終末期に緩和ケアを安心して受けるために

やすらぎ

緩和ケアを受けたいことを
事前の意思として記しておく

このブログを書き始めて以来、うれしいことに、「ブログが更新されるのを毎日楽しみにしている」と応援してくれる方が、少しずつですが増えてきました。感謝です!!

おおむね50歳を超えている方たちですが、40代、30代の方もいらっしゃいます。なかには医療や介護の仕事をしておられる若い世代の方もいて、なかなか現実的な感想を聞かせていただくこともあり、励みになります。

そんななか、数年前からがんの治療を続けている長年の友人(50代、女性)から、今朝早く次のようなメールが届きました。

「痛みなどの苦痛の問題は、がんの私には切実です。もしものときに緩和ケアを受けられるように事前指示書に書き添えておきたいのですが、医療用モルヒネに関して書かれた文面からは緩和ケアはどこの病院でも安心して受けられるわけではないように読みとれます。その選択基準などがあれば教えていただけますでしょうか」

そこで今日は、このメールにお答えをしたいと思います。

緩和ケアは、いつでもどこでも、
誰もが受けることができます

わが国における緩和ケアの普及啓発活動は、厚生労働省から委託を受けた特定非営利活動法人(通称「NPO法人」)の「日本緩和医療学会」により精力的に進められています。

この学会のサイトの「緩和ケア.net」を見ると、緩和ケアは「治療中の病院でも、緩和ケア病棟でも、ご自宅でも受けられます」とあります。

そのうえで、緩和ケアが必要となったときは、2023(令和5)年4月時点で全国に432施設ある「がん診療連携拠点病院」に設置されている緩和ケアチームのスタッフ、あるいは最寄りのがん相談支援センター、または自治体の相談窓口に相談することを勧めています。

緩和ケアチームとは、文字どおり緩和ケアを専門に行う医療チームです。病院により構成メンバーは異なりますが、身体症状の緩和を担当する医師、精神症状の緩和を担当する医師、5年以上の緩和ケアの経験があり所定の研修を受けた看護師および薬剤師を中心に、管理栄養士、放射線技師、リハビリテーション専門職(作業療法士、理学療法士、言語聴覚士)、臨床心理士(カウンセラー)、ソーシャルワーカー(MSW)、ときに歯科医師や歯科衛生士も参加して、病気や治療に伴う患者とその家族の身体的、精神・心理的、社会的苦痛の緩和に専門的に対処しています。

現在の活動はがん患者とその家族を主な対象に行われていますが、本来緩和ケアは対象疾患をがんに限るものではありません。人生の最終段階に緩和ケアが必要とされるのは、心疾患により心不全の状態にある患者のほうが、がんの患者より多いとの統計もありますから、疾患の別なく緩和ケアを受けることができるはずです。

実際わが国においても、心不全のような循環器疾患の苦痛対策として、緩和ケアを取り入れる施設も出てきていますから、緩和ケアを受けたいと思ったら、まずは担当の医師や看護師に相談してみることをお勧めします。

緩和ケアチームの主要メンバー、
医師と看護師について

緩和ケアチームのリーダーは、緩和医療・ケアの「専門医」あるいは「認定医」が担っているケースが圧倒的に多いようです。いずれも緩和医療・ケアに関する専門的研修を受けていて、その専門的知識と技術をもとに患者や家族から信頼の得られる緩和医療・ケアを提供することができると、日本緩和医療学会が認定した医師です。

両者の違いは少々複雑ですが、「認定医」はあくまでも「専門医」の資格を得るための1ステップと考えていいでしょう。日本緩和医療学会のホームページには、同学会認定の「専門医名簿」および「認定医名簿」が掲載されています。

また、緩和ケアチームに欠かせないメンバーである看護師は、患者や家族にとって医師以上に身近な存在です。特に入院中は、医師の診療の補助を行う一方で、療養生活に不都合がないように常に見守ってくれている存在です。

それだけに、患者の苦痛や家族の困りごとにはいち早く気づき、迅速に対応するとともに、医師や他の医療スタッフにその旨を伝えるという重要な役割も担っています。

最近では、看護師の職能団体である日本看護協会認定の「がん看護専門看護師」や「緩和ケア認定看護師」が、それぞれの専門性を生かして頼もしい活動をしていますから、こうした人たちに相談してみるのもいいと思います。

なお「専門看護師」「認定看護師」の登録者はこちらで検索することができます。

参考資料*¹: 日本緩和医療学会「緩和ケア.net

参考資料*²:「がん診療連携拠点病院