあり、この場合は入院治療が必要となります。
しかし通常は、風疹ウイルスに効く薬がないため、解熱薬や消炎鎮痛薬で症状を和らげ、適度な栄養を摂りながら安静にしていれば1週間程度で回復するようです。

ただし、妊娠初期(20週頃まで)の妊婦が風疹に感染すると事態は深刻です。
胎児に感染して流産、早産のリスクが高まるうえに、出生後、先に記した「先天性風疹症候群」を発症するおそれがあるからです。

成人の風疹予防には風疹含有ワクチンの任意接種が有効です。
しかし妊娠中は接種できませんから、接種していたかどうかに多少とも疑いがあるときは、妊娠となる前、遅くとも2か月前までに予防接種を受けておけば安心です。

厚労省が40~57歳男性に
無料で風疹抗体検査とワクチン接種

成人男性の風疹患者には、職場で同僚に感染させるリスクもあります。
加えて、その職場で感染を受けた男性が、感染の自覚もないままに、帰宅後に妻に感染させ、その妻が妊娠して胎児に感染させるといった事態も起こり得ます。

30代から50代の男性は、まずは自分がワクチン接種を受けているかどうかを、母子健康手帳か抗体検査で確認する必要があります。

特に定期接種の機会がなかった昭和37(1962)年4月2日~54(1979)年4月1日生まれ、つまり令和1(2019)年8月の時点で40歳3か月から57歳3か月の男性に対して厚生労働省は、風疹の感染拡大防止のため、2019年から2021年度末までの3年間にかけて、抗体検査やワクチン接種を無料で行う追加対策を実施しています。

対象者に対しては、市区町村から受診券が送付されますが、受診券が届かなくても希望すれば受診券の発行を受けることができます。

この抗体検査とワクチン接種を行っている医療機関は、厚生労働省のサイト(コチラ)で紹介しています。医療機関によって受付曜日や時間が決まっているところがありますから、事前に問い合わせてから受診することをおすすめします。